お父さんって、とっつきにくい存在じゃないですか?

なにせ世代も価値観も違いすぎて、共通の話題が少ないんです。
まず、真面目さ故か頑固なタイプのお父さんはなかなかコミュニケーションが取れません。かといっていくらフレンドリーなお父さんでも、自分の恋人の話をあけすけに出来るほど柔軟な人は少ないでしょう。当然のことですが、人生におけるステージが違いすぎて雑談が成り立たないことのほうが多く、共通項が少なすぎて疎遠になっていくものです。

かくいう私も「そんな父とどういう距離感で接したらいいのか分からない」、そんな思春期を背負ってきた女子の一人です。

私の家は典型的な昭和の頑固お父さんで、仕事はきっちりするし、家族の行事にもしっかり参加するのですが、現実的な性格で注意もとにかく厳しい。
子供だった私はすぐに「お父さんって本当に優しくない!!」と息巻いていました。
海外のホームドラマなんか見た日には、アメリカのお父さんは皆優しくて話を聞いてくれてハグしてくれるのに!というスイーツ脳を炸裂させたものでした。

熟年離婚、妻の浮気というワードを頻繁に見かけるようになって・・・

熟年離婚というキーワードが世に広く知れ渡ったのは、何といっても2005年のテレビドラマ「熟年離婚」がきっかけだと思います。ちょうど10年くらい前ですね。
人というのは不思議なものです。ネット主流の現状ほどではないかもしれませんが、ドラマなどフィクションであっても、大衆に広く認知される形で「そういう人もいる」ということを知ってしまうとします。すると「そういうことをしてもいいんだ」という選択肢が追加されてしまう人も少なからずいるのです。

私も例にもれず、一見横暴で普通のオジサンに見える父のことを嫌になることはないのかな?なってしまっても責めないのにと母に質問をしてみました。

「お母さん、お父さんと離婚しようと思ったことないの?」


今思うと、生活費を自分の養育にあててもらいながら本当に恩知らずな一言だったと思います。しかしこのときの私は大真面目でした。そしてその時、初めてお父さんとお母さんの知られざる絆を話してもらうことになるのです。

お母さんの人生で最も悲しかったこと

「お母さんの人生で一番悲しかったのは、子供を流産してしまったことなの。」

少しの間があって母が話し始めました。
私はまだ子供をもつ、ということが実感ができなかったので「悲しそうだな」位の感覚しか理解できていなかったように思います。

「あなたやお姉ちゃんを授かる前にね、ついこの前までおなかにいて男の子だってわかっていた子が突然いなくなってしまったの。」

お母さんは声を細くしながら続けます。「あなたとお姉ちゃんのことは愛してる、でも誰がいるから誰が居なくていいという言葉でこどもは片付けられない。」という話から始まり、流産のあとほとんど食べられなくなって痩せていったことや、自暴自棄になったことを話してくれました。

その時そばにいて話を聞けたらどんなことが言えただろう、と想像しながら話を聞いていました。そしてお母さんをたくさん外に連れ出して、どんどん楽しいことをして忘れさせてあげたらなあと浅はかなことを考えていました。

辛い日々が続いた時、お父さんからドライブに誘われたそうです。
同居のお姑さんもいない二人だけの空間でお母さんはポツリと離婚について口にしたそうです。

「私ではあなたに家族を作ってあげられないかもしれない。」

そう言いながら同時に、「今回生まれなかった子の事をとても忘れることはできない」と思っていたのだと言います。その頃の母は新たに子供を授かるどころか、生きる気力もない様に見えるほど痩せているのが写真で分かりました。

母は父と離婚をして、相応しい人と結婚させてあげたいと思い、覚悟を決めていたそうです。その時父が車を走らせながら、緊張していたのか母の方を見ないまま話し始めたことを今でもはっきり覚えていると伝えてくれました。

「子供がいなくても、仲の良い夫婦はたくさんいるよ。僕は父親に成るその前に君の旦那さんになりたかったんだから、もし子供に恵まれなかったとしても不幸せでもなんでもない、君とずっと仲の良い夫婦になりたいよ。」

父はそんなアメリカのホームドラマで妻を口説くいつまでもセクシーな夫みたいな真似が出来るような人ではありません。普通の普通のオジサンです。甲子園を見ておならをするような、そんなオジサンです。がさつで、うるさくて、厳しいそんなオジサンだと思っていました。
この話のしめくくりに母は私にこう言いました。

「あなたたちのお父さんはね、私にとっては世界で一番の彼氏なの。お父さんである前に恋人なのよ。あなた達にも、そんな人と家庭を築いていってくれることを願っているわ。」

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