記事提供:CIRCL

科学の進歩によってさまざまなことが可能になってきた。その中でも病気を治す医学は近年非常に進歩しており、受けられる恩恵も大きい。

昔は不治の病と言われていた結核は、抗生剤によって完治できる病気になり、十数年前には不可能と思われていたがんの完治や、AIDSの発症予防も可能となっている。そして、その医学の進歩は賛否両論のある遺伝子の領域にも踏み込んできている。

生命の誕生に関与する医療には賛否両論

卵子と精子が受精して子どもが生まれる。この新しい生命が誕生する過程は一般的には神聖なものと考えられ、その分野に踏み込んで生命の誕生の過程を変えたり、生命を人工的に作り出したりする技術には否定的な意見も多い

この技術が、人工的に新しい生命を、しいては人工的に人間を作り出せてしまう可能性があるからである。クローン羊などクローン動物もある意味人工的に作り出された動物である。

遺伝子疾患を持っている人には必要な技術

一方、こういった技術を必要としている人もいる。遺伝子自体に異常があり、その遺伝子を子どもに伝えてしまう可能性のある病気を持っている人たちだ。

その代表がミトコンドリア病である。ミトコンドリアは、すべての細胞の中にあり、その細胞が活動するためのエネルギーを産生する。

ミトコンドリアは、普通のDNA情報が入っている核とは別の場所に存在し、他の遺伝子とは違い、その遺伝情報は母親から100%子どもへ受け継がれる。

母親から引き継いだ、異常なミトコンドリアを持つ細胞の 割合によって、ミトコンドリア病が発症するかが決まってくる。他の遺伝病に比べてミトコンドリア病を持つ母親から生まれてくる子どもの、その病気の発症率は非常に高い(※1)。

「3人の親を持つ子ども」とは

これらの患者のために開発されているのが「3人の親を持つ子ども」を作る技術である。これは、受精して数時間の受精卵からDNAを取り出し、核を抜いたドナーの卵子に移植する技術である。

核DNAはもともとの夫婦から、ミトコンドリアはドナーの母親から得るため、3人の遺伝情報が入った受精卵になる。

ミトコンドリアは見た目や性格などには全く影響しないと言われている。こうした形質はすべて元の夫婦の遺伝を引き継ぐことになるため、ミトコンドリアという表に出てこない要素以外は、その夫婦から普通に生まれた子どもと変わらないのである。

イギリスでは法律をクリアし安全性の確認段階

2015年に、イギリスが世界で初めてこの技術を法律的に認めたため、64人のドナーから500の卵子の提供を受けて研究が行われた。DNAの移植を受けた卵子は、特に成長に対する悪影響はなく、引き継がれる異常なミトコンドリアの量は劇的に減った

それでもまだミトコンドリアの2%は異常のあるものが引き継がれ、幹細胞株の5つに1つでDNAのダメージが増加していた。イギリスでこの技術が実用化されるためには、この安全性に関する問題が解決される必要がある。もう少し時間がかかるようである。

生命の誕生に関わる技術は賛否両論

BBC NEWSのサイトにこのニュースが載ると、この技術への賛否両論のコメントが相次いだが、否定的なものの方が多い。やはり生命の尊厳への倫理的な面やこの技術の悪用のリスク、技術自体への不安などが否定的な意見の多くである(※2)。

危険性や否定的な意見も多い技術ではあるが、病気の母親たちが自分の子どもを産むための希望の光をもたらす技術でもある。法律で認められた以上、実用化される可能性は高いだろう。この先、人類は生命誕生のプロセスにどこまで入り込んでいくのだろうか。

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