記事提供:TOCANA

――科学分野だけではなく、オカルト・不思議分野にも造詣が深い理学博士X氏が、世の中の仰天最新生物ニュースに答えるシリーズ

今月23日付の英紙「Mirror」によると、昨今、病気治療や臓器再生の手段として人間と動物の“キメラ研究”が盛んになっているという。

■夢がある?キメラ胚の研究

生物学でいうキメラとは、2つ以上の異なる遺伝情報を持つ細胞から作られた1個の生物個体を指す。広義では、接ぎ木された植物や異種間臓器移植を受けた動物もキメラに当たる。

しかし今話題になっているのは、生物の初期発生段階にあたる胚でのキメラ作成。つまり、一部は人間由来、一部は他の動物由来という胚を作成することで、ハイブリッド生物を誕生させようとしているのだ。

キメラ胚の研究は世界中で行われているが、その第一人者として知られているのが、スタンフォード大学の中内啓光教授(東京大学の教授も兼任)である。

中内氏らは、この技術をiPS細胞を使った臓器再生に応用している。ES細胞やiPS細胞による再生医療研究は日々進歩しているが、試験管や培養皿の中では臓器の複雑な形を再現することができない。

中内氏らの手法ではまず、膵臓を作れなくした遺伝子改変ブタの胚にヒト由来のiPS細胞を移植し、人間とブタのキメラ胚を作成する。

この胚を子宮に移植して発育させると、子ブタはヒトの膵臓を持って生まれてくる。後は子ブタが成長し、膵臓が適切なサイズになるのを待つだけだ。

難病に苦しみ臓器移植を待つ人々にとって、なんとも夢のある話ではないだろうか。

しかしながら、この技術は様々な問題を孕んでいる。生物学に詳しいX氏はこう解説する。

「キメラ胚の問題の一つに、ヒトの細胞が動物にどのような影響を与えるか、まだわからないということがあります。例えば、ヒトの脳細胞をもった動物が生まれる可能性だってあります実験の結果、ヒトのような知性を持った動物が生まれたとしたら?キメラが繁殖してしまったら?科学界のみならず、社会全体に与える影響は計り知れません。このような恐れもあり、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は2015年にキメラ胚への支援を中断すると発表しました」

なんと、アメリカの公的機関がキメラ胚研究を中止させようとしているのだという。しかし、とX氏は続ける。

「キメラ胚による移植用臓器研究は魅力的ですから、NIHがどう言おうと、資金援助する団体は多い。実際、アメリカだけでも少なくとも20体のブタとヒトあるいはヒツジとヒトのキメラ胚が樹立されたと言われています。研究の進歩に規制も議論も追いついていないのが現状です」

実は、動物とヒトのキメラはすでに生まれているかもしれない、とX氏は語る。それが我々の目の前に現れる日も、それほど遠くはないのかもしれない。

理学博士シリーズはコチラ

出典:The Daily Mirror
出典:科学技術振興機構
出典:NIH
出典:MIT

権利侵害申告はこちら