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「キレることをやめたい」という悩みは、少しおかしく感じた。

好きでキレる人はいないだろうし、「キレさせるのをやめて」と夫や家族に向けて訴えるのなら納得はいく。はたまた相手に「ちょっとしたことでキレないでほしい」と悩む場合もあるだろう。

しかし『キレる私をやめたい~夫をグーで殴る妻をやめるまで~』(田房永子/竹書房)は、「自分がキレてしまうこと」に苦しんでいるのだ。「怒りの感情を抑えられない」「爆発させてしまう」ということに。

著者は過干渉で「毒親」とも言える母親との確執と葛藤を描いた『母がしんどい』で一躍有名になったマンガ家。

この著者のコミックエッセイは深刻な話題を扱っているのに、端から見ると少しファニーで笑ってしまうことが多く、けれど胸に迫る場面があり、読後は「そういう気持ち、ある」と大いに共感してしまう。

個人的に今一番気になっているコミックエッセイの書き手だ。

そんな彼女の新作は「キレる私をやめたい」。これはさすがに共感できないかと思いきや、全く、そんなことはなかった。

著者の田房永子さんは「私って普段はとても温厚な女なんですよ」とのこと(実際、他のコミックエッセイを拝見している限り、和を乱すことを嫌うような方に見える)。

しかし、「時たまモーレツにイライラすることがあって」、感情を抑えようと思っても爆発してしまうのだ。その矛先は主に旦那さん。自分は朝ごはんの支度をしているのに、夫がぐうぐう寝ていると、

「オイッ!!起きろコラァァァ!!」

「おめぇが起きねぇからだろ!!」

と、怒鳴り散らし、挙句の果てには、旦那さんのために作っていたスムージー(野菜ジュース)を流し台に叩きつけてぶちまけてしまう。

「野菜ジュースなんで飲んでくれないのォォォ」と夫に泣き叫び「自分がぶちまけたんだろ!?」と引かれる。その後は「本当はキレたくない」と自己嫌悪に陥る。「ずっと、この自分のキレる癖がイヤだった」という。

と、34歳まではこんな風にキレていたが、35歳の現在、全くキレなくなったそうだ。

本書は「キレまくる」著者の歴史から、四苦八苦、試行錯誤しながら、「キレなくなった」現在までを一冊にまとめている。

怒りを爆発させてしまうのは夫に対してだけではなく、母親や元カレにも発狂したようにキレてしまっていたそうだ。遂には幼い我が子にまで「イラッ」としてしまう。

自分の暴力に対する夫の抵抗(腕をギュッと掴まれる)に混乱して、警察を呼んでしまうことすらあった。「このままじゃマズイ」と田房さんは様々な解決方法を試みる。「箱庭セラピー」や「精神科への受診」を行うが、効果はない。

だがある日、図書館で借りた、たくさんの心理療法関係の本に書かれていた「ゲシュタルト療法」に出会う。これが田房さんの転機となる一冊だった。

ゲシュタルト療法とは心理学や哲学の手法を取り入れたセラピーで、「いま」「ここ」に自分がいることを強く意識することで、自身を見つめ直す作業を行うものだ(具体的な方法は実際にワークショップに通った田房さんが書いているので、詳細は本作にゆだねる)。

そのゲシュタルト療法の結果、「夫へのキレはお母さんへの怒りだったのかも」とボンヤリ思うように。

悩みを抱えている人の「状況」ではなく、その人がどう感じているのか、どういう気持ちなのかという「心」に注目することで、人は癒されるということを知った田房さんは、自分自身の心が深く傷ついていたことを知り、少しずつ「キレてしまう」ことを克服することができたのだ。

「キレ」の大小はあると思うが、ヒステリーを起こし、その後、自己嫌悪に陥ってしまう方、もしかしたら多いかもしれない。一人で悩んでいないで、この本を開いてみてはいかがだろうか。

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