記事提供:TOCANA

――科学分野だけではなく、オカルト・不思議分野にも造詣が深い理学博士X氏が、世の中の仰天最新生物ニュースに答えるシリーズ

顕微鏡の画面の中で、小さな丸い粒が自由気ままに動き回っている――。一見すると微生物か免疫細胞のように思われるが、なんと正体は、“ただの油の粒”。

「デカノール」と「ウンデカナール」という物質を混ぜて生み出した油で、界面活性剤(油と水を馴染ませる物質で洗剤の一種)の水溶液中を、まるでアメーバのように形を変えながら、ひとりでに泳ぎ回るという。

この摩訶不思議な現象を発見したのは、東京大学大学院の豊田太郎准教授らの研究グループだ。

別の実験を行っている最中、まったくの偶然だったという。今月9日、論文が英科学誌「Nature」の姉妹誌であるオンラインジャーナル「Scientific Reports」に掲載されると、各国で報道されて大きな話題を呼んでいる。

出典 YouTube

■なぜ動くのか、理由が“わからない”!

では、なぜ油滴がひとりでに動き回るのだろうか?実はその詳細なメカニズムは、「不明」なのだという。

現在のところ、豊田氏らは油滴の表面で生じる界面張力の変化が原因ではないかと考えているようだ。界面張力とは、水中にある油滴を球体にしている力であるが、油滴の表面上にはこの力が弱いところと強いところがある。

そして油滴表面の分子は、界面張力が強いところから弱いところへと移動する。

この分子の移動によって生じた流れと、界面活性剤と油の分子間で働く相互作用によって、油滴は変形しながらあちこち動き回るのではないかと推定されているが、これが検証されているわけではない。

引き続きメカニズムの解明という難題は残されているものの、今回の現象について豊田氏らは、将来的にマイクロメートルサイズの極小ロボットなどに応用できるのではないかと考えているようだ。

この油滴は自由に変形できるため、障害物が多い狭所でも自在に動き回ることが可能だ。例えばタンカー事故の際に、海中の重油を回収するなどの使い方があるのではないかと期待されている。

■生物誕生の謎、解明につながるか!?

さらに驚くべきことに、豊田氏らによれば今回の現象は、生物の細胞運動を理解するためのツールにもなり得るというのだが、これはいったいどういう意味なのか?生物学に詳しい理学博士X氏に解説を求めた。

「細胞がどうやって動いているか、そのシステムには未解明な部分が多く残っています。今回の油滴のようなシンプルなモデルは、その理解に大いに役立つと考えられますね」

そしてX氏は、この油滴が生命進化の解明にも役立つのではないかと力説した。

「ご存じの通り、地球上のすべての生物は細胞からできていますが、この細胞がどのように生まれたのか、それを考える上でも面白い発見です。

生命は、アミノ酸や核酸などで満ちた原初の海の中で生まれたと考えられていますが、詳細なメカニズムはいまだ不明です。

さまざまな物質が、物理化学的な作用によって組織化した結果、『細胞』の原型が作られたと考えられているものの、今回のように自ら動くことができる油滴が生命誕生に深く関わっている可能性は捨て切れないと思います。

つまり、最初に動けるようになった生物は、もしかしたら今回のような不思議な性質をもつ油に包まれた単細胞生物だったかもしれないという意味です」

だが、そのような都合の良い物質が、なぜ原初の地球にあったのだろうか?

「今回の不思議な油を構成する『デカノール』と『ウンデカナール』ですが、原初の地球環境でも生成し得る物質の一種です。それ以外にも、宇宙空間から隕石などにくっついて飛来してきた可能性(パンスペルミア説)だってある」

そして最後にX氏の口から、驚くべき一言が飛び出した。

「何者かが地球へと持ち込んだ可能性だって、それを否定する材料はないんですよ。生まれたばかりの小さな細胞を自ら動けるようにして、地球生物の進化を促すためにね」

我々のイマジネーションを刺激する、実に興味深い話ではないか。日本で発見された不思議な油が、生命の謎と神秘をも解き明かしてくれる日がやって来るかもしれない。

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出典:NHK NEWS WEB
出典:豊田研究室
出典:Scientific Reports

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