記事提供:ORICON STYLE

若手実力派として数多くの話題作に出演する俳優・神木隆之介だが、声の出演としてのキャリアを見ても、宮崎駿監督の『借りぐらしのアリエッティ』、細田守監督の『サマーウォーズ』など、これまで注目作に出演してきた。

そんな神木が参加する『君の名は。』は、大ファンと公言してきた気鋭のアニメーション作家・新海誠との待望の初タッグ作品。アニメ作品としての新たな代表作となることを予感させる同作への熱い想いに触れた。

新海誠作品について語りたいことがたくさんある

――念願の新海誠作品に出演することになったわけですが、いかがでしたか?

神木隆之介 
本当に信じられなかったです。『言の葉の庭』を観て、次回作を楽しみにしていたので、まさか自分が携わることができるとは思いませんでした。うれしいのですが、実感が湧かないというか。これは本当のことなのかなとずっと思っていました。

――新海作品が好きでしょうがないといった様子ですが。

神木隆之介 
大好きです! 新海監督を尊敬しているので、本当にうれしいです。この作品に携わることになって初めてお会いしたのですが、初対面のときに「このシーンはどうして?」「このセリフはなぜ?」とか、これまでの作品の質問をたくさんしてしまいました(笑)。

すごく細かい質問ばかりだったのですが、「もうあまり覚えてないけど……。こうだったかなあ」と考えながら教えてくださいました。

僕が新海監督の大ファンということを聞いたことがあったそうなのですが、「ここまで好きだとは知らなかった」と少し驚かれていたみたいです(笑)。

新海監督はものすごく謙虚で物腰も柔らかいのですが、あいまいなニュアンスをねらって作られているというか、感性が鋭い方だなと思います。

ふだん僕らが見逃しているような観点から世界を見ることができる方だし、だからこそこんなにもすばらしい作品を作れるんだなと感じました。

――実際に完成した『君の名は。』をご覧になってどうでしたか?

神木隆之介 
ファンとしては、新海監督が新しいことに挑戦されたんだなと思いました。それからキュンとしました。

どう表現すれば良いか分からないような切なさだったり、もどかしさだったり。クスッと笑えるところも多いのですが、自然と涙が出てくる作品だと思います。

――本作は全国300館ほどで上映されます。新海作品としてはこれまで以上の公開規模になったわけですが、一方でメジャー作品になることで作風がそれまでと変わっていくこともあるかもしれません。新海ファンとしてはどんな思いでしょうか?

神木隆之介 
やっぱりうれしいです。新海監督の作品に携われたというのもそうですし、ファンとしても『君の名は。』という映画については語りたいことが本当にたくさんあります。新海監督にとっても集大成の作品だと思うので、多くの方に観ていただきたいです。

僕は『秒速5センチメートル』から新海監督の作品を好きになって作品を遡ったのですが、『君の名は。』を観て好きになった方が、これまでの新海監督の作品を観てくださったらうれしいです。

――本作は「俳優としての新しい挑戦だった」とコメントを寄せていましたが、具体的にはどのような挑戦だったのでしょうか?

神木隆之介 
“男女入れ替わり”という役が初めてだったので、そこはやはり難しいなと思いましたし、挑戦でした。『秒速5センチメートル』が大好きで、高校生時代はよくDVDを観ながら、モノローグをまねしたりしていました。

それこそ乾いた芝居をするときの音の感じとか、薄れていくような声のトーンとかも気持ちを伝えるために重要だと思いますし、新海監督のモノローグは実写にも通用するものなので、そこは本当に勉強になりました。

――それが結果として新海作品の予行演習になっていた。

神木隆之介 
そうですね。高校生の頃から練習していました。

――そういえば、『秒速5センチメートル』の聖地巡礼にも行かれたんですか?

神木隆之介 
行きたいです。でも行くなら3月4日が良いですし、途中の過程も気にしないといけないと思うのですが、時刻表を調べたらダイヤ改正で時間がずれていて、車両も今は違っているんです。

あの車両は来ないし、雪も降らないなと思ってしまって行けていないんです。

『桐島~』出演からオタク気質で良かったと思うようになった

――神木さんは、アニメ好きを公言されていますが、声の出演に挑むというのはどういう気持ちなのでしょうか?

神木隆之介 
実写とは全然違いますし、本当に難しい仕事だと思っています。今までアニメ作品に出演したと言っても、やっぱり自分のなかでは違う畑にお邪魔している感覚なので、いちから勉強しなくてはいけません。

それこそ(本作で共演している)本職の島崎信長さんや石川界人さんがふだんされているような感じで、声色を変えて挑んだわけではなく、地声で演技をしました。

――アニメ好きとしては、本職の声優さんと一緒に仕事をするのは幸せだったんじゃないですか?

神木隆之介 
幸せでした。 ブースに入ったときは、信長さんたちの背中を見ながら演じていました。彼らはどういうふうに声を出しているんだろう、声を変えているんだろうと思っていたのですが、聴いていると信長さんの声がスーッと入ってくるんです。

アニメの世界の声優の方々の職人技はすごいなと思います。石川さんも悠木碧さんもそうでした。

――俳優さんのなかには自身のイメージを気にする方もいらっしゃるのかもしれませんが、神木さんはそういうことは気にせずに、好きなものは好きだと自由に発言しているように見えます。

神木隆之介 
確かに以前の僕だったら、アニメや鉄道が好きだと自分からは言わなかったかもしれません。

でも(映画オタクの高校生・前田を演じた)『桐島、部活やめるってよ』に出演させていただいてからは、僕はオタク気質で良かったなと思うようになりました。

あの役は、好きなものに対する感覚が僕と共通していましたし、オタク気質ではなかったら演じられなかった役だったと思います。

今回もそうです。新海監督のことも、アニメも大好きなので、僕が演じることで掘り下げられる、追求できることがあったのではないかと思います。僕は、マンガも大好きで、『3月のライオン』や『バクマン。』でも語りたいことがたくさんあるんです。

やはり好きなことが多いということは、それだけ俳優業にも役立つことが多いですし、気質的にオタクで良かったと思っています。

好きな役を追求できる興味とエネルギーが自分にある

――好きなことを公言していることで、それを仕事に引き寄せている感覚はありますか?

神木隆之介 
僕は、いろいろなことを好きになることは純粋に素敵だなと思っています。その一方で、好きなことがあってそれを詳しく知っていることで、よりクオリティの高い仕事ができる世界でもあると思います。

役で個人的にまったく興味がないことを好きになることもあります。例えば、料理をしたことがなくても料理人の役をやりますし、ゼロから勉強しなくてはいけないことがたくさんあります。

そういうなかで、知らないより知っている、好きでいることで、できることはあると思います。

そのひとつの漫画実写化であれば、一つひとつのお芝居をこうしたい、こう見せたいという、役を追求できる興味とエネルギーが自分にあることがよかったと思っています。

役者それぞれにベクトルがあって、みんな違うアプローチの仕方、持っているエネルギーがあると思います。

――今回は男女入れ替わりということで、女性の演技をすることが今までと違ったアプローチなのではないかと思うのですが。

神木隆之介 
とても楽しかったです。アニメを観ていると、男子が観ていても少しキュンとする音がありますよね。これぐらい音程が上がるとかわいらしいとか、ツボにくるような音とか。そんなセリフを目指しました。

――萌えのポイントを知っているからこそ、自分が思う萌え声を出すことができる。

神木隆之介 
萌えを知っていると言うとおこがましいですが(笑)、男子としてキュンとくるような言い方とか、かわいらしいなと思うような音程ということにはすごく気をつけました。

ちょっとしたかすれ具合だったり、とにかく三葉がかわいいなと思っていただきたいと思っていたので、そういう意味では、アニメが好きで良かったと思います。

――三葉役の上白石萌音さんの演技を盗んだり、観察したりはしたんですか?

神木隆之介 
僕の方は勝手に、上白石さんが三葉を演じたらこれぐらいかわいくなるだろうなということを想像しながら演じていました。上白石さんが、テレビドラマ『11人もいる!』(テレビ朝日系)を観てくださったので、僕がはしゃいで演じている部分を教えたりしました。

――俳優として今後チャレンジしてみたいことはありますか?

神木隆之介 
会社員の役をやりたいです。スーツもあまり着たことがないですし、会社勤めに憧れています。入社2年目で、上司もいるけど後輩もいる。そういう役をコメディで演じてみたいです。

(文:壬生智裕/写真:鈴木一なり)

君の名は

1000年ぶりとなる彗星の来訪を1ヶ月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高生の三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。都会への憧れを強く持つ三葉は、ある日、都会に住む男の子になる夢を見る。

一方、東京に住む男子高生の瀧も、自分が田舎町に住む女子高校生になっている夢を見た。繰り返される不思議な夢を通じて、いく度も入れ替わっていることに気付くふたり。戸惑いながらも、現実を少しずつ受け止めるが……。

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