記事提供:VICE

出典All photos by Noah Friedman-Rudovsky.

長らく、マニトバ居住区(Manitoba Colony)では、悪魔が女性住民に性的虐待を加えていると信じられていた。

朝目覚めると、シーツは血と精液にまみれているにもかかわらず、女性たちは何も覚えていない。服を着て寝ていたはずなのに、朝、起きると裸で、身体中に汚い指紋がついている。草原で男に押し倒される夢を見て、目覚めると髪に草がついている、そんな出来事を説明する手立ては他になかった。

被害者の1人、サラ・ギュンター(Sara Guenter)の場合、謎はロープだった。彼女が朝目覚めると手首と足首にロープが巻きついており、皮膚には青痣が残っていた。2013年に訪れたサラの家は、ボリビアのマニトバ居住区にある煉瓦柄があしらわれたコンクリートの質素な家だった。

保守的メノナイトはアーミッシュと同様、現代文明や科学技術の利器に与るのを拒む。マニトバ居住区では、超保守的メノナイトのように、俗世からできるだけ離れた場所で生活している。

近くの畑から大豆とモロコシの匂いが漂ってくるなか、私はサラに話を訊いた。不気味なロープの他に、虐待された翌朝、シーツは汚れており、彼女は割れるような頭痛、身体の痺れ、倦怠感に悩まされていたそうだ。

サラの17歳と18歳になる娘2人は、壁に隠れ、青い目で静かに私をじっと見つめていた。悪魔は家中を蹂躙した、とサラは語る。2008年、娘たちまでも汚れたシーツの中で目覚め、性器の痛みを訴えた。

一家はドアに鍵をかけた。サラは、眠らず、何が起きているのか確かめようともした。マニトバ近くのサンタ・クルス(Santa Cruz)に住む誠実なボリビア人が夜警もした。

しかし、マニトバ居住区には電気が通っておらず、夜は暗闇に包まれるため、埃の舞い上がる道路から離れた家族の平屋にまで監視の目は届かず、性的虐待は続いた。

「何度も何度も起きたから、虐待された回数はわかりません」。ここに住む女性の大勢が母語である低地ドイツ語で諦めを露にした。

授業を受けるメノナイトの子供たち.ボリビア, マニトバ居住区.

当初、自らの他にも被害者がいるのを知らなかったため、家族は、夜な夜な起きる変事を口外しなかった。サラが娘たちに話したあと、噂は広まったが、「誰もサラの話を信じなかった」と事件当時、近所に住んでいたペテル・フェール(Peter Fehr)は回想した。

「不倫を隠すためにつくり話をしているのだ、と住人は信じていた」

一家は、住民2,500人を統治する牧師たちの団体に助けを求めたが、彼らはいっさい対処しなかった。その後、同じような噂は何度も広まった。居住区のあちこちで、毎朝、同じような変事の痕跡が発見された。

パジャマが引き裂かれ、ベッドは血と精液にまみれ、割れるような頭痛と知覚麻痺が居住区の女性たちを襲ったのだ。なかには恐ろしい瞬間を覚えている女性もいた。彼女たちが目覚めると1人、もしくは複数の男たちに押さえつけられ、叫ぼにも叫べない状況だったそうだ。しかし、彼女にその後の記憶は全くない。

この変事は、粗野な女性の妄想、神の災など、様々な解釈がなされた。「夜中に奇妙なことが起きている、としかわからなかった」。元マニトバ居住区長、アブラハム・ウォール・エンス(Abraham Wall Enns)は当時を振り返り、「犯人が誰かわからないのに、どうやって止める?」と当時の困惑した心境を振り返った。

誰にもなす術はなく、何の対策も講じられなかった。しばらくの間、サラは、恐ろしい夜毎の変事を避けがたい現実、と受け入れるほかなかった。変事の翌朝、一家は頭痛を押して起床し、シーツをはがし、日々の暮らしを続けていた。

2009年6月のある晩、隣家へ侵入しようとした2人の男が捕らえられた。彼らは仲間を密告し、芋づる式に19歳から43歳のマニトバ男性9名が捕まり、後に彼らは、2005年から居住区で性的虐待を繰り返していた、と自白した。

被害者や目撃者の動きを封じるため、容疑者は、牛の麻酔に利用される薬品などを調合したスプレーを使用していた。後に撤回された当初の自白によると、容疑者は、ときに複数、ときに単独でベッドルームの窓外に隠れ、家の中にスプレーを噴射し、家族全員に効果が現れたのを確認したのち、屋内に忍び込んでいたらしい。

しかし、約2年後、2011年に裁判の開始前に、犯行の全貌が明らかになった。その記録はまるでホラー映画の台本のようだった。被害者は3歳から65歳。3歳の少女は、処女膜を指で傷つけられていた。既婚者、未婚者、住民、観光客、精神障害者を問わず、数多の女性が被害にあっていた。裁判では取り上げられなかったが、住民によると、男性や少年の被害者もいたそうだ。

2011年8月、スプレー麻酔を調合した獣医は懲役12年、犯人たちは懲役25年(ボリビアの最高刑は30年)の実刑を課された。公式な記録によると、被害者は130人に上る。マニトバ居住区で生活する半数以上の家族に1人被害者がいる勘定だ。しかし、虐待を受けたのに名乗り出なかった女性も多く、被害者はさらに多いと予想されている。

サッカーに興じるメノナイトの子供たち.ボリビア, マニトバ居住区

事件後、女性被害者に対する治療、カウンセリングなどはいっさい実施されていない。容疑者の供述より踏み込んだ調査もされていない。犯人たちが逮捕された後、住民が事件について話し合う機会も一度もない。それどころか、沈黙が続いている。

ウォール居住区長は「すべて過去の出来事になった」という。「ずっと心に留めておくより、忘れてしまうのがいい」。時折、ここを訪れるジャーナリストの取材に応じる以外、この事件について語る住民はいない。

しかし、9ヶ月の調査、マニトバでの11日間を経て、私は、この事件が解決していないのを確信した。精神的なトラウマ、性的虐待、性的いたずら、近親相姦の証拠が見つかった。主犯格の男性たちは服役中だが、薬を使用したレイプが事件が解決したはずの今でも続いている、という証拠もある。

つまり、悪魔の呪いは依然として解けていないのだ。

出典 YouTube

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス