記事提供:VICE

※本記事は2014年11月26日に公開されたVICEの記事を転載しています

「世界中のフェスに侵入するカメラマン」として一躍有名になったマーカス・ヘイニー。彼の存在を有名にしたのはMTVが制作した「No Cameras Allowed」というドキュメンタリー映画だ。

今年の夏に公開され、フェス好きの間で大きな話題を読んだ本作品。今回は「時の人」となったマーカス・ヘイニーに実際にインタビューを敢行した。

もちろん紹介する内容の一部はれっきとした犯罪なので、決して真似はしないで欲しいが、この青年のストーリーはどこか希望に満ちあふれていて、観るものを笑顔にさせてくれるだろう。

4年間で50以上のフェスに参加!使ったお金はほぼ0円

マーカス・ヘイニーはこれまでフェスにお金を使ったことがない。しかし、ここ4年間で世界中で行われた50以上のフェスに参加。

あるときはスタッフの目を盗んで、またあるときはリストバンドを偽造して、多くのフェスに潜り込んだ。見つかって締め出されたこともあるが、最終的にはメインステージで、アーティストと戯れながら写真を撮影している。

マムフォード&サンズ(※1)のようなバンドと交流がある一方で、汚水溜めにしがみ付いて警備員から身を隠したり、性質の悪そうな輩と絡んでいたりもする。

そもそもフェスでの写真撮影は彼のちゃんとした仕事というわけではない。アメリカ大陸をヒッチハイクで横断しながら、フェスに潜入し写真を撮り、勝手に動画を作成してケーブルテレビに売り込みに行く。

そんなことをしている内に、マーカスは音楽業界から引っ張りだこのカメラマンになったのだ。そして、4年にわたる彼の活動がドキュメンタリーとして映画になった。

“時の人”マーカス・ヘイニーにインタビュー

映画のタイトルは『No Cameras Allowed」(トレーラーは冒頭でチェックできる)。内容はとてもシンプルで、トレーラーを観れば作品の概要が掴めるだろう。

VICEは今回、マーカスに電話取材を行い、映画について、そして彼の人生について語ってもらった。

早速だけど、最初に侵入したのはどのフェス?

2010年のコーチェラ(※2)が最初かな。

過去にチケット代を払って、フェスに行ったことはあった?

まだ1回もないね。コーチェラに行ったのも、近くで開催されていたっていうのと、僕の好きな女の子が行くってことが分かって…。

一人の女の子から全てが始まったんだね。コーチェラに侵入したときは、誰かが手伝ってくれたの?


友達のアダムと一緒だったんだけど、当時ガソリン代すらなかったんだ。そこでクレイグズリスト(※3)っていうウェブサイトで、ガソリンを入れてくれるクリスと出会って。

そこから3人で作戦を練ったんだ。金曜日の朝4時に、真っ黒の服を着てフェンスを飛び越えた。それからフェスが始まる正午まで、車とか簡易トイレの陰に隠れて寝てたんだ。

ドキュメンタリーのトレーラーを見せてもらったんだけど、偽造パスを印刷したり、リストバンドを自作したんだね。侵入するためにした工夫は他にもある?

やれることは全部やったよ。フェンスを飛び越えたり、リストバンドを偽造したり、警備のフリをしたり。ときにはアーティストになりきったりしてね。

一番ワクワクするのはどのやり方?

やっぱりフェンスを飛び越えて走る抜けるときかな。やり方は古典的だけど、群衆の中を走り抜けていくとカーチェイスをしているみたいで気持ちいい。他のオーディエンスに見られたり、励ましてもらうこともあるよ。

3日かけてグラストンベリー(※4)に侵入したっていう人の話を聞いたことがあるけど。

グラストンベリーは一番ガードが厳しいから、そういった類いのネタは尽きないよね。とにかくグラストンベリーは、最強にして最高のフェス。

僕は本当にラッキーだったんだ。貨物の搬送口から入ったんだけど、ちょうど他の輩も侵入しようとしていて、セキュリティが彼らを捕まえているところだった。その隙に入ることができたのさ。

運が良かったんだね。

ヘッドライナーのアーティストにも容赦ないからね。去年マムフォード&サンズがヘッドライナーとして出演した際に、会場に入る彼らのバスに一人隠して突っ切ろうとしたんだけど、ちゃんと捕まえられたよ。

聞いた中で一番凄かったのはハンググライダーで会場に上陸するっていう…それにしてもグラストンベリーのチケットも持たずに、アメリカからイギリスに向かうのはリスクが高くない?

ケーブルテレビの仕事で、ちょうどその時期にスペインの牛追いのイベントに参加していたんだ。

4日間滞在してたんだけど、帰国を延期してヒッチハイクで会場に向かったんだ。トレーラーにも出ているグリムグリムと呼ばれる男にもヒッチハイクで出会ったよ。

彼は「もしマーカスのような男と出会って、もの凄く馬鹿げていて訳も分からない、さらに不可能なお願いをされたらどうする?」と話してたね。

そうだね。グリムグリムは特別な仲間だよ。グラストンベリーまで連れて行ってくれたし、僕が世界中を回っている間もずっと連絡を取ってたよ。僕はマムフォード&サンズのアルバムジャケットの撮影をしたんだけど、裏面には彼が映っているんだ。

いいね。トレーラーの中でグラストンベリーやコーチェラという名前が上がっていたけど、他にはどんなフェスに行った?

コーチェラ、ボナルー(※5)、グラストンベリー、レイルロードリヴァイバルツアー(※6)とかだね。でも作品のクレジットに載っている中だとグラミー(※7)が一番のお気に入りかな。

グラミー賞の授賞式にはどうやって侵入したの?

あれはかなり難しかった。セキュリティとか金属探知器を通過するタイミングを探るのに、かなり時間がかかったよ。そこを抜けると、候補者たちが皆座っているフロアに出られるんだけど、そこにマムフォード&サンズのメンバーもいたんだ。

グラミーに侵入することは彼らには伝えてなかったから、リサイクルショップで仕立てたタキシードを纏った僕を見て、物凄く驚いていたよ。彼らと一緒に座っていたんだけど、それは本当にクレージーというか、シュールな光景だったよね(笑)。

マムフォード&サンズとはどうやって出会ったの?

コーチェラの後かな。いつものように会場に侵入して、お気に入りのバンドを撮影したんだ。コーチェラとボナルーに侵入したことをまとめた「コナルー」っていう作品を作ったんだ。

それで彼らのライブが終わった後、スタッフにそれを手渡してこう言ったんだ。「気に入ったらバンドに渡してくれない?つまらなかったら捨てていいから」

まさかそのスタッフが本当にバンドに渡してくれるとは思ってもいなかったけど、彼はマネージャーにその映像を渡してくれたんだよね。そこからエドワードシャープ(※8)にわたって、それを観た彼らがツアーに招待してくれたんだ。

ただ唯一問題だったのは、レイルウェイツアーと大学の最後の試験が重なっていたこと。卒業かツアーかを選ばないといけないはめになったのさ。

そしてツアーを選んだ、と。大学での専攻は?

映画制作。まあでも今も「高卒」なんだけどね。

締め出された後に待っていたもの

トレイラーの中では会場からつまみ出されるシーンがあるけど、締め出された後はどうするの?

捕まって外に放り出されても、Tシャツを裏返して別人のフリをしてもう一回チャレンジするだけさ。でも一番ひどかったのは、2010年のボナルーだね。

日曜日につまみ出されて、農機具に乗せられて、4マイル(6.4km)先の本当に何もない場所でいきなり降ろされたんだ。それが一番最悪だったね。たしかに手錠はかけられたことはあるけれど、逮捕されたことはないよ。

コーチェラ以降、拍車がかかったようにどんどんフェスに侵入していったね。

何ていうかコーチェラにやられちゃったんだよね。本当に最高の時間だった。

それから撮った写真をFacebookに載せたんだけど、それを観た一人の友達が興味を持ってくれて、というのも彼女はボナルーでインターンとして働いていた子なんだけど、彼女が上司にそれを見せたらしいんだよ。その後にその上司から連絡がきたんだ。

なるほど。

彼は「このJAY Zの写真いいね。もし良かったらこの写真をプロモーションか何かで使わせてもらえない?」って言ってくれたから、二つ返事で「最高!よろしく」って。

報酬は渡せないって言われたんだけど、その代わりボナルーのチケットを2枚もらえた。それで1枚を売りに出して、そのお金を飛行機代にあてた。

でも、もらえたのがプレスチケットじゃなかったから、カメラを持ち込むことができなかったんだよね。だから結局ボナルーにもこっそり侵入したんだ。

「No Cameras Allowed(カメラ禁止)」っていうタイトルはここから来てるんだね。

「No Cameras Allowed」っていうフレーズは、色んなところで使われているんだよ。コンサートだったり、ステージ横だったり、とにかくカメラを撮ることを禁止されている場所だよね。

侵入は、フェスに対する愛の証

トレイラーの中で「フェスに侵入することのモラル」について語っていたけど、罪悪感を抱いたことはある?それとも、全然気にしてない?僕から見ると、全然気にしてないように見えるけど。

まず第一に、僕は誰も傷つけていない。チケットを盗んだわけでもないからね。しかもコーチェラのチケットは売り切れだった。

そこで、何かできないかなって考え始めたんだよね。このドキュメンタリーは「フェスに侵入するやつを追った話」ではなくて「音楽業界の中にあるリアルなこと」を伝えていると思う。

言うなれば、音楽フェスに対してのラブレターみたいなものかな。この映画を観た人が実際にフェスに行って、あの空間を体験してくれたら本望。生の音楽ってのはフィルムには映らない素晴らしさがあるから。

そうだね。フェスから帰って来ても、行ったことのない人と素晴らしさを共有することは出来ないからね。

説明できるものではないんだ。スクリーンの中で全部は説明できないからこそ、これを観てたくさんの人が現地に行ってくれたら嬉しい。

これが最後の質問。これまで行ったフェスの中で、お気に入りは?

グラストンベリーだね。

やっぱり

まずアメリカ人はコーチェラに行って、地球上で最も幸福で最高の場所を体験すべきだと思うよ。もし世界に出る機会があるなら、絶対にグラストンベリーに行くべきだね。

8日間の休みがあれば十分。もうね、本当に最高なんだ。コーチェラはステージを観ること以外に特にすることはないけど、グラストンベリーは違うね。何ていうか「不思議の国のアリス」みたいな世界さ。

大人のためのディズニーランドって感じだよね。

そう、やばいよね。あそこでは何もしなくても最高だから。とにかくイービス一家(※9)に感謝だよ。

※1)マムフォード&サンズ:イギリス・ロンドン出身の4人組フォークロックバンド。2013年にはグラストンベリーのヘッドライナーを務めた。

※2)コーチェラ:アメリカカリフォルニア州の砂漠で開催されるアメリカを代表する音楽フェス。

※3)クレイグズリスト)アメリカで人気のローカル情報を交換するためのコミュニティサイト。

※4)グラストンベリー)イギリスで開催され、40年以上の歴史がある世界最大級の音楽フェス。

※5)ボナルー:アメリカテネシー州で開催されるアメリカを代表する音楽フェス。

※6)レイルロードリヴァイバルツアー:マムフォード&サンズ、エドワード・シャープ&ザ・マグネティック・ゼロズ、オールド・クロウ・メディスン・ショウの3バンドが、2011年に列車でアメリカを横断しながら行ったツアー。

※7)グラミー賞:アメリカのレコード芸術アカデミーから優秀なレコードに与えられる賞。毎年豪華な授賞式が行われる。

※8)エドワードシャープ&ザマグネティックゼロズ:アレックス・エバートにより、カリフォルニアで結成された総勢11名のバンド。

※9)イービス一家:グラストンベリーはマイケル・イービスとその家族によって運営されている。

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