待機児童対策のニュースを見ない日はない、というほど、社会問題化している待機児童問題。今小さいお子さんがいるママにとっては、他人事ではない死活問題なのではないでしょうか?

待機児童の定義は各都道府県で異なりますが、全国で23500人、一番多い東京都は2016年4月時点で8632人ほどいるとされています。

筆者は保育士として働いていた経験上、このニュースに無関心ではいられません。また、幼い子どもがいるので、ママの立場からも気になるもの。

保育所について周りのママ友の話を聞くと、とにかくどこも定員オーバー。特に、育児休暇が終わる1歳児クラスは倍率が高いのです。

一体どうしたらいいのか…。同じ悩みを持つママは多いと思います。

そこで、主に東京都の待機児童対策について、私見を交えつつお話ししたいと思います。

東京都の保育所の種類

保育所には大きく分けて認可保育所、認証保育所、無認可(認可外)保育所の3つの種類があります。

認可保育所は、国の設置基準を満たしている園。公立保育所も含まれます。

認証保育所は、東京都独自の設置基準を満たしている園。

無認可保育所は、どちらも満たしておらず、国、都道府県から認可を受けていない園です。

他にも、子どもを預ける施設は色々ありますが、ここではこの保育所について絞ってお話しします。

待機児童対策の課題

東京都知事が代わり早1カ月。小池都知事は、待機児童対策に熱を注いているようです。

小池都知事が打ち出す待機児童対策の主な解決策として、

保育園受け入れ年齢、広さ制限などの規制を見直す。保育ママ・保育オバ・子供食堂などを活用して地域の育児支援態勢を促進する

出典 http://president.jp

保育園の規制緩和策を打ち出し、保育所を確保するためには、空き家などを利用した小規模保育所なども有効

出典 http://president.jp

としています。

はっきりいって、これまでとほとんど変わらない内容です。

要は、保育所の運営に民間企業が参入しやすいよう、保育所を設置する条件を緩め、それでも足りないので、子育てを経験しているママやおばさんや近所の人に子どもを見てもらうということです。

一見、致し方ないというか、働くママとしてはなんとしてでも保育所を増やして欲しいという思いが強いかもしれません。

でも、この政策、私は腑に落ちない…どころか、怒りさえ感じるのです。

そもそも、誰のための政策なのか?

その答えはもちろん、働く女性、ママですよね。ママたちが子どもを預けて働きやすい環境を整えることが、この政策の目的でもあります。

しかし、よく考えてみてください。保育所に預けられるのは誰ですか?

子ども、ですよね。

それなのに、保育所の設置基準の緩和や、小規模保育所の設置、ましてや、保育士の資格を持っていない人に子どもを預けることを許すという、この政策。

子どもの成長を第一に考えなければいけないはずなのに、一番ないがしろにされているのは子どもなのです。

保育所での事故が増えている

最近、保育所での子どもの死亡事故のニュースを目にした方も多いと思います。

ニュースを見るたび、胸が痛みます。

このような事故は、保育所の設置基準を満たしていない認可外の保育所で起こっていることがほとんどです。

内閣府から出ている「教育・保育施設等における事故報告集計」の公表及び事故防止対策について 」という資料からは、27年4月〜12月に起こった死亡事故14件のうち、9件は認可外保育施設で起こっていることがわかります。

内閣府子育て本部の資料より抜粋

死亡事故の件数

なぜ事故が起こるのか、それは設置基準を満たしていない保育所は、保育士が足りない、子どもを見る余裕がない、施設の環境が不十分である事などが原因です。また、職員の意識が低いこともあると思います。

私の周りの友人の話ですが

お昼寝を室内のベビーカーでさせて、そのまま寝かせてしまう
布団を敷かず、床にタオルを敷いて直に寝かせている

等という園の話を聞いたことがあります。

あくまでも事例ですが、子どものことを一番に考えてるとは、とても思える環境ではありません。

もちろん、すべての認可外保育所がそんな訳ではありません。ちゃんと運営しているところもあるでしょう。

しかし、保育所の設置基準の緩和は、このような認可外の保育施設に1歩近づき、子どもの過ごす環境を悪化させることにつながります。

なぜなら、これまでは基準を満たしていなかったような保育所が、基準を満たすことになるかもしれないからです。

保育所と幼稚園の比較

そもそも、保育所というのは元々、幼稚園と比べると設置基準が緩やかです。

まず、幼稚園は文部科学省、保育所は厚生労働省の管轄にあり、今は両方の性質を備えた子ども園という施設もあります。

ですので、設置基準を定める法律も異なります。

その辺の細かい話は割愛させていただきますが、例えば、幼稚園では園庭を必ず作らなければなりませんが、保育所では近くの公園などで代替できる、ということがあります。

必要な面積の計算方法も異なるので一概に言えませんが、保育所に園庭を作るとしても、最低基準は幼稚園より狭いのです。

正直、園庭が狭いと園児は全員園庭に出られません。ましてや、新年度の初めなんかは特に、公園に出て行くことさえ大変なこともあります。

また、園舎の面積についても、幼稚園は1学級35名までで、1学級の場合の園舎の面積は180m2、つまり一人当たり約5.14m2なのに対し、保育所は保育室(遊戯室含む)の面積が一人当たり1.98m2と、狭いのです。(幼稚園は園舎の面積なのに対し、保育所は保育室の面積なので、比較が難しいのですが)

保育所はただ子どもを預かっているだけ?

また、色々な方に話を聞いていて思うのですが、皆さん、幼稚園=教育、保育所=託児のイメージがあるようで、保育所はただ子どもを預かっている、遊んでいるだけ、と思っている方が多いように見受けられます。

しかし、現在は保育所保育指針が改定され、保育所も教育施設であると言えます。

実際、私は現場で働いていて、保育士がどれだけ子どもの発達を見据え、それを促す為の保育をしているかという質の高さを感じました。保育士たちは、もっと自信を持って声をあげてもいいと思います。

しかし、質の低い保育をしている園があることも事実です。

保育所の設置基準を緩やかにすることは、保育の質の低下につながる

実際に私が働いていた園では、待機児童対策の為、定員よりも多く子どもを受け入れなければいけないことがありました。

どんなに質の高い現場であっても、子どもの人数が増えるのに、施設の面積が広くなる訳ではない、保育士が増えるわけではない、となると、子どもに目が行き届きにくくなり、狭い環境の中で子どもたちは過ごさなければいけなくなります。

それは、決して子どもたちにとって良いことではありません。

また、保育所の運営に企業の参入が増えるということは、営利目的の園が増えるということです。保育というサービスが売られるわけです。

しかし、私は保育はサービスという営利目的であってはならないと思います。

ママにとっては自分の身より大事な我が子。

保育所は、子どもの命を預かるのです。これは決して大げさな言い方ではありません。先ほどお伝えしたように、事故だって起こり得るのです。

保育士を増やすということ

また、もう一つ危惧していることがあります。
 
こうして保育所を増やすということは、もちろん保育士も多数必要になります。でも実際に経験を積んだ保育士がなかなか足りない。

そこで注目されているのは「潜在保育士」です。

保育士の資格を持っているにも関わらず、現場で働いていない方がたくさんいるのです。その方たちを、待機児童対策の救世主として、現場で働いてもらおうとしています。

私がここで心配なのは、この方たちが、どの程度現場で経験を積んでいるのか、ということです。

保育士はただ子どもと遊んでいるわけではなく、その発達を促すためのプロなのです。いくら資格を持っているとはいえ、研修や現場での経験なく、急に現場で働くことになる、ということは、子どもをただ預かることになる危険性があります。

認可外保育所での事故が多いのも、このように保育士の経験が浅いことも一因していると思います。

しかも、新しい園ができるということは、そこで働く保育士も皆、一からスタートするということ。先輩から教えてもらう、研修を受ける、そんな経験がなかなかできない環境でしょう。   

もちろん、誰だって初めからプロとして働けるわけではありません。私も新人の頃は、右も左もわからない状態でした。

しかし、そこにはフォローしてくれる先輩、指導してくれる上司がおり、保育について学ぶことができました。自分ができなかったことは、先輩、上司が代わってくれました。

こうして、保育士としてのスキルを磨いていくのです。

育休ママたちは本当に復帰したいのか?

ここまで待機児童対策の危険性について述べてきました。

では、そんなこというけどどうしたらいいの?
ただ文句だけ言っても…。

と思われるかもしれません。

私が保育士として、そしてママになって思うことは

そもそも、ママたちは本当に復帰したいの?

ということです。

職場でのキャリアや、生活費の為に仕事に復帰したいのママももちろん多いと思います。でも、本当はもっと子どもと過ごしたいけど、

「育休が1年しか取れないから止むを得ず」
「お金がないから」
「今保育所に入れないと、次の年には倍率が高いから」

などなど、子どものことよりも職場や金銭面のことを考えて復帰するママたちも大勢いるのではないでしょうか。

育休をのばすことについて。

そこで、育休を2年に伸ばすという案が急浮上しています。

育児休業を2年に延長する案が急浮上し、月内にも政府内で議論が始まる。待機児童問題が深刻になっているなか、仕事と子育ての両立を一層しやすくする狙いだ。

出典 http://style.nikkei.com

この2年の間、育児休業給付金が出るのなら、喜んで育休を取るママも多いのではないでしょうか。

しかし、企業にとっては人材が減り、リスクが大きいのも事実です。

企業が変わる!

私は決して、女性の社会進出を遅らせたい訳でも、働くなと言ってる訳でもありません。

ましてや、3歳になるまでは母親が育てろ、等と3歳児神話を唱えてるわけでも決してありません。保育所に通うことは、子どもたちの成長につながると思います。

ただ、ママ自身の思いも大切にしてほしいと同時に、子どものことを一番に考えてほしいのです。

保育所が足りないからって大急ぎで作って詰め込み保育され、一方ママたちは忙しく働いてイライラして疲れて…

そんな環境の中で育った子どもたちが大人になったらどうなるんでしょうか?

私は、まず変わらなければいけないのは、企業だと思っています。そして、企業をとりまく制度です。

未だに育休、産休も満足に取らせてくれない企業も多いでしょう。復帰を早くしてほしいが為に報酬を出すという、苦肉の策を講じる企業もあります。

企業が必死なのはわかりますが、そんな状況で人材は育つでしょうか。社会は良くなるでしょうか。

どうしたら、育休を取りやすく、また、残された社員にシワ寄せがいかないようにできるでしょうか。

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出典 https://mobile.twitter.com

厚生労働省のツイートです

男性の育児休業

また、母乳が終わり母親でなくても子どもが安心して過ごせるようになれば、父親が育児休業を取ってもいいのです。

しかし、残念ながら日本の男性の育児休業取得率は大変低いもの。男は働くもの、という古い体質が、企業には根強くはびこっています。

厚生労働省の平成27年度「雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は2.65%であり、依然として低いレベルに留まっています。(参考)男性の育児休業取得率については、2020年(平成32年度)までに13%という政府目標が設定されています。

出典 http://ikumen-project.jp

おわりに

今回は、保育士の立場として、また復帰するママの立場として思うところを述べました。

保育所は確かに増やさなければいけませんが、それを急に推し進めることは、必ずどこかに大きなシワ寄せが行きます。

子どもの育つ環境のことを第一に考え、まずは根本的な問題を解決しないことには、いくら保育所が増えても、ママの悩みは尽きないでしょう。

まずは、企業の体質を変え、男女ともに育休を取りやすくすること、残った社員にシワ寄せがいかないよう、十分人材を確保すること、なにより、一人一人を大切にすること…そんな広い心で、家族を守ってほしいと思います。

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現在育休中の保育士です。
旦那は福岡に単身赴任中。東京で息子と二人暮らししてます。
心細いことはありますが、手作り玩具やお菓子などに時々精を出し、子育て奮闘中です。
また、和のことや、自然に優しいものが大好きです。
よろしくお願いします

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