リオデジャネイロオリンピックの男子400mリレー決勝で、日本新記録&アジア新記録で史上最高の銀メダルを獲得した日本代表。世界も驚く激走に日本中が歓喜に包まれました。

たくさんのメディアでも報道されているように、今回の快挙の裏にあるのは、世界一とも言える「バトンパス」の技術。しかし、あくまでそれは1つの要素に過ぎません。

本記事では、今回日本代表が歴史的な“銀”を獲得できたバトンパス以外の理由」を探りたいと思います。

1. “個の走力の足し上げ”でも史上最強のメンバー

北京五輪の400mリレーで史上初の銅メダルを獲得、長らく日本の短距離界を牽引してきた朝原宣治さんは今回の結果を受けて、自身のFacebookでこうコメントしています。

多くの人が日本のバトン技術がこの結果を生んだと言いますが、私は選手全員の走力が世界のトップ選手に並んでいたと見ています。もちろん加速走なのでバトンの受け渡しのタイミングや技術も関係していますが、あのタイムと順位を出すには走力がないとできないことです。

出典朝原宣治さんのFacebookより

間違いなく、今回のメンバーは単純に走力だけを見ても歴代最強でした。4人の自己ベストを並べると以下の通り。(カッコ内は記録を出した年月)

山縣亮太:100m 10秒05(リオ五輪準決勝)
飯塚翔太:200m 20秒11(2016年6月)
桐生祥秀:100m 10秒01(2013年4月、2016年6月)
ケンブリッジ飛鳥:100m 10秒10(2016年5月)

これまでの日本代表でいえばエース級の走力を持った選手が4人揃っています。しかもそれぞれが自己ベストをマークしたのはすべて今年。最強メンバーが絶好の状態でオリンピックイヤーを迎えていました。

2. ピタリとハマった“適材適所”な走順配置

総合的な走力アップに加え、今回はメンバーの強みを活かした走順配置もピタリとハマりました。

まず、1走の山縣選手スタートから前半の走りに関しては紛れもなく世界トップレベル。その意味で距離が少し短い1走には本人も強い自信を持っていました。

2走の飯塚選手は200mを専門としていることからも分かる通り、加速走が得意。大学1年時からリレーでは爆走を披露しており、早くから日本代表のアンカーを期待される存在でした。

3走の桐生選手は驚異的な回転力を活かしたピッチ走法が特徴で、本来カーブ走は大得意。決勝でも躍動感ある走りで一気にジャマイカに追いつきました。

そして、4走のケンブリッジ選手は今年の日本選手権で山縣選手・桐生選手に競り勝ったことからも分かるように、ここ一番での勝負強さを持っています。最もアンカーにふさわしいタイプと言えるでしょう。

単純に4人の100mの自己ベスト合計すると、ジャマイカ38秒89、アメリカ39秒12に対し、日本は40秒38。陸上短距離の世界では1秒以上の差は絶望的とも言えますが、日本チームはバトンワークはもちろんのこと、このように戦略的な適材適所でその牙城を打ち崩したのです。

3. 走力や技術を超えた“チームとしての総合力”

また、そもそも以前から日本にとってリレーはお家芸的な側面がありました。オリンピックや世界選手権において、個人種目の成績が振るわなかったメンバーも、リレーになると途端に息を吹き返したような走りを見せるのです。これはなぜでしょうか?

リレーという競技は、単純な走力や技術を超えた総合力が反映される種目だと思います。メンバー間の絆、コーチや他選手のサポート、応援による雰囲気作り…そんなチームとしての熱量の総和が競技成績に表れるのだとしたら、日本がリレーに強いのもうなずけます。

桐生選手のコーチである土江寛裕氏のレース後コメント

レース後、選手のコメントは周りへの感謝に溢れていました。個人での戦いに見られがちな陸上競技ですが、このようにチーム一丸となって戦う姿勢が日本のリレーをお家芸にしているのだと思います。

“東京”に期待せずにはいられない

数十年前まで、体格面で不利な日本人がスプリント種目で海外選手に勝つ未来など、全く想像できませんでした。しかし、今回のオリンピックで日本代表は万全の状態のアメリカを破り、一気にそれが現実になりました。

今回快挙を成し遂げたリレーメンバーは、25歳の飯塚選手が最年長という若いチームです。ボルトは来年の世界選手権後に引退することを宣言していますので、4人がさらなる成長を遂げた東京オリンピックでは、今回を超える結果(=金メダル)を期待せずにはいられません。本人たちも今は確かな目標として「金」を見据えています

さらに、世界のトップに近づいたという実体験から心理的な壁が取り除かれ、これから一気に日本人選手の100m9秒台が続出する可能性もあります。東京オリンピックに向けて、日本スプリント界の動向が本当に楽しみです。

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