かつてのフジテレビ土曜夕方6時台のアニメ枠は『タイムボカン』『ヤッターマン』『ゲゲゲの鬼太郎』などの人気作品が昔から長年にわたって放送されていた。この長い歴史の中で1992年、112話という最多の放送話数を誇るアニメが始まった。『幽☆遊☆白書』である。

あの時、あの曲。

#14 「大人になると沁みる…歌詞が深い『幽☆遊☆白書』のOP・ED集」

放送時間が土曜日の夕方ということで、週末の特別感や夕飯の匂いがアニメとセットになって記憶されているという人も少なくないはず。その懐かしい思い出の中でとりわけ憶えているのはテーマソングだ。112回のあいだ必ず流れていたあの名曲たち。今となって考えるとどれも子どもたちに向けたアニメにしては歌詞が深く、大人っぽい印象を受ける。

子どもに付き合ってしょうがなく見ていた親たちも密かに「深い歌詞だな…」と思っていたかもしれない。そんなちょっぴりオトナな曲たちを歌詞に焦点を当てつつ、記憶を辿ろう。

1.「微笑みの爆弾 / 馬渡松子」

出典 https://www.amazon.co.jp

(こちらより『微笑みの爆弾』が一部視聴できます)

“都会の人ごみ 肩がぶつかってひとりぼっち 果てない草原 風がビュビュンとひとりぼっち どっちだろう 泣きたくなる場所は 2つマルをつけて ちょっぴりオトナさ”

出典馬渡松子『微笑みの爆弾』

30~40代で知らない人はほぼいないだろう『幽☆遊☆白書』のオープニングテーマ。1992年、ドリカムのバックバンドでコーラス兼キーボードとして在籍を経てデビューした馬渡松子の2ndシングル。ソウルフルでファンキーながら少年性も持つ歌声が話題を呼び、50万枚以上を売り上げるヒットとなった。

孤独感
世間の厳しさなどの困難。それらを乗り越える力は仲間がくれるものだ、ということを精神的成長によって気づく自問自答の歌である。歌い出しの物理的/非物理的な「ひとりぼっち」を並べて孤独を知る歌詞は、どこか爽やかであっけらかんとしていて不思議と引き込まれてしまう。少年向け冒険活劇としてのジャンプ的主軸である「努力」「友情」「勝利」のラインをしっかりと掴みつつも、どこか陰を感じさせるバランス感覚は絶妙だ。

大人になった今あらためて聴くと、ノスタルジックな気分を差し置いても、仕事や人間関係で悩む多くの人たちに刺さる歌詞に思える。あの頃無邪気に歌っていた「ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・ます!」とは違う感覚を味わえるだろう。

2.「ホームワークが終わらない / 馬渡松子」

出典 https://www.amazon.co.jp

(こちらより『ホームワークが終わらない』が一部視聴できます)

“転がる夢なんだよ 追いかけていたいのは 止まれば逃げてゆくよ 気を抜いちゃダメなのさ”

出典馬渡松子『ホームワークが終わらない』

1stアルバム「逢いたし学なりがたし」からのリカットで『微笑みの爆弾』のカップリングに収録されている。アニメ初代エンディングテーマに起用され人気を博した。

自分の追い求める夢を簡単に掴めるようなものよりも、ハングリーな目標設定のほうが魅力的ではないか、という内容。そう思いながらも「目の前にある小さな一つ一つの課題に向き合っていかないと夢を引き寄せることは難しい」ということをタイトルのホームワークになぞらえて教えてくれる。

馬渡松子は作曲、編曲、コンピュータ・プログラミング等のレコーディングに係るすべてを自分自身で手がけており、打ち込みのサウンドを効果的に取り入れたアレンジの手腕も特筆すべきだろう。

3.「さよならbyebye / 馬渡松子」

出典 https://www.amazon.co.jp

(こちらより『さよならbyebye』が一部視聴できます)

“さよならbyebye 元気でいてね 私から切り出したけじめだから キャッチしてよ”

出典馬渡松子『さよならbyebye』

リリースされたアルバムのなかで自身最大のヒットとなった2作目「nice unbalance」に収録。2代目エンディングテーマに起用された男女の別れを描いた楽曲で、恋愛感情だけではどうにもできない、バックストーリーを想像させる大人の別れが繊細に紡がれている。

“おかしいね これぽっちも似ていない貴方と私の微笑(えがお)今では 鏡を見てるような気分”

この歌詞に付き合いの長いふたりだった描写がハイセンスに書かれているのがたいへんニクい演出であり、哀愁をより強めている。終盤はあくまで前向きに別れを受け入れようとする一方でサビフレーズを繰り返しフェードアウトしていき、名残惜しさを表現しているところも見事だ。

4.「アンバランスなkissをして / 高橋ひろ」

出典 https://www.amazon.co.jp

(こちらより『アンバランスなkissをして』が一部視聴できます)

“アンバランスなkissを交わして 愛に近づけよ 君の涙も哀しい嘘も 僕の心に眠れ”

出典高橋ひろ『アンバランスなkissをして』

第3期エンディングテーマとして有名な高橋ひろ2ndシングル。約30万枚のセールスを記録し、彼の代表曲となった。作詞は山田ひろし。

相手が自分でない誰かに想いを寄せていることを知りながらも、一途に愛する男性の曲である。交わされるキスには互いの気持ちが向き合っていない悲哀があり、その気持ちのすれ違いをアンバランスだと嘆きつつも、いつか心がこちらに向くのを待ち望んでいる心情が読み取れる。印象的なイントロから始まり軽快なリズムに乗る甘い歌声で人気となったこの曲、詞の内容的に少年少女にはとりわけ大人の歌に聞こえたことだろう。

高橋ひろは「POPSICLE」というバンドで活動していたが財津和夫に才能を認められ、1987年にチューリップ第3期に加入しプロデビュー。89年の解散までボーカル曲や自作曲を残し活躍した。その後93年にソロアーティストとして再デビューを果たし、この2ndシングルでブレイク。筒美京平を敬愛し、作曲家としての目標としていた。

5.「太陽がまた輝くとき / 高橋ひろ」

出典 https://www.amazon.co.jp

(こちらより『太陽がまた輝くとき』が一部視聴できます)

“外は雨が まだ止まずに 濡れてる人々と街が それでも太陽信じてる”

出典高橋ひろ『太陽がまた輝くとき』

第4期エンディングテーマで、オリコン週間TOP10にも入った最大のヒット曲

やむを得ず離れていく女性が、選んだ道を振り向かずにまっすぐ進めるよう真意を口にはしないまま手紙に込めエールを送る男性視点の歌詞。いつかふたりがまた会えるとき。その希望を太陽に喩え、哀しみを外で降っている雨に重ねる表現は映像的で切なさが痛いほどに伝わってくる。希望を持ちながらも「もしかしたら二度と会うことはないかもしれない」と心の片隅で悟っているのではないか、というような解釈もできる味わい深い楽曲である。

この曲で『ミュージックステーション』『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』に出演したが、その後所属レーベルの解散で歌手活動を縮小し楽曲提供を活動の主軸とする。自身の名義としては4枚のオリジナルアルバムをこの世に残し、2005年11月4日、41歳という短すぎる生涯に幕を閉じた。

2010年に没後にして初となるベスト・アルバムがリリース。制作担当であった池畑伸人監修によるリマスタリング盤で、高橋ひろへの強いリスペクトが感じられる一枚となった。

6.「デイドリーム ジェネレーション / 馬渡松子」

出典 https://www.amazon.co.jp

(こちらより『デイドリーム ジェネレーション』が一部視聴できます)

“瞳を開けて見る夢なら 今は傷ついてもいい この空が勝手なほど 素直になれるよ” 

出典馬渡松子『デイドリーム ジェネレーション』

94年10月発売の6thシングル。第5期のエンディング曲でチャート最高位は24位ながらも累計で約15万枚を売り上げた。

「非現実的な空想だけをいつまでもしていられない」というメッセージを抱き、夢を実現させるために迷い動けないでいる自分と向き合って現状を打ち破ろうとする決意の歌である。非情な現実がつきつけられても、いや、つきつけられるからこそ自分の夢を直視して覚悟ができるという歌詞に奮い立たせられる。アニメ終盤(103 - 111話)のエンディングということで、思い入れの強い人も多いのではないだろうか。

馬渡松子の楽曲の作詞はすべてリーシャウロン氏によるもので、男性ながら説明っぽくなくサラリと女性の気持ちを上手く汲み取り歌に昇華させる技量にも長けている。しかし当時の馬渡は恋愛よりも生き様について歌いたい気持ちが強く、その意向を反映したものが多かった。だがその生き様を描く詞が『幽☆遊☆白書』の世界に混ざり、今こうして私たちに響いていることは音楽としての成功と言えるのだろう。

どれもすべての歌詞を貼り付けたいほどに隙のない構成力とワードセンスだ。深いこと言うなあ…と思いつつも言葉としての表現はとても易しい。頭のいい人ほど平易な言葉を使うとはよく言うがまさしくそれを表している。

今回紹介したその深い楽曲たちを含む34曲が今年2月に発売された『決定盤「幽☆遊☆白書」アニメ主題歌&キャラソン大全集』に収録されている。是非あらためてフルで聴いてみてほしい。

過去の曲を聴くと、自分の考え方が当時といかに違うか、または変わっていない部分は何かを知ることが出来る。
懐かしいなと思うのと同時に、歌詞について少し掘り下げてみると今の自分にとって思わぬ発見があるかもしれない。

この記事を書いたユーザー

Spotlight編集部 なーろ このユーザーの他の記事を見る

分野を問わずなんでも飛びつく雑食な人。うんちくを収集しがちで、会話の中でナチュラルに差し込めるよう、大縄跳びが苦手な人みたいにタイミングをうかがっています。

得意ジャンル
  • 音楽
  • 動物
  • カルチャー

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス