ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナー。


『24時間テレビ』の裏番組として2016年8月28日に放送された『バリバラ』。「感動ポルノ」と呼ばれる手法への皮肉を交えた内容が話題となりました。長くテレビに携わり、フリーアナウンサーとして活躍する長谷川豊さんは『24時間テレビ』をどう見るのか。お話を伺ってきました。

出典Spotlight編集部

「24時間テレビが偽善だ」っていまさら何言ってるんでしょうね。偽善に決まってるじゃないですか。

チャリティ番組と言いながら、タレントにギャラを払って儲けてるテレビ局は世界中でも見当たりません。たとえばアメリカにオプラ・ウィンフリーという日本でいうところの黒柳徹子みたいな人がいます。彼女は1年に1度必ずチャリティ番組をやっていて、集まったお金の全額を寄付しています。チャリティはお金をもらってやるものではありません。

そんな批判にさらされていても、テレビ局が24時間テレビを放送し続けている理由は単純です。めちゃくちゃ儲かるから。1日で何十億という、尋常じゃない利益を出しています。

このように、チャリティを訴えながら利益を出すという行為が批判されるのは当然ですし、私もその気持はわかります。しかし、一方で批判しかしない人には思うところがあります。

「ネットの歪んだ正義感」という言い方をしているんですけど、大して社会的に認められていないのに、それっぽい正論を振りかざす人が今のネット上には多い。『24時間テレビ』を批判をしている人も本気で問題を解決しよう、そこに関わろうとは思っていない。正論っぽいコメントを書く暇があるなら、10円でもいいから募金したらいいですよ。

『24時間テレビ』という偽善は今の日本に必要

多くの批判が集まる24時間テレビ。では全く価値がないのかというと、今の日本においてはそうも思えないところがあります。

なぜか。

それは「チャリティ文化」という日本に全く根付いていない考え方を広める意義があるからです。

資本主義社会では、お金は集まるところに集まります。決して、集まらないところにいる人がダメな人間ということではない。お金が集まらないところにいる人も素晴らしい。一方、お金が集まるところにいる人も等しく素晴らしいんですよ。ただし今の日本はお金の集まり方にばらつきが出てしまう社会なんです。

公平な社会を実現するためには、たくさんお金を持っている人が自主的に放出していかなければなりません。それなのに日本人は手元にお金がたくさんあっても絶対に離さない。1億円持っている人が懸命に脱税するわけですよ。そんな恥ずかしいことをする人は、他の国にはなかなかいません。

この構図は健常者と障害者の間でもつくられています。今の日本はどうしても健常者の方にお金が集まりやすくなっています。そこで重要な役割を担うのが『24時間テレビ』です。

先に挙げたように、チャリティを訴えながら儲けていることは偽善であることに違いありません。しかし「身体に障害を持った人がいるんだ。その人に対して優しくない社会があるんだ。だからみんなで寄付をしよう」と、寄付の意識を呼びおこすという1点において『24時間テレビ』には圧倒的に素晴らしい意義があります。『24時間テレビ』という偽善は今の日本に必要なんです。

「感動ポルノ」への批判がある中で、障害者が24時間テレビに出演するのはなぜなのか

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ただし、「感動ポルノ」と呼ばれる演出の手法については考えなければなりません。障害者の子たちに何か苦労をさせて、お涙ちょうだいの映像をつくるのは海外では完全にアウトです。

アメリカで障害者がどのように扱われているか、ということは『glee』というミュージカルドラマを見るとわかります。このドラマは、メインキャストが大統領選挙でホワイトハウスに呼ばれるほどの社会現象を起こしました。

そのキャストのひとりがダウン症なんです。ダウン症の人がダウン症の役として出演しています。他の役からいじめられますし、平気で下ネタを言ったりもします。本当に普通の人間として対等に扱われているんですよね。

「感動ポルノ」を批判する声は年々強くなってきているので、その対象となる障害者の耳にも届いていることでしょう。『24時間テレビ』に出演する方も例外ではありません。

ただ、そんな批判を認識しているはずの彼らが、嫌がるどころか喜んで番組に出演しているのはなぜでしょうか。

障害者を蔑視していたり特殊な人間として捉えている方にとっては理解できないかもしれませんが、障害を持っているとはいえ、彼らは私たちと同じ普通の人間です。日テレの『24時間テレビ』から打診が来たらやっぱり出てみたいと思うんですよ。

私は取材で密着したのでわかりますが、彼らに長く接していると本当に普通の人間にしか思えなくなってきます。障害を持っているという自分の特徴を武器にしてテレビ出られるというのであれば出たいという人はかなり多いはずです。そういう願望を制作側は利用しているんです。

「感動ポルノ」は多くの人の寄付を集められる

ただ、テレビ関係者の立場としては、注目を集めるために「感動ポルノ」のような手法を使うのは理解できる部分もあります。

私は以前、UNICEFのチャリティの取材でカンボジアに行ったことがあります。そこでゴミ山で働く11歳のT君という少年と21日間寝食を共にしました。

カンボジアで働く貧しい子供たちはたくさんいる中で、なぜそのT君を選んだのか。簡単です。彼はダントツでジャニーズ顔だったんですよ。チャリティで募金を集めて子供たちに教育を受けさせるという目的でカンボジアに来ているので、スタッフとはその目的を達成するためなら心を鬼にしようと話していました。理想を言っていてもしょうがない。1番ハンサムな子を選ぼうということでT君が選ばれました。

かわいいT君の体は細く、明らかに栄養失調。きれいな目を輝かせて「いつか字を覚えて先生になるんだ」と言う顔にハエがブーンと飛んでくる絵はやはり多くの人の注目を集められるんです。

この取材の結果、10年ほど続いている『FNSチャリティキャンペーン』というチャリティ番組でダントツの寄付金を集めました。寄付するおばちゃんの数が違いすぎるんですよね。

「感動ポルノ」と呼ばれる手法は近年、多くの方の嫌悪感を生んでいます。しかし、24時間テレビや感動ポルノが、現在の日本に寄付の文化を根付かせることに大きく貢献しているのは間違いないのかなと思います。

(長谷川豊)

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