ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナー。今回も興味深いお話を伺ってきました。

去る8月15日に、東京メトロ銀座線の青山一丁目駅で起きた、視覚障害の男性がホームに転落し、亡くなった事故。この一件で、改めてホームドアや、柱の位置、点字ブロックなどの設備に注目が集まりました。

そこで当事者の盲導犬ユーザーの方は、日々の生活をどのように過ごしているのか、何に困っているのかについてお話しを伺ってきました。

今回インタビューさせていただいたのは、神奈川県に住む須貝守男さん、62歳。30代半ばから目が見えにくくなり、40代から白杖を持って歩くようになりました。

2000年の秋から盲導犬と過ごすようになり、現在は2代目の盲導犬・クロスと共に生活をしています。

白杖で歩くことと盲導犬と歩くことの差

私は、長らく白杖(視覚障害の方が使っている、白い杖)のみを使って生活していました。

盲導犬と生活するようになってからは、歩くことが格段に楽になったんです。なぜかというと、白杖で歩く時は何か基準となるもの(点字ブロックや壁など)をつたって歩くのですが、どの場所にも必ずあるわけではないので、まっすぐ歩くことが困難だったからです。

それが盲導犬と一緒だと、障害物などは避けて歩いてくれるので、白杖では歩く気にすらならなかった自宅の付近の曲がりくねった道も、楽に歩くことができます。

また、気持ちの上でも楽になりました。白杖だけで歩いていた頃は、全神経を張り詰めて外出していましたが、盲導犬が来てくれてからはそこまで緊張せずに歩けるようになったんです。

もちろん、盲導犬と一緒だから気を抜いているわけではないのですが、気持ちに余裕ができたことは、大きな変化だと感じています。

初代の盲導犬・リンディと出会うまで

出典日本盲導犬協会提供

私は、目が見えにくくなった当初は、盲導犬と生活することは考えていませんでした。もともと犬は大好きだったのですが、盲導犬に対して「仕事を任されてかわいそう」というイメージを持っていたからです。

しかし、44歳の時に参加した日本盲導犬協会のイベントで、試しに盲導犬と歩いた時に考えが変わりました。私と一緒に歩いてくれた盲導犬が、とても楽しそうに感じられたからです。

翌年もう一度同じイベントに参加し、盲導犬と一緒に生活したいという気持ちが固まりました。その後、申請をして10か月ほどで初代の盲導犬・リンディとの生活が始まったのです。

クネクネ道を歩けるようになるまで

出典日本盲導犬協会提供

先ほども話しましたが、私の自宅の近くには曲がりくねった道があります。この道は、危険な運転をする車も多く、事故も起きていました。

当時、私の目は昼間なら少し見えている状態でしたが、夜になると街灯の光がかろうじて認識できる程度でした。だから、夜にリンディと歩くのは不安だったのです。

私とリンディの訓練を担当してくれていた方に、そのことを相談すると「(夜も一緒に歩いて)大丈夫という自信が持ててからでもいいのでは?」とアドバイスをもらいました。

それから昼間に何度もリンディと歩き、訓練を重ねたある日「この子となら大丈夫」という確信が持てたので、夜にリンディと歩いたところ、ちゃんと歩けたのです。

その日のことは、今でも嬉しい思い出として残っています。

駅は怖い場所

私は、盲導犬といろんな場所に出かけていますが、駅は一番緊張します。周囲の状況を把握するために、音を頼りにすることが少なくないのですが、駅ではそれが難しいからです。

特に地下は、音の反響が多いのでアナウンスの音量が大きくて、電車が来ていることに気づかない、または電車の音が大きくてアナウンスが聞こえないこともあります。

ですから地下鉄でも、それ以外の鉄道でも、ホームドアのない駅はどこであろうが危険なんです。そのため、駅員さんに案内をお願いすることが欠かせません。

目が見えていた時、視覚障者の人に声をかけたら…

出典日本盲導犬協会提供

私のように視覚障害の人にとって、声をかけていただくことはとても嬉しいことです。たとえ慣れている場所であっても、「どちらまで行かれますか?」と声をかけていただけると、本当にありがたいなと感じます。

なぜなら、声をかけていただくことで様々な情報をいただけますし、何よりも周りの方に見守っていただけているという安心感を感じられるからです。ですから、もしお急ぎでなければ、是非声をかけて欲しいと思います。とはいえ、声をかけていいものか迷われることもあるでしょう。

実は、私も目が見えていた頃に視覚障害の方に、声かけをしたことがあるのですが…その時「放っておいてくれ」と言われて悲しい気持ちになったことがありました。

この経験から、私は声かけをしてくださった方に対して、丁寧に対応するように心がけています。

法律が知られていないが故に、入店拒否も

出典日本盲導犬協会提供

時折、盲導犬ユーザーが、タクシーの乗車拒否をされた、お店で入店拒否をされたというニュースを耳にします。実は、私も拒否された経験があるのです。

盲導犬、聴導犬、介助犬といった補助犬は、一般的なペットとは違ってユーザーと同伴することが法律で認められているのですが、知らないがために拒否する人が少なくないという印象を私は持っています。

以前、同伴できることを知っているにも関わらず、拒否をされたこともありました。もし「盲導犬は乗車・入店できることになっているのですが」とお話ししても拒否をされた場合、その場は引き下がって翌日にしかるべき場所へ訴えることにしています。

なぜなら、お店であれば中には他のお客さんがいます。私は盲導犬と一緒に入店する権利を持っていますが、お店の方と言い争うことでその場にいるお客さんを不愉快にする権利はないからです。

もちろん、運転手さんや店員さんが動物アレルギーである場合などは、乗車や入店の権利を振りかざすつもりはありません。そこは臨機応変に対応しなければなりませんが、一般的なペットと違うということを知ってもらうには、地道にお話するしかないと感じています。

一番嫌なことは「かわいそう」と言われること

出典日本盲導犬協会提供

最後に、私が盲導犬と歩いていて一番嫌なことは、「(盲導犬が)かわいそう」と言われることです。盲導犬が手助けをしてくれることについて、皆さんは「仕事」と考えているかもしれません。

しかし、歩く時に私の左側を歩くこと、危ない時は止まることなどのルールは、私と盲導犬にとってはお互いの命を守るための「決まりごと」。

盲導犬が決まりごとを守り、私が指示を出すことで、お互いの安全を共同で守って生活しています。つまり、運命共同体です。

よく「犬に命を預けている」と言われることもあるのですが、私はそうは思っていません。人間が盲導犬の命を預かっているのです。

それくらい盲導犬ユーザーは、盲導犬のことを大切に考えていることを知ってほしいと思います。

<取材・文/横田由起>

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