記事提供:キングコング西野 オフィシャルダイアリー

大阪の夜。

『えんとつ町のプペル』に関する作業を、ただひたすら。

絵本『えんとつ町のプペル』は通常の絵本制作では考えられないほど、本当にたくさんのスタッフの手によって作られています。

今となっては、企画の立ち上げから知っている人はほんの僅か。

原作を書き終えた直後、「絵本制作をスタートさせる前に、お客さんの反応が見たい!」とほざきまして、サンリオピューロランドさん協力のもと、舞台『えんとつ町のプペル』の公演をおこないました。

演者さん、舞台監督さん、音響さん、照明さん、劇場スタッフの皆様、運営スタッフの皆様…。

本当にたくさんの方々の手を借り、アイデアをいただき、舞台『えんとつ町のプペル』は大成功で幕を閉じました。4年ほど前の話です。

公演後、また本を書き直します。

「ここは説明が足りなかったかも」

「ここは要らなかったな」

「ここは、もっと膨らましていいかも」

僕の頭と手で書いているかというと、そうではなく、『お客さんの反応によって書かされている』という表現の方が適切だと思います。

本を書くとき、お客さんの顔が、ずっとあったので。

劇場の下見から、ずっと付き合ってくれたNONSTYLE石田君の顔も。

本を書き終え、実は当初、一人で『えんとつ町のプペル』の制作をスタートさせていたのです。

そして、3~4ページほど描いた頃でしたでしょうか…。

『MUGEN UP』という会社の一岡亮大さんに出会います。

話をお聞きして、ただただ単純に「この人と仕事をしたら面白そうだな」と思って、同時に、一岡さん率いる『MUGEN UP』さんが展開するクラウドソーシングというサービスに興味を持ちました。

そこからです。

「映画やドラマや漫画や会社やライブ…その他たくさんのエンタメが分業制で進められているのに、どうして、絵本だけは一人で作ることになっているのだろう?」

という疑問を持ったのは。

1人で作った方が良いモノができるのであれば、1人で作った方がいいし、100人で作った方が良いモノができるのであれば、100人で作った方がいい。

大切なのは『誰が作ったか?』ではなくて、『何を作ったか?』であり、お客さんが反応しているのは、『アナと雪の女王の監督』ではなく、『アナと雪の女王という作品』でしかありません。

すっかり、「絵本は一人で作るもの」と思い込んでいて、「一人で作った方が良い作品ができるから、一人で作っているのだろうか?」という問いを持つことすら忘れていました。

すぐさま、一人で制作していた絵本『えんとつ町のプペル』の制作を中止。

この時点で、制作に数ヵ月の時間を要していましたが、「この数ヵ月を無駄にしたくない」という気持ちもたしかにありましたが、「作品を無駄にしたくない」という気持ちが勝ります。

一岡さんと、幻冬舎の袖山さんを、五反田にあるポテトサラダが美味しいお店に呼び寄せて、クラウドファンディングでお金を集めて、クラウドソーシングでスタッフを集めて、『超分業制』で作る絵本の構想を話します。

たくさんのイラストレーターさん(総勢33名)を雇わなければならないので、当然、お金がかかってきます。

そして、「なるほど。絵本が一人で作ることになっている原因はここ(制作費)だったんだな」ということに、ようやく気づくバカヤロウっぷり。

ただ、当時と違って、今は『クラウドファンディング』という選択肢があります。

この辺の話は、すっかりベストセラーとなって、すっかり僕を天狗に仕立てあげた新刊『魔法のコンパス ~道なき道の歩き方~』にビッチリと書いたので、そちらをご覧ください。

魔法のコンパス ~道なき道の歩き方~

話が決まれば、今度は制作費…資金調達です。

吉本興業はクラウドファンディングを禁止していたのですが、「そもそも、俺、吉本と契約してないし、フリーランスの芸人だよね?」を発動し、吉本社員全員を皆殺しにして、クラウドファンディングを展開するウィシムの浅見さんにご協力いただき、『分業制で作る絵本の制作費』を集めるクラウドファンディングをスタート。

「絵本は一人で作るものだろ!」と一部の方々から叩かれましたが(今は、「西野はゴーストライターを使って絵本を作っているらしい!」に変わりました)、外野の声に耳を貸すほど人間ができておりませんので、無視、むーし!

結果、3293人の方々から、1013万1400円の支援をいただき、『えんとつ町のプペル』の制作は無事スタート。

この資金繰りも僕一人でやったわけではなく、資金繰りのスタッフがアチコチ飛び回ってくれて、深夜にサーバーがダウンしたら、営業時間外であろうと対応にあたってくれたのでした。

いよいよ始まる『えんとつ町のプペル』の制作は数年がかり。

しかし、吉本興業は、会社の方針として、半年~1年スパンで担当マネージャーを変えるので、ここに依存しては、制作途中で空中分解してしまうと踏んで、制作スタッフや制作費の管理…つまり『えんとつ町のプペル』のマネージャーを、MUGEN UPのペランさん(イケメン外国人)にお任せすることに。

イラスト制作スタッフは総勢33名。

描き込みの達人もいれば、塗りの達人、キャラクターを躍動的に動かす為に、アニメーターもいました。

そこに参加する全員とイメージを共有しなければならないので、まずは絵コンテ作りから。

『えんとつ町』とは、どんなところで、『ゴミ人間・プペル』とは、どんなキャラクターで、そもそも、どんな物語なのか?

いわば、『えんとつ町のプペル』の設計図です。

夜な夜な一人で絵コンテを描きあげて、今度は、その絵コンテを見て、

「ここは、台湾の◯◯の町並みを…ここは、◯◯の感じでいきましょう!」といった感じで、写真や絵を切り貼りし、僕の絵コンテのイメージを、さらに膨らませてくれる『コラージュ』という作業にあたるスタッフもいます。

それを33人のイラストレーターが「ふむふむ」と見て、チーフの六七質さんからは「全シーンの背景の整合性をとるために、地図から作っちゃいましょう!」なんて意見も飛んできました。

劇中では出てきませんが、制作スタッフだけで共有していた『えんとつ町の地図』というものが存在するのです。

11月の個展『えんとつ町のプペル展』では、その辺も展示できると面白いかもしれませんね。

制作を進めながら、同時に『宣伝』のことも考えねばなりません。

僕は「作るだけ作って、売ることは他人まかせ」という『育児放棄』だけはしたくなくて、キチンとお客さんの手に届くまでの責任をとりたい性分。

なんてったって、お客さんの手に届かないと、せっかく生まれた作品が、世の中的には生まれたことにならないのですから。

「新聞広告を出す」「駅の看板枠を買う」といった瞬間的な宣伝ではなく、せっかく向こう何十年も愛されようとしている作品なのですから、「やはり向こう何十年も続く宣伝が良いだろう」と、『音楽』に辿り着きました。

絵本『えんとつ町のプペル』の主題歌を作って、歌い続けられることで、結果的に絵本の宣伝にしてやろうと考えたのです。

さっそく、『えんとつ町のプペル』の曲と詞を書いて、編曲とプロデュースを日本アカデミー賞《音楽賞》作家の渡邊崇さんに依頼。

「宣伝が目的ですから、著作権フリーにして、楽譜も無料でアップして、いろんな人にどんどん歌ってもらって、演奏してもらいましょう!」

と言う渡邊さん。ナイスアイデア、即採用!

その渡邊さんから、ナイスすぎる楽曲があがってきて、歌を、天才・ロザリーナと、僕の師匠である後藤ひろひとマンに依頼。

絵本制作の裏で、絵本の楽曲のレコーディングをしたのは、今回が初めて。

当然、ここにはレコーディングスタッフもいます。

そして、できあがった楽曲がコチラ

今、絵本『えんとつ町のプペル』の販売促進イベントとして、個展『えんとつ町のプペル展』の開催費用をクラウドファンディングで募っているのですが、これが大変な反響。

もちろん絵の力も大きいですが、いろんな方がYouTubeに『歌ってみた』動画をアップしてくださったおかげで、「音楽で『えんとつ町のプペル』を知った」という人も少なくありません。

ちなみに、この個展の準備も本当に大変。

交渉のことや、権利のことなど、なかなかハードな仕事を、さすがに入社2年目の吉本のマネージャーに任せるのは危険なので、読売テレビ『ガリゲル』の田村Pに、『えんとつ町のプペル展』のオーガナイザーを依頼。

ギャラリーの内装やグッズといった美術関係はハヤシコウさんに依頼。

今、この二人とは、恋人のように毎日、何十回もメールをしています。

私は海馬がバカになっているので、「お前、昨日言ってたことと全然違うじゃねーか!」を余裕で発動してしまうそうで、スタッフの皆様は大変です。

その裏で、一冊目の絵本から一緒に作っている幻冬舎の館野&袖山ペアに、「【在庫切れ】なんて、絶対にしちゃダメですよ。『初版1万部』なんて判断をしたら、僕、二度と幻冬舎と仕事をしませんから」と釘を刺し、「そもそも、オマエ、本を出させてもらっている立場なのに、なんで、そんなに偉そうなんだ」を発動。

仕方ありません。

デビュー当時からずっと、西野は偉そうなんです。

昨日、今日の話じゃないんです。

デビューから16年、『信頼と実績』の天狗なんです。

そうこうしているうちに、企画立ち上げから、実に4年半の歳月をかけ、絵本『えんとつ町のプペル』が完成。

『情熱大陸』で印刷所のオジサンにブチギレ倒していた『メス鬼』こと、装丁家の名久井直子様と相談し、「今回は皆で作った絵本なので、少しだけページ数を増やして、最後にスタッフクレジットを入れよう」と決めました。

(フランスのホテルでスタッフクレジットの挿し絵を描くエレガントな私)

(スタッフクレジットの挿し絵は、皆で一枚の絵を描いている様子)

(ものすごく笑顔で「西野さん、締切がヤバイのは百も承知なのですが、スタッフクレジットの挿し絵を描いてもらえませんか?ていうか、描いた方がイイので、とっとと描いてください」と地獄のような日本語を操る名久井女史)

たぶん、「映画のように、分業制で絵本を作りたい!」と考えた人は、これまで、僕以外にもたくさんいたと思います。

ただ、アイデアには1ミリの価値もなくて、実現させなきゃ意味がありません。

その為には制作費が必要で、制作費を集める為には、制作費が集まる導線作りが必要で、制作費が集まったら、今度はスタッフ集め。

何度も何度も衝突して、ようやく作品が完成したら、次はそれを届ける作業。

企画立ち上げから、制作、そして、お客さんの手に届くまでデザインすることを『作品』と呼ぶことにして、絵本『えんとつ町のプペル』は100人以上のスタッフで作りました。

だから、こうして、スタッフ個人の名前を出すのは、少し憚るんです。

汗を流してくれたスタッフは、他にもたくさんいるから。

「俺、ウォルト・ディズニー倒したいんですよね」

と言ったら、99.9%の人達がバカにしたんだけれど、この人達は「なんか、面白そうですね。じゃあ、具体的にどうしていきます?」と真面目に話を聞いてくれたのです。

そんなことをされると僕はもう半端なことはできなくて、「発売まで、あと少し。頑張らないとなぁ」と、この文章を書いていたら、午前4時を過ぎちゃってんじゃん!

明日も朝から仕事で、またもや寝不足が確定しちゃったのですが、たとえば、この長ったらしい文章で、一人でも多くの人が『えんとつ町のプペル』のことを知ってくれたら、安いもんです。

外野が何を言おうが関係ありません。

『えんとつ町のプペル』を起爆剤にして、本気で世界を変えにいっちゃう。

『えんとつ町のプペル展』来てね。

個展最終日の『打ち上げ参加権』をクラウドファンディングのリターンで出したので、あなたの話はそこで聞かせてくださいな。

僕も散々っぱら否定され続けてきたから、挑戦するあなたの痛みはよく分かるので、その日は、めいっぱい肯定しちゃう。

その前に、酔っ払って潰れていたらゴメンね。

では、仕事に戻ります。

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