知ってるようで知らない、だけど気になるあの仕事をSpotlight編集部が深掘り取材するコーナー「シゴトペディア」

今回のお題は、映画やドラマ、小説に登場する「ボディガード」。ブラックスーツを身にまとい、命がけで依頼人を危険から護る姿にシビレた経験がある方も多いでしょう。

ですが、実際にどうやって警護しているのかまではなかなか知らないもの。ましてや、映画やドラマのようなボディガードなんて、本当にいるのでしょうか?

答えはイエス。現代の日本においても、まるでサスペンス映画のような活躍をしているボディガードの方もいるんです。その方が、「株式会社エス・ピー・アイ」の特殊警備部・部長のAさん。今回は、ボディガードの気になる仕事内容や経験した危険なエピソードについてお話を伺いました。

――まず、ボディガードの基本的な仕事や依頼主について教えてください。

「私は依頼者の方の安全確保と、危険人物の接近防止を目的にボディガードをしております。今まで依頼してくださった方には、政府高官や企業の役員、国内外のアーティスト、芸能人といった方々もいました。

最近では、アイドルのボディガードをする機会も増えましたね。アイドルの方がインターネットでファンと身近に接するようになった分、ストーカー被害に遭うことも多くなってしまったんです」

――一般人のボディガードをされることはありますか?

「はい。私の以前の会社では、富裕層が対象でした。でも、社会に目を向けると、ストーカーやDVの問題もありますし、お子さんが異常者に遭遇してしまったというような話も聞きます。そういった一般の方の問題においても、ノウハウが活かせるんじゃないかと思い立ち、独立して今の会社を作ったんです」

依頼料金は“リスクのレベル”によって違う

一般人の場合は、企業の役員やトップアーティストと比べれば、そこまで危険に巻き込まれる可能性は少ないもの。そのため、エス・ピー・アイさんでは、リスクのレベルによって料金を変えているそうです。

・ローリスク 1時間 3,500円
・ミドルリスク 1時間 5,000円
・ハイリスク 1時間 8,000円~
(※最低契約時間は基本的に8時間~)

一般人でも、脅迫を受けている人、危険人物から襲われた経験がある人の警護をする場合は「ハイリスク」の料金となるとのことでした。ボディガードを雇うような人であれば、自分の身を守ることに対して、お金を惜しまないように思えますが、実際には、依頼人から次のようなことを言われることもあるそうです。

「何事もなく1日が終わったときには、『何も起こらなかったのだから、料金を下げてくださいよ』とおっしゃられる方もいます。だけど、何もなかったときが、『成功』なんです。ボディガードは、危険なことが起こったときにお客様を守るのはもちろん、危険なことを起こさせないように『抑止力』を発揮する側面があるんです。その点はご理解いただきたいと考えています」

依頼人が「詐欺師」だったことも

――印象的な依頼主のエピソードがあれば教えてください。

「以前、お客様から警護を依頼されたときに、素性を調査させていただいたところ、本人が話していたことはまったくのデタラメだったということがありました。『何で嘘をついたんだろう?』と掘り下げて調べていくと、実はその人は投資詐欺の一員だとわかったんですね。警護を付けることによって、自分を『地位の高い人間』に見せて、カモフラージュをして、詐欺を働いていたんです

――依頼人が詐欺師とは…どうして詐欺師だと気づいたんですか?

詐欺師は、名刺に『肩書き』を書ききれないくらい入れる傾向があるんです。その人も名刺に特徴があったので、すぐに『おかしいな』と感じました。事実の発覚後、その依頼はお断りしました」

まるで、サスペンス映画のようにハラハラするエピソードです。このように、詐欺師といった危ない人物と接する機会も多いボディガードの仕事では、危険な目に遭ってしまうこともあるそう。

ボディガードに必要なのは「強さ」だけではない

――Aさん自身、何か危険な目に遭った経験はありますか?

目の前で刃物を振り回されたことがあります。そのときは、会話で説得をしました。『私を刺してしまったら、犯罪になりますよ』と冷静に伝えることによって、相手も我に返ってくれたようです。それでも向かってきた場合は、こちらとしても手を出すしかないのですが、あくまで最終手段ですね」

――そう考えると、こちらも相当の武力や精神力が必要になりそうですね。

「最低限、格闘技や武道の有段者である必要があります。当社の社員の場合、指導員クラスの腕を持つ者や、武道の大会の上位入賞者もおります。

ただ、この仕事は『強さ以外の要素』も大事です。要人の警護をすることが多いので、礼儀やマナーは大事ですし、先ほどお話したような危険な目に遭うこともあるので、柔軟性や説得力も必要になります。ただ強さだけ求めるのであれば、ゴリラにボディガードをさせれば良いということになってしまいます」

――(笑)。それにしても、このような危険と隣り合わせの仕事をしていると、ご家族にも危険が及んでしまいそうですが…。

「実際に、相手が身内や家族を攻めてくることもあります。この仕事においては、どうしても家族というものが『弱み』になってしまいます。だから結婚をしていても、指輪をつけないボディガードがほとんどです」

ボディガードの仕事においては自らの素性を隠さなければいけないこともあるそうで、本インタビューでAさんが実名をお出しにならないのも、業務上の理由があります。ここまで普通に暮らしている分には想像もつかないようなエピソードが続々と登場しましたが、これがまさにリアルな「ボディガードの世界」の話なのです。

警「護」員というプライドを持ち続ける

取材の最後に、「ボディガードの仕事を一文字で表すと、どういう仕事ですか?」と質問をさせていただいたところ、こんな回答が。

「やはり、警護の“護”という字でしょうか。私たちは、警備会社や警備員ではなく、『警“護”会社』であり、『警“護”員』です。警備のように何かに『備える』のではなく、現在進行形のリスクから人を『護る』ということを意識しています。警護に特化した仕事のこだわりは、これからも持ち続けたいと思います」

人を「護る」のが簡単なことではないのは、今回のインタビューのお話でも明らかです。それでもこだわりを持ってお仕事を続けるAさんには、プロとしての意識を強く感じました。また仕事では、警護を通じて依頼人やその家族との絆を深めたりすることもあるのだとか。今後ボディガードを見かけたときは、ぜひ彼らの隠れた仕事ぶりに注目してみてください。

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