記事提供:LITALICO 発達ナビ

障害児でも身体はどんどん大きくなります。でも、頭の中は永遠の幼児だったりします。そんな見た目と中身のアンバランスを親である私は「可愛い」とまで思ってしまい「まあ、いいか!」としてしまいます。

けれども事情を知らない周囲の人はそうもいきません。例えば女湯。今回は、障害のある子どもが大きくなったとき、公衆浴場でどうすれば良いかについて考えていきます。

男児をいつまで女風呂に連れて行けるのだろう

こんにちは。『〈マンガとQ&Aで楽しくわかる〉1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』の著者、立石美津子です。

公衆浴場に息子を連れて行くとき、何歳まで一緒に女風呂に入れるか…母親にとっては悩むところですよね。この夏休み、お子さんを連れて旅行に行ったご家族も多いのではないでしょうか。そんな中、先月ネット上のある投稿が話題になりました。

夏休みに温泉に行ってきた。 旅館の料理はとても美味しくて、 観光地も想像以上に楽しくて満足な旅行だった。しかし、ひとつ不満が残っている。旅館の大浴場(女湯)に男児が入ってきたことだ。

男児といっても小さな子供ではなく、声変わりの済んだ小学校高学年らしき少年だった。母親らしき女性と2人で入ってきたのだが、小学生なんてひとりで風呂に入れるだろうに、何故、他の女性客もいる女湯に連れてくるんだ。私は入湯してからまだ5分ほどだったが、 気持ち悪いのですぐにあがってしまった。

本当は母親に非常識ではないかと声をかけたかったのだが、 家族水入らずの旅行に水を差すような真似はできなかった。小さな子供なら微笑ましく見ていられるが、 小学校高学年男児を受け入れることはできない。

出典 http://anond.hatelabo.jp

はてな匿名ダイアリー, 2016/08/15, 【追記】女湯に小学生男児は入ってこないでほしいということ。

小学校高学年らしき少年と母親が一緒に女湯に入ってきたことに対する違和感を表明した匿名ブログです。このブログに対しては賛否両論さまざまなコメントが集まり、中には、「子どもが障害児やトランスジェンダーかもしれないじゃないか」という反論もありました。

一方で、ブログを書いた方が追記した「事情があるなら貸し切り風呂を使ってほしい」、「父親と一緒に入れば良い」という意見も理解できます。

どちらが正しいとは簡単に言い切れませんが、私にとっても他人事ではない話題だったため、興味深く読みました。なぜなら私にも知的障害のある高校生の息子がおり、夫のいないシングルマザーであるからです。

今回の記事では、そんな息子と一緒に温泉旅行に行った際の工夫を紹介しながら、障害児が社会で生きていくために出来ることを考えていきたいと思います。

見た目は大人、頭脳は子ども?障害のある子を持つ母のジレンマ

男児を女湯に同行していい年齢制限については、全国一律の基準がありません。考え方はばらばらで、公衆浴場条例によって自治体ごとに年齢制限を設けています。

たとえば、北海道だと12歳までなら母親と男児が女風呂に入ることを許されます。ですが、京都に行けば7歳が上限年齢なので、ダメだと言われるのです。

地域ごとの基準が違う上に、人によって子どもの見た目に対する印象にはギャップがあるのが難しいところ。

温泉でも年齢を証明するものを提示するわけではありませんから、何となく見た目が大きな子どもは、各家庭の自己判断で「一緒に入る・入らない」を決めているのが実態だと思います。

ここに、周囲の人が感じる印象と、親の思いのズレが生じやすく、投稿のようなトラブルが起こります。

障害児のいる家庭の場合も同様で、家族は「可愛い幼子」と思ってはいても、世間から見たら立派な男性に見える、という事態は当然起こります。

特にダウン症児など違い、パッと見でわからない自閉症児は“健常児”と思われます。障害者手帳を見せて「ママと一緒に入ってもいいですよ」なんて配慮も特にありません。

私の息子も先日、東大病院で受けた検査では「精神年齢5歳8ヶ月」の結果でした。頭の中はまだ幼児ですが、もう高校生なので周囲から見れば身体は立派な男性です。

かといって、夫がいない身としては、誰かに息子を男風呂に連れて行ってもらうこともできません。こうして我が家は、息子が小学校4年生になる頃から、家族旅行で一緒に大浴場に連れて行けなくなってしまいました。

息子の「一人男湯デビュー」に向けて、特訓開始!

すっかり大きくなった息子とも一緒に、温泉旅行を満喫するにはどうしたらいいか。考えた私は、息子の「一人男湯デビュー」に向けて練習を行うことにしました。

家族風呂などの貸し切り風呂がある温泉旅館も最近は増えてきていますが、お盆休みやお正月休みは予約が埋まってしまい、家族旅行の時に都合よく貸切風呂が使えるとは限りません。

それに、大浴場のほうが広々していて気分がいいです。せっかくの旅行、息子にも大浴場でゆったり温泉気分を味わわせたかったのです。

そこで、放課後ディサービスで普段お世話になっているスタッフにお願いして、近所の銭湯で次のルールを息子に教えてもらいました。

・走らない
・泳がない
・潜らない
・タオルを浮かべない
・身体を洗ってから浴槽に入る

何度か通ううちに息子もだんだんとルールを理解し、守れるようになっていきました。

いよいよ夏の家族旅行、一人で男湯に向かった息子の成果はいかに

事前に近所の銭湯で予行練習もして準備万端!家族旅行で「浴場に一人で行く」ミッション決行の日となりました。事前練習はしたものの、

「中でパニックを起こしたらどうしよう…」
「奇声を出したらどうしよう…」
「泳いだらどうしよう…」

などと、あれこれ心配になってきました。かといって、愛の手帳や愛のワッペンを裸の身体に付けることは出来ません。そこで、もしものトラブルに備えて、こんなものを作って息子に持たせることに。

障害があることを説明するためのネックストラップです。文房具コーナーの名札コーナーに売っている名札紐に、別で買った白い札を付けて作りました。誰かが引っ張ると紐が外れる安全な構造にもなっています。

もし、何かあっても「親切な見知らぬおじさんが助けてくれる」と願って、息子を男湯に送り出しました。

結果は……無事成功!

トラブルもなく、息子は30分くらいしてから無事部屋に帰ってきました。こうして息子は、温泉旅館でも一人で男湯に行けるようになりました。

障害者が生きていく上で、本人が出来ること、社会が出来ること

「障害者差別解消法」も施行されましたが、まだまだ日常生活の中では、障害があると実質的にサービスの利用が制限される場面は多々あります。

周りに迷惑をかけることを恐れて、レストランでの食事や飛行機・新幹線の利用を諦めている障害者の家族はたくさんいるのが現状です。温泉宿もそれと同じだと思うのです。

とはいえ、「障害者だから許してください」と胡座(あぐら)をかいてしまい、堂々と女風呂に大きな子どもを連れて行っては、周りの人に不快な思いをさせてしまいます。ですから、障害者とその家族の側にも創意工夫が必要だと思います。

かといって、障害が重いとルールの理解も難しく、いくら訓練しても出来るようにならないケースもありますし、子ども一人でお風呂に入ることは出来ないという問題は残るでしょう。そこで解決法を考えてみました!

温泉旅館でペット同伴可能など、差別化を図る取り組みをしている経営者もいますが…是非、「シングルマザー+障害児で父親に頼めない人」のために、男の子と一緒に男湯に入ってくれるヘルパー的な男性スタッフを置いてほしいと思います。

そうすれば、もっと温泉を楽しめる人が増えると思うのです。(シングルファザー+女児でも同じニーズがありそうですね)見た目と実年齢のアンバランスのある人たちが社会の中で生活していくときにぶち当たる様々な困難。

温泉に限らず、当事者と家族の側で出来ること、社会の側で出来ること、どちらも考えていくことが大切です。皆さんはどんな苦労をしていますか?そして、この提案をどう思いますか?

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