激動の昭和の時代を振り返るとともに、現代に残したい当時の学びを探るコーナー「昭和土産ばなし」

「今の時代の風紀は乱れとる。昔はもっとしゃんとしていたもんだ」「今の若いモンはすぐにキレる。辛抱というものを知らん…」といったセリフ、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? 

筆者は30代ですが、高校生の思春期真っ只中の頃、ちょうど「コギャル」「ルーズソックス」が世間で流行し、テレビで当時の50〜60代の昭和世代の方々が、「今の若者は乱れていますよねぇ。私らの時代は…」と話していたように記憶しています。それを聞いて育った今の若者は、きっと盲目的に「昭和はきっと素晴らしい時代だったんだ」と思い込んでいるはず。

では果たして、昭和の時代は本当によかったのでしょうか?

今回の記事では「昭和のマナー・モラル」について紐解いていきたいと思います。

昔の方がいいと言っている人はたくさんいるけれど…

「いやぁ、昔の方がいいと言っている人はたくさんいますけど、実際は昔の方がヒドかったんですよ」と、のっけから仮説をひっくり返してくれたのは、広告媒体を中心に幅広い分野で執筆活動を行う、コピーライターの大倉幸宏さん

実は大倉さん、古い新聞を読むのが趣味で、自身の著作『「昔はよかった」と言うけれど』では、昭和初期時代の、日本人のマナー・モラルについて赤裸々に記していらっしゃるんです。

出典『「昔はよかった」と言うけれど』大倉幸宏著(新評論)

ここで、『「昔はよかった」と言うけれど』の中から、その一例を紹介しましょう。

2006年、衆議院の教育基本法に関する特別委員会で、大前繁雄委員が言ったセリフです。

「今の日本の国のモラルの低下というのは実に深刻なものがございますので、私は、戦前というのはいろいろ批判されますけれども、モラルという面では非常に水準が高かったと言われております(中略)。ですから、戦前のことをある程度参考にして、迷った時は原点に返れと言いますから、過去のそういうものを、いい点を取って現在の教育に生かしていただきたいと思います」

出典『「昔はよかった」と言うけれど』大倉幸宏著(新評論)

しかし、大倉さん曰く、実は戦前も戦後も、昭和30年代後半までは、非常にモラルやマナーは悪かったそうなのです。

ここで、『「昔はよかった」と言うけれど』に載っている昭和当時のエピソードの中から、象徴的なものをご紹介します。

新聞を見るとわかる、昭和当時の実態

当時の新聞を振り返ってみると、そこには驚きのエピソードの数々が…。

出典讀賣新聞・一九四〇年七月五日付

集団をなしたハイカー(ハイキングをする人)は、群集心理に酔って粗暴に流れがちになります。始発駅の列車や乗換駅で窓から乗り込み荷物を投げ込む。最近では窓から荷物を投げ込んで座席をとって置くと、先に乗り込んだハイカーがこれをホームに投出して座りこみ、そのため口論が始まる。

出典讀賣新聞・一九四〇年七月五日付

窓から電車に乗り込む!?まるでアクション映画のワンシーンのようなことが起こっていたのだそうです。

また、乗客同士によるケンカなども、今よりももっと、頻繁に行われていました。

出典東京朝日新聞・一九三〇年三月二一日付

若い連中は進行中の列車の窓目がけて飛びつき、窓から乗り込む。(中略)しかも最後部の車内では席の奪い合いから殴合いがはじまった。立派な紳士と学生らしいのが血を流しての格闘である。これに捲き込まれて、他の客もそこここで殴り合いをはじめた。

出典東京朝日新聞・一九三九年一月一一日付

さらには、電車の中も、ひどい有様だったよう。下記は、ある車内清掃担当者の言葉です。

奇麗に掃除した壁などにはきつけられたタン、ふみにじられた鼻をかんだ紙、御年入りに細かく千切ってまかれた紙片…ほんとにも少し何とか気をつけてくれないものですかねぇ。

出典東京朝日新聞・一九三〇年三月二一日付

河川へのゴミの投棄も日常茶飯事

金沢市当局は月に一二度川ざらえを行っているが、それでも次から次へと炭俵一杯に詰め込んだゴミや古い屋根板を始め不潔物等を投げ込むので、忽ち河の中は塵芥で埋もる有様である。

出典北國新聞・一九二八年三月一七日付

銭湯での自分勝手な行動の数々

男湯では十人の中三人まではお尻を洗わないで湯ぶねにドンプリ入り、前をゴシゴシこすり、背中を縦横に流す。

出典東京朝日新聞・一九二六年四月二九日

風呂屋を洗濯場と心得てるお内儀(かみ)さんの多いには驚き入ります。勿論それは少数の多分極まった人ではありますが、いつだって一人や二人見かけない事はありません。

出典讀賣新聞・一九二九年八月一二日

以上…。昭和のイメージが映画『三丁目の夕日』のような美しい世界だと思っている方にとっては衝撃的なのではないでしょうか。今では考えられないような出来事が日常的に行われていたようです。

海外旅行のマナーの悪さも目立っていた

さらに大倉さんは言います。

「私が著書で書いているのは戦前の昭和の姿ですが、戦後も、家庭から出るゴミを川に捨てるなどの行為は続いていましたし、昭和30年代、40年代前半までは、ずっとそんな状態だったようです。

また、日本人の海外旅行が解禁されたのが1964(昭和39)年なのですが、当時の日本人は海外旅行先のホテルなどでも“自宅と同じような感覚”で、廊下を浴衣1枚やステテコ姿で歩いたり、スープを飲む時に音を立てたりと、旅行マナーの悪さが外国人づてに報じられていました。あと、酒グセの悪さが今よりも顕著で、海外では頻繁に、現地の人に酔っ払ってからんだりしていたそうです」

昭和のイメージ像がガラガラと音を立てて崩れます…。大倉さんの書籍やお話から察するに、どうやらマナー・モラルは今の方がよっぽどよさそうです。

さて、今回はここまで。次回はさらに、当時の昭和のことを実体験として記憶している方にもお話を伺います。

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