キャリアをどう構築していくか。これは社会人にとって、ずっと考え、向き合い続けていくことになる大きなトピックのひとつです。DAYLY ANDSの読者世代にとっては、キャリアを構築していく中での「転職」という選択は、おそらく当たり前の選択肢として頭にあるのではないでしょうか。

また最近ではテクノロジーの発達により、組織に所属をせずに個人で仕事をすること、フリーランス、起業といったことも、より身近に感じられるようになってきました。
転職が日本の労働市場で一般的になってきたのは、ここ30年前後の話。それまでは終身雇用が一般的で、キャリアは多くの場合、自分が選ぶものではなく「会社組織が決めるもの」でした。

日本を取り巻く経済環境が変わって終身雇用を保証できない会社も増え、必然的に個人が自身のキャリアを主体的に考え、選択していく必要がでてきた中で、「転職」が次第に一般的になってきたという流れがあります。

今回は、現在の労働市場に出てきている新たなトレンド「スラッシュキャリア」について紹介したいと思います。

「スラッシュキャリア」とは

「スラッシュキャリア」とは、肩書きを『/(スラッシュ)』で区切るように、ひとりの人が同時並行で複数の肩書きを持ってキャリアを構築していくこと、をここでは指します。この『同時並行で複数の肩書き』を持つ場合にも様々なタイプがあります。

タイプ①:いくつかの仕事を同じ比重で複数持つ
タイプ②:メインの仕事をしながら、他の企業や団体からの副業を持つ
タイプ③:メインの仕事をしながら、個人を看板にした仕事・活動をする
タイプ④:メインの仕事をしながら、他の企業や団体でボランティア(プロボノ)活動をする

①は公に「副業」を推進している企業で働く個人やフリーランスで仕事をしている人が多いようですが、②・③・④については普段はどこかの企業で会社員として仕事をしながらいずれかのパターンでスラッシュキャリアを構築しているパターンです。

最近では、社員の育成の一環として「プロボノ(仕事スキルを活かしたボランティア活動)」の制度を取り入れ、社員の本業とは関係のない分野の活動を会社として支援する制度が取り入れられたり、大手企業でも社員の副業を公に認め奨励するというような事例も出てきています。

「スラッシュキャリア」のメリット・実情

「スラッシュキャリア」を構築していくことは、個人にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。実はこの記事を書いている私自身、スラッシュキャリアを構築してきたひとりです。

もともと中途採用・転職支援の業界で企業に所属するいちコンサルタントとして仕事をしてきましたが、転職以外でも人の人生やキャリアの可能性がひらくきっかけづくりをしたいという考えから、2011年に『あなたの"なりたい”がかなう』をテーマにした女性コミュニティGirls Beeを立ち上げ、代表として運営をしています。テーマに関連した講演、大学でのゲスト講師、Webメディア等での執筆活動も行ってきました。

そんな私自身の体験から感じているスラッシュキャリアの主なメリットは

1.自分が能力を発揮できる分野の仕事をし一定の安定した収入を得ることができる
2.まだ経験がないが興味のある分野、経験を積みたい分野での経験を自ら得て、中長期的な将来の仕事につなげていくことができる
3.一つの組織・仕事からだけでは出会えなかった人に出会える

といったところでしょうか。

自立した生活をするにあたり、一定の収入を確保することはとても重要なことです。一方で、フリーランスや起業が以前よりも身近になったとはいえ、いきなり自分一人の力で仕事を継続的に獲得していくことは簡単なことではありません。

またいざ一人で仕事をしはじめてみると、組織で働くからこそのやりがいや醍醐味をあらためて感じたり、組織で働いていると会社や一緒に働く人がいかにサポートしてくれるかに気付いたりするはずです。

スラッシュキャリアとして複数の肩書きを同時並行で持つ仕事の仕方を選ぶことで、現在自分が価値を発揮できる仕事で一定の収入を得ながら、まだ経験はないけれど将来的にしてみたい仕事・活動へ幅を広げたり、一つの組織や仕事では出会うことのなかった様々なバックグラウンドの人に出会うことになり、自分自身がイメージできる人生が変わる可能性すらあります。

「スラッシュキャリア」で気をつけたいポイント

では「スラッシュキャリア」をはじめるにあたり、どのような点に気をつけべきでしょうか。

・お金を頂いている仕事への自覚と責任

いくつかの仕事を同じ比重でする場合でも、何かメインの仕事を一つ持つ場合でも、お金を頂いてしている仕事に対して、その自覚と責任を持つことは「スラッシュキャリア」を構築していくにあたり一番大事な要素の一つです。

複数の仕事を掛け持ちしてどちらも中途半端になって結果的にいずれからの仕事も失ったり、副業やボランティア活動に熱心になるあまり本業がおろそかになっては本末転倒。お金を頂いている以上は、それ相応の価値を提供する、そうした覚悟と責任のある行動が大切です。

・タイムマネジメント

自分に与えられている時間の中で、何にどれぐらいの時間を使うのか、複数の仕事・活動を同時並行に行う場合にはそうした意識がより強く求められます。自分自身が心地よくいられるペース、また休息や余暇の時間も含めて自らの時間を主体的に管理していきましょう。

・会社の規定やコンプライアンス規約の確認

会社員として仕事をしながら、その他の営利もしくは非営利の仕事・活動をする場合に注意したい点です。現在所属している会社の就業規定を確認しましょう。

副業の規定のみならず、一般的に企業は、企業の情報を直接外部に持ち出したり、それを直接的に使って外部で活動をすることはコンプライアンスの観点から禁止をしているはずです。事後トラブルを避けるためにも、社に所属している場合にはそうした点について事前に確認をしたほうがよいでしょう。

・目的意識・マネタイズへの意識

他の仕事・活動が営利目的ではない場合、それを行う目的を明確にしておきましょう。そうすることでその経験をより有意義にすることができ、また続けることのモチベーションやいつまで続けるかの判断が必要になった場合も、目的をあらかじめ明確にしておくことで判断がしやすくなります。

他の仕事や活動が、自分がこれまで経験したことのないことの場合、最初は経験を積むということを優先に無償で行うことはキャリア構築の選択肢としてありだと考えます。しかし一方で、その仕事や活動を中長期的には有償化、お金を頂いて取り組む本格的な仕事にしていきたい場合は、どの時点でどういう風にマネタイズしていくかについても考えながら取り組む必要があります。

上記のタイプ③のようなメインの仕事をもちながら、個人を看板にしていくような場合にこの観点はとても重要です。

「社外の経験は、個人の秘められた可能性を伸ばす」

私の身の回りでもこうした「スラッシュキャリア」を構築している「スラッシャー」が増えてきているように感じます。またこうしたスラッシュキャリアとしての生き方・働き方を支援するようなウェブサービスや人材エージェントも増えてきています。

今年6月に日本の大手企業の「兼業解禁」の事例として話題になったロート製薬株式会社のプレスリリースには、同社が従業員の兼業を解禁する理由としては「社外でも経験を積むチャンスは、個人の中に秘められた可能性を伸ばすことができると考えています。新たな挑戦をする際にも、人の力が必要です。自立・自走する人を一人でも多く育てていきます」と明確なビジョンを掲げています。

参考:ロート、社員60人が副業スタート 地ビール製造も

日本の労働市場で「終身雇用」が当たり前だったところから「転職」という選択肢が受け入れられ一般的になっていったように、ひとりの人が同時並行に複数の仕事を持つ生き方をすることがあたり前になる日もそう遠くはないと私は考えています。
あなたも「スラッシュキャリア」構築の一歩を踏み出してみませんか。

小川麻奈
日本生まれ、日本育ち、シンガポール在住。転職支援・中途採用支援、ヘッドハンティング、女性支援、プライマリーリサーチ等のビジネスに従事。「あなたの”なりたい”がかなう」Girls Bee創立者兼代表。

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