ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナー。今回も興味深いお話を伺ってきました。

みなさんは、1年間の中で子どもの自殺が一番多い日がいつか知っていますか?

それは、9月1日です。内閣府の調査によると、昭和47年~平成25年の42年間で、18歳以下の子どもの自殺は1万8,048人。日別に見ると、9月1日に131人ともっとも多く、9月2日も94人、8月31日も92人と極めてたくさんの子どもが自ら命を絶っていることが分かります。

また、15歳~19歳までの子どもの死因を見ると、3位が「悪性新生物(がん)」、2位が「不慮の事故」、1位が「自殺」となっています。先進7か国の中で、子どもの死因として「自殺」がトップとなっているのは日本だけだそうです。

子どもを守るために、親としてできることを考えよう

「本当にそんなに子どもが自殺しているのだろうか」と、現実味が湧かない方もいるかもしれません。また、「大人と比べて、子どもがそんなにストレスがかかる環境にいるとは思えない」と不思議に感じる方もいるでしょう。

しかし、小4~中3までの生徒にアンケートを取ったところ、約9割が「いじめられた経験がある」と答えたというデータもあります。今この瞬間も、人知れず思い悩み、死に追いやられている子どもたちが存在することは確かなのです。

この記事では、明治大学文学部の教授で、臨床心理士、上級教育カウンセラー、学会認定カウンセラーなどの資格をお持ちの諸富祥彦(もろとみ よしひこ)先生に取材を敢行。

子どもが自殺を考えてしまう原因や、自殺の前に見られる兆候についてお話をうかがいました。諸富先生のお話を通して、親として、子どもたちを守るためにできることを考えてみませんか?

なぜ、9月1日に子どもの自殺が増えるのか?

まずは、なぜ9月1日に子どもの自殺が増えるのかを諸富先生に伺ってみました。諸富先生いわく、「40日間という長い夏休みが明けて、学校生活へのモードチェンジが効かないということが一因にあります」とのこと。そして、そのモードチェンジの辛さが「自殺」へのトリガーになってしまう子どもがいる、と諸富先生は話します。

「モードチェンジを一番苦しく感じてしまうのが、不登校の子どもです。彼らは『夏休みが終わったら学校に行こう』と思っているけれど、登校日が近づいてくると『やっぱり行けない』と考えてしまう。現実がどんどん重くのしかかってくるわけです。その内に、自分の存在を否定することにつながってしまいます。

また、いじめられている子も同様です。いじめられている子は、夏休みの間エスケープできているわけです。しかし、だんだんと逃避できない現実が迫ってくるということですね」(諸富先生)

宿題の負荷が自殺につながることも

また、不登校やいじめといった問題を抱える子が「夏休みの宿題」について悩み始めると、それが自殺へと思い詰める原因になるといいます。

「最近の中学校の夏休みの宿題は量がすごく多いんですよ。そこに、『宿題やったの?』と親からずっと言われる。ただでさえ『学校に行きたくない』と悩んでいるところに、宿題の問題が降りかかってくると、自分を否定せざるを得なくなって、死んでしまいたいと思い始めるのです」(諸富先生)

子どもが学校で問題を抱えている場合、親は宿題ができていないことについて厳しく叱責してはいけない、と諸富先生は言います。親があまりに責めすぎると、子どもは「宿題ができていないまま学校に行くことは、罪人である」という意識を抱きかねないのです。

親が気づいてあげるべき「子どものSOSサイン」

子どもが思い悩んでいることに周囲の大人が気づくことができず、その子が自ら命を絶ってしまった…という痛ましい事件の話を耳にします。深刻な事態に至る前に、親が気づいてあげるべき「子どものSOSサイン」を諸富先生から教えていただきました。

1. 「死にたい」とつぶやく

「よく、『“死にたい”と言う人ほど、死なない』という話を聞きますが、あれはウソです。『死にたい』と言っていた子ほど死んでしまうんです。学校現場に関わっていると実感するのですが、子どもの自殺未遂の数はかなり多いんです。実際に死ぬ子は、ほんのわずかなんですね。でも、『首吊りの失敗』なんて結構あるんです。

そうやって自殺未遂を繰り返しているうちに、本当に亡くなってしまうんです。だから、『死にたい』という言葉を虚言だとは思わずに、大人は真剣に向き合わなければいけません」(諸富先生)

そういった言葉を耳にしたときは、すぐに学校の先生に連絡をし、スクールカウンセラーにアドバイスを求めるのが最善の対処法とのことでした。

2. メールやTwitterで自殺予告をする

「メールやTwitterで『9.1に死にます』『9月15日までに自殺します』というように、自殺の予告をする子はすごく多いです。そして、実際に自殺未遂をしてしまう。だから、予告があったら、その期間は本気で見張っておいたほうがいいです」(諸富先生)

2015年、岩手県の男子中学生が担任に提出するノートに自殺をほのめかす内容を書いていたものの先生は何も対応せず、結果として生徒は自殺してしまったという事件がありました。インターネット上では先生への批難の言葉があふれる一方で、生徒本人が「市ぬ場所はきまってるんですけどねw」と書いているために、深刻さを感じ取れなかったのではないか、という意見も見られました。

諸富先生によると、「結構、軽く書いてしまう子が多いんですよ。だから冗談のように見えても、死の予告や、『死にたい』という言葉は真剣に捉えるべきです」とのこと。メールやSNS、ノート、作文などにも死をほのめかす言葉がないか、目を光らせるべきでしょう。

3. 鬱のサイン(以前と違った様子や身体症状)が見られる

「自殺をする子の多くは鬱になっているんですね。ですから、鬱のサインに気をつけるべきです。例えば、『眠れていない』『寝付けない』とか。それから、前は身なりがきちんとしていた子がだらしなくなったとか、お片付けがきちんとできていたのにできなくなったとか。以前と違った様子が見られるときは要注意です。あるいは、『頭が痛い』『お腹が痛い』という身体症状を訴えたときも気をつけたほうが良いです」(諸富先生)

特に病気でもないのに頭痛や腹痛などの身体症状が3日以上続いた場合は、実は心の問題であることが多いそう。子供の発言だけでなく、行動、就寝状況、体調といった観点からも以前と違ったところがないかしっかりと見てあげなければいけません。

親として、つらいときに「つらい」と言える環境をつくらなければいけない

自殺未遂をする子は学校で居場所がなく、さらに親が厳しいために家庭でも閉塞感を感じているケースが多いそうです。

「親が上から目線でガンガン叱ってばかりだと、つらいときに『つらい』と言えない子どもに育ってしまいます。そうすると、親に胸の内を明かせずに死んでしまうことにつながりかねません。子どもを死なせたくないならば、つらいときに『つらい』と言える環境を普段からつくるべきです」(諸富先生)

最近の子どもは心身ともに発達が早く、男子で小5、女子で小3から思春期を迎えます。その年齢から複雑な心理が芽生え始め、「自分には生きている価値はない」という発言をする子もいるそうです。まだ子どもが幼い段階から、親として子どもに「話をさせてあげる」環境づくりを心がけるべきでしょう。

子どもの居場所は学校だけじゃない

2015年の夏休み終了間際、ある鎌倉市図書館の公式カウントのツイートが話題になりました。

諸富先生も「文部科学省が9月1日に子どもの自殺が多いと発表し、『つらい子は、学校を休んでもいいんだよ』という風潮ができたこと自体は、とても良いことだと思います」と話します。親としては、子どもに「学校だけが居場所ではない」と教えてあげること、そして自宅という空間を「子どもの心を守るシェルター」として整えてあげることが大切なのではないでしょうか。

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