リオ・オリンピックも無事閉会し、日本は過去最多となる41個のメダルを獲得しました。

しかし、私たちに最も感動を与えてくれたのは、堂々たる「スポーツマンシップ」を発揮した日本人選手の姿だったのではないでしょうか。

無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』では今大会の名場面の数々を振り返ると共に、表彰式で何度も上がった「日の丸」が現す意味についても記しています。

リオで見えた嘘と真心

リオ・オリンピックが終わった。日本選手団の獲得メダル数は金12、銀8、銅21の計41個と、過去最多となった。ロンドンでは金7個、合計38個だったので、金で大幅増、合計でも若干増という結果となった。

メダル数を国別で見ると、ロシア、中国、韓国が大きく減った。ロシアはソチ五輪の組織的ドーピング(薬物)問題で多くの選手が出場禁止となり、ロンドンでは金24個、合計81個だったのが、今回は金19個、合計56個と約7割に減少した。

同様に惨敗したのが中国で、ロンドンでは金38個、合計88個で国別では2位だったのが、今回は金26個、合計70個で、英国に抜かれて3位に転落。韓国は前回、金13個、合計28個で5位だったが、今回は金9個、合計21個、8位まで落ちた

中国はドーピングでの出場禁止処分こそ受けなかったが、かつては組織ドーピングの内部告発があった。今回は、検査がはるかに厳しくなっており、その影響があったのだろう。

韓国はロンドン五輪では、サッカー、柔道、フェンシングなど、「韓国がらみのおかしな判定」が起きていた。今回は「誤審防止」との名目で、判定に異議を唱えたら、ビデオ判定するシステムが導入された。今回の柔道では、16年振りに金メダルゼロに終わった。

ドーピングや審判買収による嘘が消えて、選手達のスポーツにかけた真心が輝きだした大会だった。

「相手がいますから。しっかりと冷静に礼をして降りようと」

まずは、美しい柔道で金メダルをとったのが、柔道男子73kg級の大野将平選手

ロンドンでは日本男子柔道は史上初の金メダル無しで終わったが、今回も男子90kg級、女子48kg級、男子66kg級、女子52kg級といずれも銅で終わり、重苦しいスタートとなった。

それを一挙に吹き払ったのが、大野選手だった。準決勝を除くすべての対戦に一本勝ちを収めた。決勝戦の相手は、アゼルバイジャンの欧州王者ルスタフ・オルジョフ。

「一発のある選手」と警戒しながらも、接近戦で勝負に出た。得意の内股で1分44秒に技ありを奪った。

ポイントをリードした後に、大野の消極的な姿勢に指導が入ると、「逃げるより、攻め抜いて投げてやろう」と、再び攻めて、3分15秒、鮮やかな小内刈りで一本をとった。

日本柔道界に2大会振りの金メダルをもたらした勝利だったが、大野選手は笑顔もなく、厳しい顔をしたまま、深々と礼をして、オルジョフと握手で健闘を讃えあった。

ガッツポーズも、喜びの表情もない理由として、大野選手は「相手がいますから。しっかりと冷静に礼をして降りようと」と語った。

勝負には勝ちもあれば、負けもある。敗者への思いやりを込めて、礼に始まり、礼に終わる武道の精神。試合後、大野は「柔道の素晴らしさ、美しさ、強さを伝えられたと思う」と語った。

だが、井上監督から「プレッシャーの中、よく取ってくれた」と声をかけられると、張り詰めたものから解放されるかのように涙があふれたという。

柔道が世界に広まって「ジュードー」となり、ポイントを奪ったら、いかに逃げ切るか、というせこい勝負になった時期もあったが、礼に始まり、礼で終わる「美しく、強い柔道」という理想を追い求める大野の真心が爽やかだった。

「それは無駄な質問だ」

真心の籠もったライバル関係を見せたのが、個人総合で金メダルをとった内田航平選手と銀メダルをとったウクライナのオレグ・ベルニャエフ選手

内村選手は5種目までベルニャエフ選手にリードを許しながら、得意の鉄棒で最後に大逆転した。オリンピック2連覇で、世界選手権も含めると8年連続で個人総合の王者の座を守った。

表彰後のインタビューで、ある海外の記者から「あなたは審判に好かれているんじゃないですか?」という質問が飛んだ。失礼な質問にも内村選手は淡々と「まったくそんなことは思ってない。

みなさん公平にジャッジをしてもらっている」と答えたが、横にいたベルニャエフ選手が怒った。

審判も個人のフィーリングは持っているだろうが、スコアに対してはフェアで神聖なもの。航平さんはキャリアの中でいつも高い得点をとっている。それは無駄な質問だ。

航平さんを一生懸命追っているが簡単じゃない。この伝説の人間と一緒に競い合えていることが嬉しい。世界で1番クールな人間だよ。

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銅メダルの英国ウィットロック選手も、「大変素晴らしい。彼は皆のお手本です。今日の最後の鉄棒は言葉がない。クレイジーとしかいえない」と声をそろえ、内村選手は気恥ずかしそうにはにかんでいた。

「誰にもできないところまでもっともっとやってほしい」

ベルニャエフ選手の祖国ウクライナは争乱状態が続いており、練習施設も貧しく、国からの給料も月100ドルほどしかない。毎週試合に出て、活動費を自分で稼がなければならない状態だという。

その実力を見込んで、他国から、国籍を変えて出場しないか、という好条件の申し出がなされたが、ベルニャエフ選手は家族や友人のいるウクライナから離れることを拒否している。内村選手に関しては、過去にこんな発言をしている。

内村は本当に神話的な選手。でも、僕の目標はシンプルだ。彼と戦うことさ。

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こういう選手が、内村選手に対する質問に怒ったのも、当然だろう。質問が内村選手にとって失礼というだけでなく、自分が目標としてきた内村選手を貶めるような質問は、自分の生き方に対する侮辱でもある、と受け止めたのではないか?

内村選手も、ベルニャエフに関して、次のように語っている。

オレグ選手がすごいことをやってきたので、本当にぎりぎりで勝ったという感じなので、次はないと。…それぐらいの選手になったし、次からの世界の体操は彼に引っ張っていってほしいなという感じもあります。

オレグ選手には、全種目を高難度でやるという僕には信じられないことをやっているので、誰にもできないところまでもっともっとやってほしいとも思っています。

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誰にもできないところまでもっともっとやってほしい」という発言からは、体操という道を共に究めようとする同行者と考えているように聞こえる。

記憶に残る真心のドラマ

金メダルをとれなかった事が、ニュースになった場面もあった。誰もが金メダル間違い無しと信じていた女子レスリング53kg級の吉田沙保里選手が決勝戦で敗退して、銀メダルに終わり、五輪4連覇を逃した時だった。

吉田選手を破ったのは、米国のヘレン・マルーリス選手。終始、闘志をむき出しにして立ち向かい、1点先取されたが、その後4点取って、逆転勝ちを収めた。敗戦が決まった途端、吉田はマットに泣き伏したが、マルーリス選手も同様に泣き崩れた。

マルーリス選手は12歳の時に吉田選手を観て憧れ、両親の反対を押し切って、吉田選手に勝つことを目標にレスリングをやってきたという。マルーリス選手は、表彰台で米国初の金メダルを受けとった際も「これをずっと夢に見てきた」と顔を覆って大粒の涙を流した。

そして、試合後には「彼女と戦う準備をずっと続けてきた。彼女は私のヒーロー。彼女は最もたたえられているレスラーで、彼女と試合をできたのは本当に名誉なことだった」と語った。

吉田選手の4連覇はならなかったが、事前の予想通りすんなり4連破を記録するよりも、記憶に残る真心のドラマが生まれたのではないだろうか。

「そんなことないですよ。素晴らしい戦いでした」

試合後に、吉田選手が号泣しながら受けたインタビューがまた、感動的だった。

─ 素晴らしい試合でした。今の気持ちを振り返ってください

(吉田選手は号泣しながら)「たくさんの方に応援していただいたのに、銀メダルに終わってしまって申し訳ない」

─ そんなことないですよ。素晴らしい戦いでした

「日本選手の主将として金メダルを獲らなければならないと思って、ごめんなさい」

─決勝戦、非常に厳しい戦いでしたが、あえて敗因をあげるとしたら?

「やっぱり自分の気持ちが、最後は勝てるだろうと思って、とりかえしのつかないことになっていまって…」

─そんなことは誰も思ってないと思います

(中略)

「最後は自分の力が出し切れなくて…」

─日本中では拍手を送ってくれていると思います。素晴らしい銀メダルでした。ありがとうございました。

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アナウンサーはNHKの三瓶宏志氏。応援してくれる人々に申し訳ないという吉田選手の真心と、その奮闘振りに感謝するアナウンサーの真心が響き合ったインタビューだった。

「マオ(浅田)にも感謝したい」

内山航平選手とオレグ・ベルニャエフ選手、吉田沙保里選手とヘレン・マルーリス選手の真心の籠もったライバル振りを見て、どうしても思い浮かんでくるのが、フィギュア・スケートの浅田真央選手とキム・ヨナ選手の関係だ。

浅田選手の高難度の演技につけられた点数が余りにも低いので海外メディアが「馬鹿げている」と怒り、会場がブーイングに覆われたり、逆にキム・ヨナが転倒しても最高得点を出して、解説者も「(得点が)ここまでどうして出てしまったのか、わからないと正直感じた」 と語った場面まであった。

浅田真央選手が高難度の演技に真摯に取り組む姿は、世界の選手に感銘を与えていた。

女子でトリプルアクセルに2回転をつけて跳ぶことがどれだけ大変か。それでも勝てないなんて…。

マオ(浅田)にも感謝したい。果敢にトリプルアクセルに挑んだ姿を見て、私は悲しいことなんか忘れて正直、燃えたわ。ありがとう。(ジョアニー・ロシェット、カナダ、10年バンクーバー銅メダリスト)

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なんて言ったらいいのかわからない。ジャッジはキムの何もかもに加点しまくっている。

真央のスケートには誠実さがある。素晴らしいことだよ。傲慢さがない。そこが好きなんだ。

浅田のスケートには静かな無垢さ(イノセンス)があって、そこが魅力的だと思う。作った見せ掛けの態度みたいなものがなくて、スケートそのものをするという感じ。(エルヴィス・ストイコ、カナダ、94年リレハンメル銀、98年長野銀)

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日の丸と真心

キム・ヨナの得点に関する疑惑と反感は、スケート選手の間では相当広まっていたようで、ソチ五輪の競技後のエキジビションではキム・ヨナ一人が仲間はずれにされたり、記者会見でもキム・ヨナがまだ話している内に他の選手が席を立ったりした。

メダルさえとれれば、何をしても良い、という姿勢が、自分たちの神聖なスポーツを汚している、という怒りが、広がっていたのだろう。

疑惑の採点などがなければ、浅田真央選手もフィギュア・スケートの究極を究める事に集中し、その過程で世界のライバルとも美しい争いを繰り広げられたはずだ。そう思うと、改めて、ドーピングや疑惑の判定で、スポーツの神聖さを汚してきた国々に対する怒りが込み上げてくる

今回は表彰式で日の丸が何度も上がった。日の丸の白は「神聖と純潔」、赤は「博愛と活力」を現すと言う。正々堂々とルールを守り、自らの競技の究極を究めようとする日本選手たちの真心を象徴した国旗ではないか。

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