「早く結婚しなさい」「早く子どもを産んだ方がいい」そんな外野の声を無視し続け、早30年近い年月が経とうとしている…。いや、結婚も出産もしたくないわけじゃない。でも、「仕事も家事も育児も全部やる」というのは無理だよね…と思ってしまうのだ。

そうなると必然的に誰かに助けてもらうことになる。特に育児なんて、ベビーカーのニュースを見ているだけで「将来あんな大変な思いをするの?」とネガティブに思うことだってある。でも、将来に備えて知識は持っておかねばと、常々関心は持っていた。

そんなある日、乳児院」という施設があると知ったのだ。子どもに関する施設といったら、私は保育園や幼稚園しか知らないのだが、おそらく赤ちゃんに関係する施設であろうことは字面から容易に想像できる。しかし、どんな施設かは全く想像がつかない。

そこで今回、Spotlight編集部のXは実際に乳児院を見学させてもらうことに。

保育園も併設されている二葉乳児院

今回取材に協力していただいたのは、新宿区にある二葉乳児院。こちらの乳児院には、保育園や育児支援サービスをしている施設も併設されていた。

さて、中に入ってみよう。

こんにちは!

素敵な笑顔で迎えてくれたのは、二葉乳児院の施設長・都留和光さん。病院のような施設をイメージしていたのだが、そんなイメージは入り口で崩壊する。

むしろ明るくて、自分も子どもになりたくなるくらいアットホームな雰囲気が流れていた。

乳児院ってどんなところ?

X:早速ですが、乳児院ってどんな施設なんですか?

都留:乳児院というのは、児童福祉法に基づいて作られた24時間対応の宿泊施設です。何らかの理由で親御さんとの生活が困難になってしまった、原則0歳から2歳までの子を預かるのですが、場合によっては6歳まで預かることもあります。

端的に言うと、赤ちゃんの命を救う場所なんです。

X:ここにいる子たちは、どういった理由で入所するケースが多いのでしょうか?

都留:虐待による入所が最も多いのですが、他にも親御さんの病気や出産などでの一時的な入所もあります。ですから、必ずしもネガティブな理由で入所しているとは限りません。

X:平均的に何歳くらいの子がどのくらいの期間、ここに滞在しているんですか?

都留:入所してくる赤ちゃんの平均月齢が3カ月、在所期間が平均すると1年3カ月になります。もちろん一時的に保護するケースもありますし、滞在している間も親御さんと面会があるので、赤ちゃんとの交流はあるんです。

乳児院は母親のケアも行っている

X:虐待による入所が多いことに驚いているんですが、どういったケアがされているかについて教えてください。

都留:基本的には、親御さんは自分で赤ちゃんを養育したいと考えています。だから、面会を続けていく中で「できること」を増やしていくのが大事なんです。

例えば、親子ルームというお部屋で赤ちゃんと1日過ごしてみる、赤ちゃんとひと晩過ごしてみるなどの体験をしてもらって、お家に帰ってから一緒に生活するイメージを持ってもらうようにしています。

X:親子ルームがどんなお部屋なのか見せてもらってもいいですか?

都留:どうぞ!ご案内しますね。

親子ルームの入り口。取材当日は利用している方がいませんでした。

一般家庭のように、台所とお茶の間、お風呂が付いていました。ここで、お家に帰ってからの生活をシミュレーションするのです。

おもちゃもたくさんありました。ちなみに、このお部屋では後述する里親さんの講習会も開かれているそうです。

乳児院にいる赤ちゃんのその後

X:赤ちゃんをただ入所させるのではなく、その後お家に帰ってから育児がしやすくなるようなケアをしっかりしているんですね。そういった意味では、入所してから家庭に帰る子は多いのでしょうか?

都留:東京都のみの話でいうと、58%くらいの子たちが家庭に帰っていき、25%が児童養護施設、15%が里親さんのところで生活するようになります。ただし、残念ながら家庭に帰っていく子の割合は減少傾向で、児童養護施設に措置変更される子が増えつつありますね。

家庭に帰る場合は、お子さんを保育園に通わせることが条件になることが多いのですが、待機児童の問題もありますので家庭支援専門相談員というソーシャルワーカーを中心に、地域や保育園と連携を取りながら育児のサポートをしているんです。

X:乳児院を退所した後も、手厚いケアがされるというのは心強いですね。ところで里親には、どうすればなれるんですか?

里親になるための条件

都留:里親になるには、主たる養育者の他に成人している方がもう一人同居していること、台所・居間以外に2部屋以上、10畳以上の広さの家に居住していることが条件で、その上で研修を受けていただくと里親の資格を得られるんです。

X:実際にはどんな方が里親になっていることが多いんですか?

都留:年齢でいうと大体平均して50代の里親さんが多いですね。子どもの成長を考えると、里親さんの平均年齢がもっと低くなっていくといいな、とは思います。子育てを始めると、子どもと一緒に走ったりすることも多くなるので。

X:ちょっと気になったんですが、里親さんが子どもを養育する場合はボランティアなんでしょうか?

都留:いえ、里親さんは委託費として国から月に72000円支給されているので、ボランティアではないんです。

でも、72000円でも厳しいと思います。実際に里親さんの家庭でも共働きが増えているので、保育園の費用がかかりますからね。ですから、里親さんとお子さんへの支援はもっと必要ではないかと感じているんです。

乳児院の施設を少しだけ見せてもらいました

壁の至るところには入所している子どもたちによる、絵や作品が飾られている。専門の先生が来て、作り方を教えてくれるそう。

作った作品は保管され、乳児院を出る時に親御さんに渡されることになっている。

この可愛らしい黒猫も子どもたちが作った作品。とても上手に作られている。

ここは子どもたちが食事を取りに来る場所。

子どもたちの目線で厨房の中が見られるように、ガラス窓が設置されている。

実際に覗いてみると、こんな風に見える。調理してくれているスタッフさんに、手を振ることもあるのではないだろうか。

一般家庭向けの育児支援サービスも!

X:そういえばこの乳児院には、他にもいろんな施設が併設されているようですが。

都留:そうなんです。育児支援のサービスや相談ができる取り組みをしているので、ご案内しますね。

乳児院の2階にあるのが「地域子育て支援センター二葉」

ここは、無料の利用登録をするだけで育児相談や、一時保育の利用、様々なプログラムにも参加することができます。新宿区以外にお住まいの方も利用できるのが嬉しいところ。

ここは一時保育のお部屋。取材当日も、子どもたちが元気に遊んでいました。

アンパンマンのキャラクターがいっぱいのお部屋。お迎えまで楽しく過ごしています。

こちらはショートステイのお部屋。親御さんの入院、出張、冠婚葬祭への出席などによる「お泊まり保育」をしています。

このサービスは、新宿区以外に4つの区と契約しているとのこと。こうしたお泊まり保育では、0歳から見てもらえる場所が少ない中、こちらでは0歳児からの利用が可能です。

※ショートステイに関しては、自治体によるサービスになります。

こんな取り組みもやっています

こちらはイベントのお知らせ。絵本の読み聞かせや、赤ちゃんのヘアカット、オイルマッサージなどの催し物が開催されています。

親御さんのリフレッシュにもなるのではないでしょうか。

そしてベビー服や子ども服も販売されています。1着50円と、とてもリーズナブルなので気軽に利用できそうです。

妊婦さんや育児中の親御さんのために、四谷地区で行なわれているイベントがマップでまとめられていました。

地域ぐるみで育児支援をする体制が、特に整っているように感じられます。

育児中のお母さんへメッセージ

育児は、一筋縄ではいかないもの。でも、こんな育児支援サービスがある場所もあることを目の当たりにして、少しだけ希望が持てた。

施設を見学して帰る前に、都留さんがこんなメッセージをくれた。

都留:育児をする上で、孤立しやすい現状をとても深刻に受け止めています。特にお母さん一人での育児ということになると、育児が楽しいと思えなくなってしまいがちです。

私たちの子育て支援センターに来ていただくことによって、育児の助けになれば嬉しいですし、乳児院がどんなところかを知ってもらうきっかけにもなっています。

赤ちゃんと親御さんが孤立してしまうのが、一番心配。悩んだら保健師さんなどに是非相談してほしいです。

今後もっと育児がしやすい地域になるように、私たちも頑張っていきます。

X:ここなら育児で悩んでも、助けてもらえそうな気がしてきました。まだ子どもいませんけど、とりあえず新宿区に引っ越します!

都留:お待ちしてます!

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