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「カサカサしてかゆそうな病気」世間一般でのアトピー性皮膚炎(以下、アトピー)への認識は、その程度かもしれない。基本的にアトピーは死なない病気なので、軽視されがち。

しかし、『アトピーが治った。』(横井謙太郎:著、清水良輔:監修/自由国民社)に出てくる7人のうち3人が死を考えたことがあるという。重症化したアトピーは、それほど精神を追い詰めるのだ。それはなぜなのか。

「奇妙な」というギリシャ語が由来であるアトピーは、原因がはっきりと解明されていない。そのために、「本当に今の治療法でいいのか。完治する日は来るのだろうか。」といった治療法や経過に対する不安がつきまとう。

特にアトピーの標準治療であるステロイドを巡っては賛否両論があり、患者の心は揺れ動いている。脱ステして、さまざまな民間療法に走る人も多い。

本書に出てくる人たちも、温泉療法、アロエ、びわ焼酎、オーガニック野菜、コーヒー浣腸、お風呂場でヨーグルトを全身に塗る、脱風呂、手かざし(宗教)…。と、まさにワラにもすがる思いであらゆる方法を試している。

現代社会ではネットでも情報が氾濫していて、まずます患者を混乱に追い込むのだろう。
もうひとつアトピーで問題となるのが、かゆみや症状の悪化によりQOL(生活の質)が低下してしまうということ。

掻きすぎて1枚目の皮膚がない状態となり、体の表面がぜんぶ汁状になりました。膝も曲げられずに立てないので、生活が寝たきりになります。トイレに行くのも這っていき、着替えには3時間ぐらいかかりました。

服が身体に貼りついているので、剥がすと痛くて血まみれになるからです。

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ここまでいくと、日常生活すらままならない。たかがアトピーなどと侮れないのだ。本書に出てくる7人のエピソードは、どれも壮絶なものばかりで驚きを隠せない。

それぞれ色々な方法を試し、良くなったり悪くなったりを繰り返すが、過度なストレスがかかった時に著しく悪化する傾向がみられる。7人は、どん底からいかにしてアトピーを乗り越えたのか。

本書を読み進めていくうちに、ある共通点が浮かび上がってくるのに気がつくだろう。それは、自身もアトピーを克服した著者の言葉に集約されている。

百人百様と方法はさまざまですが、自分の信じた道を歩くこと、そのモチベーションを自分のなかにしっかり持つこと。つまり、治るんだと信じる気持ちと治すんだという強い意志が合致したときに、アトピーは一気に良くなると思います。

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つまり、身体と精神は密接に関わり合っていて、特にアトピー治療においては本人のモチベーションがカギとなるのだ。本書では、それぞれの体験談に皮膚科医のコメントも寄せられている。

ステロイド一辺倒の医師が多い中、本書の医師はステロイドを否定も肯定もしないニュートラルな考えを持っている。患者の不安に寄り添い、ステロイドの使用に迷いがある場合は決断できるまで待つ。

そして、患者が脱ステを希望した場合は、本気で治す覚悟を確認したうえで、とことんつき合ってくれるという。このように患者の意志を尊重して、応援してくれる専門家がそばにいてくれたら、どんなにか心強いだろう。

本書には、アトピーっ子の母親も出てくる。筆者にもアトピーの子供がいるので、大変共感しながら読んだ。今の世の中、「アトピーが自然に良くなるのを待ちたい」そう思っても、貫き通すのは容易でない。

「かわいそう」という世間のまなざし、「こんなになるまで放っておいて」という医師の非難に心が折れてしまいそうになるのだ。

著者が立ち上げた「NPO法人アトピーを良くしたい」では、定期的にアトピーサロンを開き、アトピー完治に向けてのモチベーションを高め合っている。

また、今後はアトピーカウンセラーを認定して育てていくことも予定しているらしい。アトピー患者がどんな治療法を選ぼうとも、不安を一人で抱え込み孤独に陥ることのない、そんな世の中になることを切に願う。

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