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怒りという感情をどうにもコントロールできずに悩んでいる人はとても多い。他人のちょっとした発言にムカッとしたり、どうでもいいことでイライラしたり、ついにはそんな自分の“小ささ”に自己嫌悪に陥ったり…。

でも、生まれ持った性格を変えることなんてできるのだろうか?そんな問いへの答えが本書『「怒り」がスーッと消える本』(水島広子/大和出版)には書かれている。本書には「“怒り”という感情をどう扱うかが、心の健康や人間関係の質、ひいては人生の質を決める」とある。

著者の水島広子氏は精神科医で対人関係療法クリニックの院長を務める人物。「対人関係療法」とは、うつ病や摂食障害、不安障害への効果が科学的に実証されている治療法である。

たとえば夫との関係のストレスでうつ病を発症した場合、まずは夫との関係を改善することでうつ病を治そうとする治療法だ。その際、関係改善の決め手の一つとなるのが“怒り”という感情との関わり方だという。

怒っていないふりではなく、怒りを手放すことで、対人関係のみならず人生の質を向上させようというのが、本書の試みだ。

“怒り”の原因は「予定狂い」と「役割期待のズレ」にあり

そもそもどんな時に、なぜ人は怒るのか。本書によれば、怒りとは「自分の予定が狂った時」に起こるという。たとえば「取っておいたデザートを家族に食べられた」「忙しいのに上司に新しい仕事を振られた」などなど。

これらはすべて事前にたてていた予定が狂ってしまったのがことの本質だ。また、あらゆる対人ストレスは「役割期待のズレ」が原因だという。たとえば次の場合。

(1)「大酒飲みの友達と飲めない自分、いつも割り勘にされてイライラする」場合

(2)「2人で会っているのに目の前で携帯の長電話をされた」場合

自分としては平等にお金を払いたいとか、目の前の自分と向き合ってほしいとかいう「役割を期待」しているわけだが、友達がそれに気がついているのかどうかすらわからない。

これでは自分が完全な被害者になってしまい、ストレスが溜まる一方だ。さて、ではどうすればいいのか。

ポイントは相手を変えようとしないこと

人は自分の人格にネガティブな評価を下されると、必ず自己防衛をする本能があるという。つまり攻撃的になってしまう。このように反射的に怒りにまかせて、相手の役割期待のズレを修正しようとしても、うまくいかないのは当たり前。

ならば先ほどの例で言うと(1)は、「今月はお金がピンチだから、自分が飲んだ分だけでいい?」と聞いてみるのはどうだろうか。相手はハッとして気がついてくれるかもしれない。

また(2)の例では自分が粗末にされたと腹がたつわけだ。だが本当に相手が自分を粗末にしていたかは、結局のところわからない。それなのに被害を受けたと思い込んでしまったら、それはわざわざ自分を傷つける行為ではないかと本書は指摘する。

ならば、被害を受けたと思うたびに「そう断言できるほどの証拠がそろっているだろうか」と考える習慣をつけるとよいという。

そう考えていくと、実は自分の外側で起こったことについて確信できることなどほとんどない、ということに気づいてくる。これがわかると、確実でもないものに断定して怒る、というプロセスがとても不毛であることにも次に気がつく。

本書の後半には「怒りを手放し、穏やかに生きる」ための具体的メソッドがさらに細かく書かれているが、その本質は1点。「『べき』ではなく『したい』で生きる」ということだ。それは、主体的に人生を生きることだ。

「忙しいのに上司に仕事を振られた」など、どうみても被害者だというケースでさえ、結局のところは被害者かどうかを決めるのは自分自身なのだから。そんなパワフルなメッセージが、本書を刊行から5年で20刷を数えるまでのロングセラーに押し上げている。

怒りという怪物から人生を取り戻したい、そんな願いを持つすべての人に手にとってほしい1冊が本書だ。

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