記事提供:R25

昨今、スポーツの分野にも次々と新しいテクノロジーが進出している。その最先端といえるのが、人工知能(AI)を活用したチーム運営のサポートだ。

「たとえば、メジャーリーグのスカウティングなどに機械学習の技術が用いられています。選手のデータを分析し、獲得するべきか否か、それも是が非でも獲得したほうがいいのか、そうでもないのか、その“程度”まで割り出すことができます」

そう語るのは、米データロボット社のデータサイエンティスト、シバタアキラ氏。同社ではスポーツ界をはじめ、様々な分野に機械学習のプラットフォームを提供している。

「機械学習とは、簡単にいうとデータを使ったアルゴリズム予測。スポーツのように原因と結果の関係の法則が複雑で、かつ確率的な要素が強い問題は、機械学習が得意とする領域です。

以前、イギリスのテレビ局の番組で、ブックメーカー、数学者、データサイエンティストなどがサッカーの試合結果を各々のアプローチで予測し合う企画があったのですが、最も精度の高い予測をしたのはデータロボット社のデータサイエンティストでした。

彼女はサッカーのルールも知らないのにですよ」(シバタ氏、以下同)

こうした、機械学習が導き出す高精度な予測をうまく活用すれば、勝利の確率を上げることも可能だという。

「たとえば“負け”の予測が出たら理由を分析し、次はメンバーや練習のやり方を変えたときにどうなるか、再度予測モデルを使って勝利へのアプローチを探っていく。もちろん、天候など不測の事態もありますが、効率的で精度の高いシミュレーションが可能になります」

では、さらに技術が進めば、人工知能がプロの野球チームを指揮したり、AIコーチの指導を受けたアスリートがオリンピックに出場したりといったこともあり得るのだろうか?

「それは現段階では考えにくいと思います。なぜなら、いくら精度の高い予測が出たとしても、それが役に立つかどうかは、結局のところ使っている人間次第だからです。もちろん、技術はどんどん進歩していきます。

データロボットが目指すのは、機械学習を誰でも、それこそ“レンジでチン”するくらい簡単に使えるようになる世界。そうなれば、専門的な知識がなくても高度な問題を解決できるようになるでしょう。

たとえば、『あなたが5年後に糖尿病になるかどうか?』『気になっている女の子といい関係になれるかどうか?』といった問題すら予測することができる。ただ、予測ができてもそこから先のアクションは、人間が考え決めなくてはなりません」

人工知能がいかに進化しても、人間の役割を奪うことはない。ただ、テクノロジーの恩恵にあずかるためには人間側の意識の変化が欠かせないようだ。

「スポーツ界に限らず、AIをどう使って、いかに広く応用していくかを考えるべきでしょう。今は専門知識を持ったデータサイエンティストが扱っている機械学習技術も、そのうちエクセルを使うのと同じくらい、当たり前のビジネススキルになるはずです。

機械学習アルゴリズムにどういうデータを教えて、結果をどう解釈して、いかに運用するか。それが人間の大きな役割になっていくでしょうし、そこを突き詰めるか否かが明暗を分けると思います」

スポーツでいえば近々、機械学習の運用に特化したデータサイエンティストがベンチ入りするようになってもおかしくない。監督やコーチ以上に、“AI使い”が勝負のカギを握る。そんな時代がやってくるかもしれない。

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