記事提供:サイゾーウーマン

先日、東京・六本木にて「女を、生きのびろ!第3弾 上野千鶴子トークセッション 私たちのエロスはどこへゆくのか?」という女の性について考えるイベントが開催された。

登壇したのは、『スカートの下の劇場 ― ひとはどうしてパンティにこだわるのか』(河出書房新社)や『おひとりさまの老後』(法研)などの著書で知られる、社会学者の上野千鶴子さん。アグネス・チャンの子連れ出勤を擁護した「アグネス論争」などでも有名だ。

同イベントの参加資格には「性愛の話題に対して極度の抵抗感や嫌悪感がない女性」とあり、参加に当たって上野さんの『発情装置 新版』(岩波現代文庫)が課題図書として指定された。

同書は、ブルセラ問題から春画、売春、少年愛マンガまで、性をあらゆる側面から論じている。女性が、性についてオープンに語れるようになったといわれる近年。

ティーンズラブコミックという女性向けのキレイ絵柄のエロマンガや女性向けのAVレーベルまでも登場した一方で、まだまだ女性が性に対して正面から向き合うことのできない社会だと実感することも。

そのため主催者側は、こうしたイベントに足を運ぶ女性はレアな存在であると述べ、筆者も「性に対して抵抗感がない」と自覚する女性は、それだけで「自分は性的に解放されている」と思っているのではと感じていた。

同イベントは、主に参加者からの質問に、上野さんが答えていく形で進行。上野さんのめった切りともいえる回答により、彼女たち、そして筆者も、「どれだけ自分たちが社会的通念に縛られているか!」と気付いたのではないだろうか。

「男に選ばれない女はカス」という洗脳

上野さんによる“一刀両断”な発言とは、どういったものなのか?

 例えば、参加者からの「職場の男性にセクハラをされたが、大人の女性としてどう切り返せばいいのかわからない」という質問には、「イヤなことはイヤだと言わなければ、相手には伝わらない。面倒くさい女だと思われた方が、あとがラクですよ」と返すなど、全ての質問に会場の予想を上回る返事が返ってくる。

バツイチである筆者が特にハッとさせられたのが、“女の承認欲求”に関しての言及。筆者はよく知人に、「一度結婚しているといいわよね、『一度は男に選ばれたんだ』っていう実績があると余裕でしょう」などと言われることがある。が、その考え方を上野さんはバッサリと切って捨てる。

「女性の場合、(自分の性欲からではなく)男から性欲の対象として認めてもらいたいという、女としての承認欲求がある人もいます。セックスをしている女の子に『楽しいの?』『感じるの?』と聞くと『いいえ』と言うんです。

快感がないのにするってことは、男の性欲のために自分の体を提供しているということ。40年前までは、男に選ばれない女はカスだった。『オレサマをむらむらさせる女』だけが女で、それ以外は女の規格ハズレ。そうやって女性たちは洗脳されてきました。

だけど実際は、『男に選ばれても選ばれなくても私はわたし、自分の価値ぐらい自分で見つける』というのが、40年前のウーマンリブでした」

こうして上野さんの話を聞くと、男性が言う「女として見られないよりも、『やりたい』と思われた方がいいでしょ?」といったセリフも、真に受ける必要はなく、「自分の性欲の言い訳をしているだけでは?」などと、違った視点から捉えることもできそうだ。

しかし、こうした「男に選ばれる・選ばれない」というテーマが議題が上がること自体、いまだ女が自らの価値を、自分の尺度で決めることができない証しなのかもしれない。

不倫をするのに夫の許可は必要?

今年、話題になっている不倫問題についても、同イベントのトピックとして上がった。とある参加者の「夫公認で、外に男を作りました」という発言に、会場が感嘆していると、上野さんはこれに疑問を投げかける。

「どうして夫に許可を求めるんですか? いちいち、自分の体や感情の傾きの許可を誰かから得なければいけないんですか? 身体も感情もあなた自身のものでしょう。なぜ許可がいるかといえば、結婚という契約関係の中に、性的身体の所有権が入っているからです。

日本には、不倫をした本人ではなく、不倫相手に賠償請求できる権利があります。それは『自分の所有物を無断で使用された』という損害賠償請求と同じ法理なんですよね」

確かに結婚とは、「この人以外とはセックスしません」という約束でもあり、だからこそ、配偶者以外の人とセックスをしたら、それは「不倫」という“罪”になる。

しかし上野さんは、「亀山早苗さんの『人はなぜ不倫をするのか』(SBクリエイティブ)という本の一章に私が登場しました。彼女から『人はなぜ不倫をするのか?』と聞かれて、私は『人はなぜ不倫をしないのか? そっちの方が私には謎です。

結婚をするから不倫になるんですよね? なんで守れない約束をするのか、私には理解できません』とお答えしました」と、バッサリ。

恐らくたいていの人は、結婚当初、不倫をしないことが「守れない約束」だとは思っておらず、結婚は「ゴール」であり、一生安泰を約束してくれる「約束」と考えているはず。この点についても、上野さんは、「人生が50年だった時代と現代は違うんです」と言及を続ける。

「19歳や20歳で出会った男と、自分たちの変化を共有し合って、成長し合っていけたらいいけれど、その成長の度合いに必ずズレが来る。

今、人生は100年だからね。20代で結婚するっていうことは、あと80年、1人の男と生涯契約を結ぶってことです。こんな大胆な、無謀な人がここにいるの? よくできるね、そんな約束。

これから一生、恋愛したい気持ちが起きないっていう保証は、どこにもないんですよ。人生って、何があるかわからないから面白いのに」

さらに、女たちが結婚するときに抱く、理想の男性像についても、「逆の立場になってみて」と提案し、その矛盾点を暴いていく。

「自分の生活の安全保障をしてくれて、経済力もあって、知的刺激もあって、性的満足も与えてくれて、自分に関心を持ってくれて、愛してくれる。それをたった1人(の男性)で充足できるなどという妄想を、どうやったら抱くことができるんですか?

逆のことを考えてください。自分がこれだけのことを誰かから要求されたら、その人に全部調達してあげられると、どうして思えるんですか? 私は謙虚な人間です。だからそんなこと、到底思えません」

こうした上野さんの考え方に、ハッとさせられることの連続である参加者たち。筆者自身も、普段どれだけ「結婚とは、男女とはこうあるべき」という足かせを付けたまま生きているのかを実感させられた。

上野千鶴子の本は「古くさく」なるべき

最後に上野さんは、自身が「結婚」という道を選ばなかった理由について、「私は、自分の性的な自由や感情の動きに契約で鎖を付けたくないから、結婚という道を選びませんでした。だけど、それには代償があるんです。

結婚をしていないと一人前に見られないとか、規格外にさせられるとか、差別されるとか。子どもを産まない女は一生誰からも信用されません。そのくらいの覚悟はしておいた方がいいですよ。でも代償に見合うものは得たと思っています」と発言。

しかし、それは非婚という生き方だけの話ではなく、「どんな道を選んでもメリットとデメリットがある」と言い、「結婚をした方も、確保した地位や家族など得たものがありますよね。自分が得たものと、そのために支払ったものがある。

その帳尻が合っていればいいんです。私の帳尻は黒字です。どちらにしたって、代償は支払わなければいけません。帳尻が合わなくなったらやめればいいんです、それだけのこと」と、結婚を選んでも、非婚を選んでも、どんな人生だろうが、何らかの代償はある。

結局は、自分が選んだ道への覚悟があるかどうかであると、結論づけていた。「性愛の話題に対して抵抗感がない」女性たちが集まる場であったが、上野さんの“めった切り”なトークと会場の反応を見ていると、

いまなお、女たちの体への意識は、古い価値観から抜け出せていないことがよくわかった。しかし、ある参加者が、『発情装置』について「内容が古くさい」と述べ、それに対し、上野さんが「それがこの本の正しい読み方です」と答えていたのが印象的だ。

上野さんの意見をどう捉えていくか、それこそ、性愛や男女関係、結婚などの問題に囚われている女性が、そこから脱する1つの足がかりとなるかもしれない。

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