ちょっと前に起きた事件や事故などを振り返る「あれどうなった?」シリーズ。今回は2015年10月に発覚した、いわゆる「横浜傾きマンション騒動」を取り上げます。

三井不動産レジデンシャルが販売した横浜のマンションが傾いていることがわかり日本中に衝撃を与えましたが、先日、ようやく横浜市が正式に建築基準法違反を認定する方針を固めたとの報道がありました。

メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者でマンション管理士の廣田信子さんは、「傾きマンション」で明らかとなったさまざまな問題点を改めて記し、関係省庁やマスコミに対して「ここで幕引きとはしないでほしい」と強く訴えています。

傾いたマンション、建築基準法違反認定でも積み残された課題

こんにちは! 廣田信子です。先日、昨年話題となった横浜市都筑区の傾いたマンションに対して横浜市が、建築基準法違反を認定する方針を固めたと報道されました。

昨年10月の発覚から、耐震基準を満たしていないとあれだけ疑われていても、まだ正式に認定されていなかったんですね。

支持基盤に到達していないことが明らかになり、現に建物が傾いているのですから、そりゃあ満たしていないだろうと誰もが思いましたので、まだ、認定されていなかったことのほうがびっくりです。

その間の経緯を改めて調べてみると、まず、昨年11月に、横浜市に対し、事業主側が「大規模地震(震度6強~7)でも倒壊・崩壊する可能性はない」と報告していました(なかなか倒壊まではしませんから)。

横浜市はこれを認めて、「住民の避難勧告の必要性はない」としていました(姉歯事件の耐震偽装マンションより、まだ安全だと判断されたわけです)。

そして、横浜市は12月、事業主側に、このマンションの構造耐力について第三者機関の意見も踏まえた検証結果を報告するようにと指示していました。建物が沈み込んだりする長期荷重への耐久性と、中規模地震時の損傷の可能性を調査するようにということです。

これに対して、今年6月、三井住友建設と事業主の三井不動産レジデンシャルが、「傾いた棟は、一部のくいが強固な地盤に到達していない施工不良のため、長期的に十分な支持力がなく、震度5強の中規模地震で柱や梁が損傷する可能性がある」とする検証結果を横浜市に報告していました。

それを受け、横浜市は、報告書や構造計算書を精査し、「建築基準法違反と認定したわけです。全棟取り壊しの方針が決まっている今となっては、建築基準法違反と言われても、「やっぱりね、そりゃそうでしょう」という反応がほとんどだと思います。

建築基準法違反と正式に認定されるとどうなるかというと、国交省が改めて行政処分を検討することになります。

国交省は、今年1月、建設業法違反で、元請けの三井住友建設と下請けの日立ハイテクノロジーズ、さらに孫請けの旭化成建材の3社を指名停止や営業停止などの行政処分にしています。改めて、この3社に対して、建築基準法違反で行政処分を検討するわけです。

確かに、この3社が処分されるのは当たり前ですが、改めて今の法律の枠組みでは、このような物件を販売した三井不動産レジデンシャルにはお咎めなしなんですね…。

なぜマンションは手抜き工事の温床となるのか

そして、この問題が発覚後、言われていたさまざまな問題点は、ぱたっと報道が止まってしまいましたが、少しでも改善する方向に進むのでしょうか。

ディベロッパーができるだけ早く資金回収するために工事を急がせるため、工期が短すぎること(今回の杭工法も、この地盤には適していないけど、工期が早いと言うことで採用されたと言われています)。

元請けがしっかり現場を監督していないこと(現場監督は現場を見ないで、パソコンに向かっていることが多いと聞きます)。下請けが何の仕事もしないで、工程管理や現場の安全確保という名目でお金を抜き、実務は全て孫請けに任せきりという構造。

与えられた工期と予算では、杭打ちのデータをすべてそろえるのは無理だという現場の本音。このケースでは、旭化成建材の管理者が、杭の到達点の地盤の強度だけでなく、補強用のセメント量のデータまで改ざんしていたと大きく報道されました。

本人はそれを認めていないという報道でしたが、結局、何がこのような偽装を生んだのか、私たちは真相をよく知らされていません。

どう考えても、マンションを造って販売するという一連の仕組みの中に多くの問題を含んでいて、それを根本から解決しないと、安全なマンションを供給するという当たり前のことが当たり前にならないと感じずにはいられません。

ということは、私たちが安全な住まいを手にできないということです。建築物の施工に対する信頼性が揺れるという意味では、マンションに限ったことではありませんが、施主(工事の発注者)と実際に所有者となる者が異なる分譲マンションは、一番、施工精度が軽視されやすいのです。

東京五輪による人手不足が建設現場にもたらすもの

この横浜のマンションは、三井不動産レジデンシャルがいち早く全棟建替えと補償の方針を示したことで、何とか解決の道筋がつきましたが、それは、本当に稀有な不幸中の幸運だったのです。

全4棟建替えの場合、関係各社が負担する費用総額は約400億円に上るといいます。この中には、解体・建設費用だけでなく、引っ越し、仮住まい、一世帯300万円の慰謝料も含みます。このような条件提示は、まず考えられないことです。

杭や建物の施工不良と思われても、それを認めてもらえず、改修してもらえず苦しんでいるマンションが数多くあります。東京オリンピックに向け、今後、ますます現場の工期や人員のやりくりが厳しくなることでしょう。

関係した3社を行政処分するだけで、この事案が私たちに投げかけた問題が解決するとは思えません。国交省、マスコミの皆さん、これで幕引きじゃないですよね。この横浜のマンションは、9月19日の総会で正式に建て替えが決議される予定だと言います。

ここまで漕ぎ着けた管理組合の役員の方々に敬意を表すと共に、建替え決議後は、ぜひ、今回、何が問題だったのか、今後の教訓となる発信をして頂きたいと願います。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス