知られざるママの実態や本音を紹介するコーナー「ママのホント。」

ここ数年、不妊治療を行っていることを公にする芸能人も増え、不妊症に対する世間の認知度は高まりつつあります。しかし不妊症と同様、赤ちゃんを授かれない原因の一つである「不育症」に関しては、まだまだあまり認知されていないのが現状です。

「不育症」とは?

不育症とは、妊娠はするものの、流産や死産、新生児死亡などを繰り返すことになり、結果的に子どもを持てないこと。流産の回数などに正式な定義はなく、2回以上流産や死産を経験すると不育症と診断されて、原因を探索することになるのが一般的です。

とはいえ、実際は不育症だと診断された人でも、その言葉を耳にすること自体初めてで、治療方法が分からないばかりか、自分では原因も思い当たらないというケースが多いもの。

そこで今回、不育症という診断を受け治療を続けたことで、待望のベビーを授かることができた彩衣里(あいり)ママさんにご自身の経験について伺いました。

第一子の死産から半年後…「不育症」と診断されて

ーー彩衣里ママさんが不育症であることが判明したきっかけについて教えてください。

彩衣里ママさん(以下、彩):私は、2012年9月12日に第一子となる女の子を2,865グラムで出産しましたが、死産になってしまったんです。順調に育ってきたと思っていたのに、陣痛室で死産を宣告され、そのまま自然分娩で出産となりました。突然、我が子を失い、それでも周産期医療(※1)が充実した病院からも、「原因不明」としか言ってもらえず、納得がいかずにセカンドオピニオンを求めました。

(※1)妊娠22週から生後満7日未満までの「周産期」を含めた前後の緊急事態に備えた、産科・小児科双方の体制が整った医療体制

そして、2人目の医師から、近年は1回目の死産でも不育症の可能性を疑うことが多いと聞き、専門医を紹介してもらうことになったんです。そこで紹介してもらったのは、神奈川県にある不育症専門クリニックの杉院長。日本で数少ない不育症専門医で、厚生労働省の研究班の一員として、不育症治療の研究を続けられている不育症治療の第一人者でした。

杉院長がわたしに「不育症」との診断結果を提示してくれたのは、死産から半年後の2013年3月のこと。死産した病院で出された診断結果報告書は、所見について専門用語だらけで、原因不明については簡単な説明で済まされ、素人の死産当事者には頭に入りませんでした(この時点では不育症などの用語は出てこない)。その後、ひとつの単語をネットで調べるなどできても、情報が少なく、病気について十分に理解することは難しかったです。

杉院長のクリニックで「不育症」と確定されたときは、セカンドオピニオンでも可能性があると聞いていたので、「やっぱり、わたしの身体はそうなんだ…」という思いでした。杉院長のクリニックでそこでしかできない専門的な検査を受けて、やっと腑に落ちたという感じだったんです。

ーー原因が分かるまではどんな気持ちでしたか?


彩:そうですね。死産から2週間くらいは、なぜ娘が生きて産まれてこれなかったのか、自分のせいなのだろうかと悩みましたし、本当に辛くて苦しくて、現実を受け入れるのに時間がかかりました。

また、わたしの不育症は「抗リン脂質抗体症候群」という、3千人に1人と言われる、血が固まって血栓ができやすい病気が原因であることが判明したんですが、最終的に十分理解することができたのも、そして死産の原因が分かったのも、杉院長のサードオピニオンのおかげだと思っています。

精神的にも、肉体的にも、金銭面的にも大変な不育治療

ーー原因が分かった後、治療をはじめてからは順調でしたか?

彩:精神的にも肉体的にも、さらには金銭面的にも大変なことはたくさんあります。まず、一口に不育症といっても、治療にかかる期間や金額は人それぞれ。保険がきくケースもあればそうでないケースもあります。

わたしの場合は、初診は約6万円、妊娠から出産までに治療通院で約60万円もかかりました。しかし、初診は死産した病院で血液検査を終えていた項目について免除されたことで、通常より2万円程度安くなっていましたし、保険がきかない薬を使っている方はもっと高いと聞きます。大体、出産費用の倍はかかると言われていますね。

具体的な治療としては、わたしの場合は、血をサラサラにする薬の投薬と自己注射を続けていました。ちなみに、わたしは投薬と自己注射のどちらも出産直前までやる必要があると診断されましたが、症状によっては投薬のみの方もいます。

ーー自己注射は毎日行っていたのですか?


彩:そうです。3度目の妊娠が分かってからは、出産までに全部で500本弱の自己注射をしました。糖尿病患者のインスリン投与と同じやりかたです。旦那さんに、お尻に注射して協力してもらうこともありました。それに関しては、周りから「大変だね」との言葉をかけてもらいましたが、私自身は、おなかの子が無事に生まれてくれるなら、こんなことくらいたいしたことないと思っていました。

不育症の治療法や自身の経験を多くの人に伝えたい

ーーでは、辛かったことといえばどんなことですか?

彩:わたしの場合、不育症の治療をしていたにも関わらず、その後も、2回目の妊娠時と4回目の妊娠時の2度流産をしてしまいました。なんでだろうと途方に暮れたし、こんなに頑張ったのに…という思いでいっぱいでした。ただ、落胆は大きかったですが、「治療も最善を尽くした。やれることやったんだから、また前を向いて歩いていこう」という気持ちになったのも事実です。

治療中は家族や夫婦の協力、コミュニケーションのおかげで常に前向きでいられましたし、そして夫婦では、この経験を通して命について考えることが増えたし、命の尊さを知ることができました。

ーーそうした想いがあるからこそ、不育症の治療やご自身の経験についてブログに綴ることで、多くの悩める人たちに発信されてるんですね。

彩:はい。不育症の認知度はとても低いものなので、この病気について一人でも多くの人に知ってほしいし、私と同じように流産や死産を経験して苦しんでいる女性がいたら、「不育症には治療法があること」「不育症でも無事出産できること」「一人で悩まないで」と伝えたいです。

流産は誰にでも起こりうる可能性がありますが、流産を2回以上、死産を1回以上経験している場合は、不育症の可能性を疑ってみることも大切。費用は決して安くはありませんが、検査や治療を躊躇したことによって我が子の命を失う、しかもそれを繰り返す可能性があることを考えたら、金額の捉え方は変わってくるのではないでしょうか。

検査の結果「不育症でない」と分かれば、消去法で流産や死産の原因を追究することにもつながるので、不安な思いを抱いている人には今すぐ検査を受けてほしいです。結果が出るまでに時間がかかりますが、その間に焦って次の子を妊娠すると検査自体ができなくなり、原因が分からないまま同じ経験を繰り返す可能性もあります。原因、治療法をきちんと知り、前に進むためのベストな選択をしてほしいと思います。

ーー今日はありがとうございました。

彩衣里ママさんの「彩衣里」とは、亡くなった第一子のお名前です。

「娘は、もしかしたら身をもって病気のことを知らせるためにわたしのもとに来てくれたのかもしれません」

そう語る彼女は、同じ悩みを抱える多くの女性たちに希望の光を与え続けています。これから出産したいと思っている人もそうでない人も、ぜひ一度彼女のブログを読んで命の尊さについて考えてみてください。

(ライター/松本玲子)

この記事を書いたユーザー

Spotlight編集部 このユーザーの他の記事を見る

Spotlight編集部の公式アカウントです。

権利侵害申告はこちら