知ってるようで知らない、だけど気になるあの仕事をSpotlight編集部が深掘り取材するコーナー「シゴトペディア」。今回は、私たちが買い物をするときに「買う気」にさせる、“あるもの”を作る方の仕事に迫ります。

商店街などを歩いていると、目に入ってくるものといえばカラフルな「POP(ポップ)」。商品を説明するだけでなく、店員さんの推薦文やギャグなど、思わず気になってしまうコメントやイラストが目に入り、ついつい足を止めてしまいますよね。

そんな私たちの目を惹くPOPの中には、「POPライター」と呼ばれる専門の職人の手によって作られているものがあるとか。今回は、実際にドン・キホーテで「POPディレクター」として働く、東 美保子(あずまみほこ)さんにお話を伺ってみました。

“人生で最高の求人広告”を見て応募

――今では専門でPOP作りを行っていらっしゃいますが、興味を持ったきっかけはなんだったんですか?

「もともと文字を書くことが好きで、今の仕事を始める前から、POPライターという仕事に興味を持っていたんです。そこで、通販学習の資料を取り寄せてみたのですが、教材費が高い、仕事があまりないという現実を知り、その時は一旦あきらめていました」

――POPライターの通販学習もあるんですね。その後はどうしたんですか?

「ある日、ドン・キホーテの求人広告を目にしたのですが、もともとドン・キホーテが大好きで、こんな面白いお店はほかにはないと思っていたので、その時は一石二鳥というか、一粒で二度おいしいというか、人生で最高の求人広告を見た気分でした。ダメもとで説明会に参加し、試験を受けてみたところ、思いがけず合格。まだPOPライター初心者だったこともあり、その後、鬼の研修を受けましたが(笑)」

がむしゃらにPOPを書きまくって上達

まだ下手くそだった頃に描いたPOP(約11年前)

――今ではたくさんのPOPを生み出していると思うのですが、POP作りはどのようにうまくなっていくんですか?

がむしゃらにPOPを描きまくりました。最初のころは、とにかく自分は下手くそで、それこそ上司から烙印をもらうくらい(笑)。暇があれば、自店以外のドンキのPOPを見て回りましたし、関東・中四国・九州、行ける店舗は片っ端から行きました。真似できることや真似してはいけないことを、実際に自分の目で見て学び、POP作りに取り入れていきました」

――なるほど、最初からPOP作りがうまかったというわけではないんですね。

「はい。ただ、私は知識も元から白紙だったため、POPライターの仕事に入りこみやすかったです。POPの基本を知らなかったために時には大胆なこともできましたし、時にはヘンテコな色使いをするなどたくさんの失敗をしました。でも、そういった失敗も大事な経験の一つだと今では思っています。おかげさまで、今では新人のPOPライターを研修する立場になりました

「売れなさそうな商品に出会ったとき」に燃える

――POPライターのお仕事の中で、もっともやりがいを感じるのはどんなときですか?

売れなさそうな商品に出会ったときです。『よし、売ってやるぞ!』と、ワクワクメラメラしますね。そんな時、もし知らない商品だと、POPの描き様も変わるので、なるべく広い情報を頭に入れるために、常日ごろ雑誌やネットで情報収集をしています」

――普段の生活の中で、POP作りに役立てていることはほかにもありますか?


「これは趣味の一環でもありますが、大体2日に1冊ペースで本を読んでいます。POPはお店の顔であり、ドン・キホーテのイメージにつながるものなので、意味が通じない文章や誤字脱字を書かないよう、本を読みながら自分の知らない日本語や漢字を覚えています。

また、“POPが人を傷つける物にならないように”ということも日ごろから心がけています。決して万人受けを狙う必要はないですが、『9999人が喜んでくれるなら、1人は泣かせてもいい』のではなく、『5000人しか喜んでくれないけど、1人も泣いてない』方がいい。これはドン・キホーテのPOPライターというより、自分自身の観念かもしれないですね」

POP制作は「下書きナシ」のぶっつけ本番

――このお仕事ならではの、一番の思い出深いエピソードはなんですか?

「大阪府の守口警察署で実施されたヘルメットの装着を呼びかけるキャンペーンの際に、『親しみのあるポスターをつくりたい』という要望で、ドン・キホーテのPOPライターに白羽の矢が立てられたことがあります。店内のPOPにとどまらず、地域の活動に役立てられたことはとてもうれしく思いました

――お店を飛び出して、地域に広がるなんて素敵ですね。では、POPについて、お客さんに知っておいてほしいことはありますか?

「ドン・キホーテのPOPは『手描き』だという事を知らない方は意外といらっしゃいます。そのため、『手描き』であるということが、そもそもの豆知識かもしれません。しかも下書きなしで、ほぼぶっつけ本番で描いている事にもよく驚かれます。関西の一部でだけなのですが、『無料メッセージカードサービス』をやっています。POPライターがお客様の代わりに、メッセージカードを代筆するサービスなのですが、小さなお子様や字に自信のない男性が利用されています。まだ広まってはいませんが、こんなサービスもあるってもっとお客様に知っていただきたいです」

つい役所の書類にも「ドンキ文字」で…

――お仕事柄、日ごろの生活でつい出てしまう職業病のようなものはありませんか?

「ドンキ文字が抜けず、役所の書類にもドンキ文字で書いてしまいます(笑)。あと、どこに行っても、手書きの物に目が行ってしまいます。POPも看板もメニューも、自分だったらこう描くな、という視点で見てしまう。時々店員さんを呼んで直してもらう、ちょっとうざい客になっているかもしれません(笑)」

――最後に、POPライターのお仕事を一言で表すならば、どんな仕事ですか?

「言うならば『縁の下の力持ち』といったところでしょうか。ドン・キホーテに足を運んでいただく際は、ぜひPOPライターの仕事ぶりにも注目してみてほしいです」

その愉快な見た目から、とても楽しそうに見えるPOPライターの仕事。ですが、言葉や色のチョイス、商品に関する知識などを短い言葉でより多くの人に一瞬で伝えるために、影の努力は欠かせません。もし今後、ドン・キホーテに足を運ぶ際には、POPの存在を感じながら買い物をしてみると、いつもと違った楽しみ方ができそうですね。

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