ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナー。今回も興味深いお話を伺ってきました!

出典Spotlight編集部

去る8月15日、東京メトロ銀座線の青山一丁目駅において、盲導犬を連れた視覚障害者の男性がホームに転落し、死亡するという痛ましい事故が発生しました。

この事故では、駅にホームドアが設置されていなかったことや、柱が点字ブロックと一部重なっていたことなど、施設面での問題点も指摘されています。

しかし、施設を充実させて安全を確保するには限界があります。そこで、今回Spotlight編集部では日本盲導犬協会の広報の方へインタビューを敢行。

視覚障害を持った方や、盲導犬を連れている方はどんな助けを必要としているのか、注意点を含めお話を伺ってきました。

盲導犬の役割とは?

出典日本盲導犬協会提供

ーー今回の事件では、点字ブロックがあって盲導犬も一緒だったのになぜ転落してしまったのだろう?と考える人が少なくありませんでした。一般的に、視覚障害を持つ方を見ても「盲導犬と一緒なら大丈夫だろう」と思う人が大多数ですが、実際はどうなんでしょうか?

日本盲導犬協会(以下、協会):まず、今回の事故をご理解いただくために、移動する際の歩行の仕組みからお話しますね。移動というのは、モビリティ(歩くなどの移動行為)と、オリエンテーション(現在地と目的地の把握、移動手段の考察)の組み合わせで成り立っているんです。

視覚障害を持っている方は、モビリティとオリエンテーションの両方を行いますが、盲導犬ができるのは、モビリティのお手伝いのみなんですよ。つまり彼らは、目的地までの経路まで考えているわけではありません。

ですから、盲導犬と一緒なら万全というわけではないんです。

ーー盲導犬が道を覚えて、視覚障害を持っている方を案内していると思っていました…。そういうわけではないんですね。

盲導犬がしてくれていること

出典日本盲導犬協会提供

ーー盲導犬は、具体的にどんな仕事をしているのでしょうか?

協会:盲導犬の仕事は、モビリティーの障壁を教えることです。障壁となるものは3つあって、1つ目は人や車、柱などの障害物、2つ目は段差、3つ目は交差点などにある角です。

盲導犬がこれらの障壁をどうやって教えてくれるかというと、例えば人や車であればぶつかる前に停止したり避けたりして教えてくれますし、水たまりなどは避けてくれます。段差の場合は、手前で止まって1段目に足をかけて教えてくれるんです。

角の場合は、盲導犬が角に入り込むように左に体を向けることで教えてくれます。この時ユーザーは、ハーネスの傾きで交差点に来たということがわかるんです。

こういった歩く際の障壁に関する情報を盲導犬から教えてもらいながら、どのように目的地まで行くかをユーザーは自分で考えて移動しています。

知らない土地に行く時はどうするの?

出典日本盲導犬協会提供

ーー盲導犬は自分の位置や目的地をわかっているわけではないと、先ほどのお話で伺いましたが、ユーザーさんは初めて行く場所は道もよくわからないのではないでしょうか?

協会:そうですね。目的地の場所に問い合わせをしたり、インターネットを利用するなどして、皆さんとても入念に準備をされて外出しています。とはいえ、やはり周囲の助けがなければ難しいこともあるんです。

例えば、駅から離れた場所であれば、一度に道順を覚えることが困難なケースもあります。だから、ランドマーク的な場所まで人に聞きながら行き、そこでまた目的地までの行き方を人に聞くんです。積極的に人に確認しながら移動するというのは、歩く側の技術の1つなんですよ。

「盲導犬を連れている人に声をかけるのはNG」は間違い

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ここまでのお話で、盲導犬と一緒にいても人間の助けが必要不可欠であることがわかりました。

しかし、現実問題として「声をかけにくい」「声をかけてはいけないのでは?」と考える人もいるのではないでしょうか。我々がお手伝いをさせていただく第一歩となる「声かけ」について、こんな“誤解”が生じていました。

協会:今回の事件が起きてから、私たちが多く耳にしたのは「盲導犬を連れている方には、声をかけちゃいけないんですよね?」という質問でした。おそらく、そのように思われている方が多いと思うのですが…。

ーーそうですね…何が起きるかわからないから盲導犬はもちろんのこと、視覚障害を持っている方に声をかけてはいけないと考えている人が多いと思います。

協会:実は、「声をかけてはいけない」という認識が違うことを今回知って頂きたいんです。確かに、これまで「声をかけないでください」という啓発活動はやってきましたが、それは盲導犬に対してであって、人に対してではありません。

なぜ盲導犬に話しかけてはいけないのかというと、視覚障害の方が見えない状況で盲導犬の気を引くようなことをされてしまうと、犬が集中力を欠いてしまう恐れがあるからなんです。

盲導犬と歩いている人に対しては、むしろ積極的に声をかけていただきたいと思います。「信号が青になりましたよ」と声をかけていただくだけでも、安心感に繋がりますから。

声かけをする時のポイント

出典日本盲導犬協会提供

協会:もし近くにユーザーがいたら、どんな風に声をかけますか?

ーー「すみません、お手伝いしましょうか?」ですかね?

協会:実はその声かけですと、目が見えないユーザーは自分に対して言われていると気づけないことがあるかもしれません。なので、気づかなかった場合は「“盲導犬を連れている方”何かお手伝いできることありますか?」と、明らかにユーザーに対しての声かけだとわかるようにしていただけると、その後のやり取りがスムーズになると思います。

ーーなるほど!他に気をつけるべきことはありますか?

協会:声をかけていただいてから、ユーザーの正面に回ってお話いただきたいです。なぜかというと、右や左から話しかけられて体の向きが変わってしまったりすると、どこが正面なのかわからなくなってしまいます。

移動の際には、どこに人がいるかわかることと、その方の正面の方向を見失わないようにすることが大切なんです。

また、目的地まで案内する際にも一方的に手を掴まれたりすると、おどろいてしまいますので、ユーザーの方にどんな形で案内する(肩や腕を貸すなど)のが安心か、聞いてみてください。

迷わず声かけすべき場所は?

ーーどんな時にお声がけをしたら良いか、わからないという方がほとんどだと思うので、具体的にどんな場面で必要とされているのかについて教えて下さい。

協会:迷わずに声かけをしていただきたい場所は、交差点です。信号があってもなくても、道を渡ろうとしていれば是非声かけをしてください。

もう1つはです。特にホームは電車だけでなく色んな音が反響しているので、自分の現在地や方向を把握しにくく、とても危険を感じる場所なんですよ。ですから、私たちの協会では、ホームではなるべく単独で移動しないようにとお伝えしています。

できるだけ移動しなくてすむ場所で、電車に乗降することを訓練しているんです。移動する場合は、駅員さんや周りの人の力を積極的に借りましょうとお伝えしています。これは安全確保のためなんです。

やむを得ず、一人で移動されている場合もあるので、もしそういった方を見かけた時は声かけをお願いします。

また、ホームギリギリを歩いていらっしゃる、落ちてしまうのではないかなど、危険を感じた時は「ストップ!」と声をかけ、本当に危険な場合は少し強引であっても止めて差し上げてください。

視覚障害の方にとって慣れた道やよくわかっている場所などでは、声かけをしてもお手伝いを断られることがあるかもしれませんが、あまりに気にせずに「では、お気をつけて」と見送っていただきたいです。

こんな場面でも助けを必要としています

出典日本盲導犬協会提供

駅や交差点以外にも、日常生活で助けを必要としている場面をお聞きしました。

ーー移動に関すること以外にも、何かお手伝いが必要とされる場面はありますか?

協会:バス停などで「どちらまで行かれますか?」と声をかけていただき、「○○行きのバスが来ましたよ」と教えていただけると助かります。段差もありますので、乗降口まで案内していただけるとさらに安心して利用できるのではないでしょうか。

他にはコンビニなどでお買い物の案内をする際に、例えば「新商品の○○が入ったおにぎりがありますよ」など、ちょっとしたプラスの情報があると助かるという声もあります。そして、声をかけていただけることで一人ではないと感じられるので、何より嬉しいそうです。

人の力が安全につながる

出典日本盲導犬協会提供

協会:人間がぼーっとしていて勘違いする時があるように、盲導犬も間違えることがあります。つまり、完璧ではありません。もちろん間違えた時に、リカバリーできるように訓練もしていますが、周囲の人の力はどんな時も必要なんです。

みなさんの一言が、視覚障害を持っている方、ユーザーの安心・安全につながります。是非、街中で見かけたら気軽に声かけをお願いします。

ーー日本では、どなたかを助けたいという気持ちがあっても、気軽に声をかけにくい傾向があるかもしれません。しかし、その一言が事故や危険な状況を防ぐのです。

善意の声かけがもっと気軽に行われるようになれば、視覚障害を持つ方に限らず、外出が困難な方ももっと気軽に外出することができるのではないでしょうか。

盲導犬とユーザーさんについての理解が、この記事を通して深まれば幸いです。

<取材・文/横田由起>

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