最近「梅毒」にかかる人が増えているそうです。ここ5年で患者数は5倍ということで急増と言って良いでしょう。

「梅毒」といえばセックスで感染る病気(いわゆる性病)ということは皆さまご存知と思いますが、それ以上の話を知っている方はレアだと思います。今回は歴史の話も絡めつつ梅毒についてご紹介いたします。

意欲に燃える(1492)コロンブス

梅毒は性行為感染症の1つですがその歴史は浅く15世紀末、突然歴史上に登場します。

幾つかの起源説があります。最有力説としては、梅毒は新世界の風土病であったが、コロンブス率いる探検隊がアメリカを発見した際、現地女性とラブラブしたためヨーロッパに梅毒が持ち帰られそこから世界に広まったというものです。

コロンブス帰国から梅毒発生までの期間がやや短いという難点がありますが、コロンブス以前の人骨には梅毒の痕跡が全くないことが有力な証拠となっています。

日本史への初登場は1512年、京都で梅毒が大流行したとの記録があります。コロンブスのアメリカ発見からわずか20年です。

進行するとヤバいけど抗生物質が良く効きます

梅毒の原因はスピロヘータの一種である『梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum) 』によっておこります。野口英世も研究したことのある細菌です。

梅毒の潜伏期間は約1週間〜2ヶ月、臨床経過は4期に分かれます。そうそう、梅毒の名前の由来ですが、梅毒の皮膚病変がヤマモモ(楊梅)に似ていたからだそうですよ。

以下に臨床経過を載せます。


第1期

梅毒に感染するとまず感染部位にコリコリとしたしこりができ、しばらくすると膿みます(硬性下疳)。次に腿の付け根にあるリンパ節が腫れます(横痃)。これらの症状に痛みはなく、放っておいても2〜3週間で消失します。男はこれができて遊び人として一人前という風潮があったそうです。


第2期

感染後3ヶ月が過ぎると、梅毒トレポネーマは全身に広がっていきます。全身のリンパ節が腫れたり、顔や身体にバラ疹と呼ばれる発疹が現れます。陰部や肛門部に丘疹が出来たり、部分的な脱毛をおこすこともあります。この脱毛は鷹の羽が生え変わる時期に例えて「鳥屋につく」と呼ばれました。梅毒は2期が消失した後、数年は症状が無くなります。また梅毒にかかった遊女は妊娠しにくくなるため「遊女は鳥屋について一人前」と重宝がられました。嫌な話ですね。

1期と2期は感染力の強い梅毒ですがそれから暫くはなりを潜め、感染力もなくなります。人によってはこの潜伏期間が数十年に及ぶこともありました。自然治癒もなかったわけではないようです。


第3期

梅毒が3期になるとゴム腫と呼ばれる弾力性がある皮膚病変が現れます。こうなると容貌が崩れ、遊女としてはお終いで吉原を追い出されます。夜鷹の中には第3期の人もそれなりにいたようです。だから手拭いで顔をかくし薄暗い夜にしか商売しないんですが。ゴム腫で鼻が欠落することもあり悲惨だったようです。


第4期

梅毒感染から10年以上の年数を経て4期になると、梅毒は様々な重篤症状を呈します。骨や血管がやられる場合もありました。未治療の梅毒のうち5%は神経梅毒となります。ハッキリいって悲惨です。脊髄が侵され麻痺をきたす場合もありました。まぁ4期になると廃人です。最後は死亡してしまいます。


ちなみに抗生物質がよく効くため現代の日本では3期以降の梅毒をみることは殆どありません。

治療と予防

まずは治療から。梅毒には薬がよ〜く効きます。昔は根本的な治療法がかなった梅毒ですが、1928年に画期的な治療薬が開発されました。それは『ペニシリン』です。

ペニシリンは青カビから抽出された細菌の発育を抑える抗生物質で、様々な感染症に効果がありますが梅毒はホント著効します。幸いなことにまだペニシリン耐性の梅毒はありません。梅毒に感染しているかどうかは血液検査で簡単に分かりますので心配な方は調べてみて下さい。特にこれから妊娠を希望される方、梅毒はお腹の赤ちゃんに影響しますのでキチンと治してから妊娠して下さいね。
  
次に予防のお話。性病予防の定番といえば『コンドーム』ですが、梅毒はコンドームのみでは防ぎきれません。理由は性器以外の病変からも接触で感染るからです。もちろんリスクは下げますけどね!

1番良いのは特定の信頼できる相手としかセックスをしないことです。まあ、ここは色々事情があると思いますが、コンドームで防げない病気があることは覚えておいて下さいね。

あの戦国武将も梅毒だった?

虎退治で有名な加藤清正、豊臣政権で五奉行をつ止めた浅野幸長、大河ドラマにもなった黒田官兵衛、徳川家康の次男結城秀康らには梅毒だったという説があります。結城秀康には梅毒で欠けた鼻を膏薬を貼って隠したため、父の家康から「武士が女々しいことすんな!隠さんでよいわ!」と怒られた話が残っております。

梅毒と戦国武将の詳しいお話はSPP出版より発売の『戦国診察室』に載っております。

上にあげた4人は梅毒が死因と考えられますが、21世紀梅毒は治ります!心配な人はお医者さんに相談だ〜。

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歴女+女医で歴女医です。
専門は内分泌・代謝内科〜。糖尿病専門医でございます。

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