■男性か女性か

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あなたはこの選手が男性に見えますか。女性に見えますか。
選手が五輪に出場する際には、男性なのか女性なのかを確認し、どちらの性別で競技に出場すべきなのかの判断が入ります。

男性は女性より身体的能力が優れているため同じ競技に出場することは公平性に欠けるとみなしているスポーツがほとんどです。当たり前のことのように思いますが、スポーツ界における男女の境界線は選手たちと運営側を悩ます大きな問題となっています。

■女性であるはずのキャスター・セメンヤ選手

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上の写真で紹介した選手は南アフリカ代表のキャスター・セメンヤ選手です。彼女は女性として陸上競技に出場する選手ですが、性別の問題に悩まされた選手の一人でした。

・南アフリカの金メダリスト

キャスター・セメンヤ(Caster Semenya、1991年1月7日 - )は、南アフリカ共和国の陸上競技選手。2009年ベルリン世界陸上の金メダリストである。
セメンヤは、800mを得意とする南アフリカの女子中距離選手である。2012年ロンドンオリンピックの開会式では南アフリカ選手団の旗手を務めた。

出典 https://ja.wikipedia.org

彼女は南アフリカを代表する素晴らしい選手で金メダリストでもあります。ロンドンオリンピックで南アフリカ選手団の旗手を務めるほど本国でも人気の高い選手です。

・女性なのにいじめられた過去

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そんな彼女には辛い過去がありました。

祖母やコーチによると、男性のようなルックスであることから子供の頃からいじめられ、何度も性別を疑われていたという。

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自分では自分のことを「女性」と認識しているのに、見た目が男っぽいことから周りからいじめられた過去がありました。そんな逆境の中でも優れた身体能力を活かして陸上選手になり、世界陸上やオリンピックで金メダルを獲得する素晴らしい選手に成長したのです。

・国際陸上競技連盟から性別を疑われた

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しかし、そんなセメンヤ選手に疑いの眼差しが向けられました。国際陸上競技連盟を始め、一緒に競技に参加していた選手からも、あの体つきは男ではないのか…という疑いをかけられたのです。

世界陸上での金メダル獲得後、前回大会の金メダリストで2位のジェネス・ジェプコスゲイ(ケニア)に2秒以上の大差をつけ今季世界最高のタイムで圧勝したことや、筋肉質な体格、低い声などから性別を疑われ、国際陸上競技連盟 (IAAF) は医学的な調査を始めた。

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・子宮と卵巣がなく、体内に精巣がある

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オーストラリア紙シドニー・モーニング・ヘラルドなどによると、医学的検査の結果子宮と卵巣が無く体内に精巣があり、通常の女性の3倍以上のテストステロン(男性ホルモンの一種)を分泌していることが判明し、両性具有であることが分かったと報じられた。

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医学的な調査の結果、なんと彼女は両性具有であることが判明したのです。

・男でも女でもある両性具有

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では両性具有とは何なのか。概要をご紹介します。

両性具有(りょうせいぐゆう)は、男女両性を兼ね備えた存在の事を指す。

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・医学的には性分化疾患

両性具有とは別名半陰陽またはインターセクシュアルとも呼ばれ医学的には性分化疾患といわれています。男性と女性を兼ね備えた存在で、両方の体質を中間的に持っている場合や、遺伝子の性別と肉体的な性別が反対の場合のことをいいます。

両性具有とは個々によって症状も様々で60種類以上の疾患群があります。両性具有といっても全員が両方の性腺を確実に持っているわけではなく、染色体が合っていなかったり、内外の性器の発達が不十分だったりと症状は様々です。

出典 http://ninshin-syussan-iroha.com

身体は男性だけれど心は女性であるといった、自分の体の作りに違和感を感じる「性同一性障害」という疾患を耳にすることがあります。しかし両性具有の場合、身体が男性と女性の中間的作りになっている症状なのです。

・なぜ両性具有になるのか

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原因は様々で解明されていない場合が多いものの少なくとも男性ホルモンが関係しているといわれています。お腹の中の赤ちゃんの外性器の成長は遺伝子や染色体が関係するのではなく男性ホルモンの分泌によって完成していきます。

外性器ができ始める時に男性ホルモンが働くと男性になり、男性ホルモンが働かなければ女性的な外性器ができます。この母体から発生する男性ホルモンの分泌が異常を起こすことで両性具有になります。

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まだ科学的に解明されていないことも多い両性具有。一言に両性具有と言っても症状は人によって異なり、性にかかわる非常にデリケートな疾患です。

・女性だと主張するセメンヤ選手

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男性ではないかと疑いをかけられ、科学的には両性具有だと調査結果が出たセメンヤ選手。しかし本人の心は自分を女性であると認識しています。そんな中、周りから「女性ではない」と責め立てられたらどうでしょう。

競技中の彼女は確かに勇ましく男性的に見えますが、彼女が優しく微笑む表情は女性的でもあります。彼女が女性なのか男性なのか、その判断は非常に難しいことだということを改めて感じさせられます。

・人権の侵害ではないか

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この疑いに対して、議論が行われました。彼女の母国である南アフリカは「性差別」「人種差別」ではないかと彼女を援護しました。白人の女性らしさを基準に性別を判断しているのではないかという声も上がりました。また、本人もこれはアスリートとしての権利と人権を侵害する行為だと心を痛めました。

・セメンヤ選手は女性として競技に出場することが許可された

IAAFは「人為的なものではないためセメンヤの金メダルが剥奪される可能性は無いだろう」としているものの、過去に同様のケースで4人が競技生活を断念するよう求められている。

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そして国際陸上競技連盟は、彼女の大会出場を許可する意向を示しました。

・無事にリオ五輪に出場

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彼女は2016年、リオデジャネイロ・オリンピックに無事に出場することが叶いました。8月18日に行われた女子800m準決勝を彼女は1位で突破しています。21日に行われる決勝で彼女がどんな走りを見せるのか世界中から注目が集まっています。

・性別の悩みを抱える選手は彼女だけではない

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オリンピックにおいて性別の問題を抱える女性アスリートは彼女だけではありません。

■デュティ・チャンド選手(右)もその一人

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インドの陸上選手であるデュティ・チャンド選手もその一人です。彼女は昨年、テストステロンの数値が高すぎるとして五輪へ女性として出場する資格がないと判断されたのです。

・テストステロンは男性ホルモンの一種

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テストステロン(testosterone)は、アンドロゲンに属するステロイドホルモンで、男性ホルモンの一種。
作用:筋肉増大。骨格の発達。

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国際オリンピック委員会(IOC)は2012年に、血中のテストステロン濃度が1リットルあたり10ナノモルを超える場合は女性として出場できないという規定を採用しました。以前はDNA鑑定を行っていましたが、Y染色体の有無だけでは男女を識別するのは難しかったため血液検査を採用することとなったのです。

・本当にテストステロンの濃度で性別を判断してしまっていいの?

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しかし、これがまた新たな物議を起こしました。テストステロンの量で男女を識別してしまって本当にいいのかということです。

チャンド選手は裁判を起こし、裁判では「テストステロンが多いアスリートは陸上競技にて大きな優位性があるという科学的根拠を2017年7月までに提出すること」「人間の性は単純に二分できるものではない」としてIOCの性別判定を認めませんでした。

結果、チャンド選手の問題が解決するまではテストステロンでの性別判定は行わないとして、IOCも判断を下しています。チャンド選手はリオ・五輪に無事に出場し女子100mで50位という成績を残しました。

・ホルモン治療の選択肢もあった

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チャンド選手にはホルモン治療をしてテストステロンの量を抑制するという選択肢もありました。しかし、彼女はそれをしませんでした。「自分は自分のままでいたい」という思いがあったからです。自分の性別が、なぜホルモンひとつで判断されなければいけないのか、本人ならば疑問に思ってしまうのもわかります。

■エワ・クロブコフスカ選手…子供も産めるのに女性ではない

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オリンピックの性別判断の問題は何十年も昔から続いています。
上の写真はエワ・クロブコフスカ選手です。1964年東京オリンピックの100mでは銅メダルに、4×100mリレーでは金メダルを獲得した選手でした。

・「詐欺師」と呼ばれ金メダルを返却

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1967年にクロブコフスカはキエフでの競技会において、ドーピング違反と疑われる。その後、染色体検査で女性ではないと診断され競技を続けることができなくなった

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彼女は染色体異常のため女性ではないとみなされメダルを剥奪されてしまいました。その際に彼女は周りから詐欺師と非難されこれに本人は大きなショックを受けたと言います。

しかし、翌1968年、男の子を出産すると彼女が女性であったことをIOCも認めます。そして1999年、メダルを彼女に無事に返却されました。

■スタニスラワ・ワラシェビッチ選手…死後、両性具有だと判明することも

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ポーランド代表のワラシェビッチ選手は1932年のロサンゼルス五輪の女子100m走金メダル、ベルリン五輪。女子100m走では銀メダルを取得した選手です。

・見た目は女性だが睾丸が備わっていた

1980年にワラシェビッチは強盗に襲われ殺された。ところが検死の際、ワラシェビッチは実は両性具有者であることが判明した。見た目は女性であったが、体には睾丸も備わっていたのである。1992年まで国際陸連はワラシェビッチのような両性具有者は女性の競技に出場することが許されていなかった。

ワラシェビッチが残してきた記録を抹消するか否かという議論が発生した。しかし国際オリンピック委員会と国際陸連はともに抹消するといった決定はせず、ワラシェビッチの残した記録は現在まで残っている。

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なんと、オリンピック出場当時は判明していませんでしたが、彼女の死後に両性具有であったことが判明したのです。スポーツの歴史ではこういった問題が数多く発生しており、性別問題はオリンピックでも大きな悩みの種でした。

■「裸での身体検査」オリンピックの性別判断の歴史

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オリンピックでは「男性が女性に成りすます」行為が以前から問題となっていたことから、1966年に女性アスリートは身体検査を義務づけられるようになりました。女性は裸になって身体検査を受け外性器をチェックされ、女性であるかどうか判定されました。これに性差別、人権侵害として多くの批判を受けすぐにこの検査方法は廃止になったと言います。

その後導入されたのが染色体の検査です。しかし、これもまた性別判断基準としては不十分で多くのアスリートから非難を浴びることとなりました。

■IOCも頭を悩ます性別問題

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IOCはスポーツの公平性を保つために、性別の差や体格の差などを考慮し競技のルールを規定しています。レスリングや柔道に○○kg級とあるのは、体格の差での公平性を保つための配慮です。それと同じように一般的に男性の方が女性よりも身体的能力に優れているため、性別についても考慮しなければなりません。

しかし、性別を判断する基準は単純ではなく非常に複雑です。DNAやホルモン検査で判別がハッキリとできていないのが現状なのです。

また、多様性を重視する時代になった今、人を性別で判断することは差別につながるという意見もあります。

・性別とどう向き合うべきか

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この問題について皆様はどう思われましたか。

男女の違いは受け入れなければなりませんが、スポーツは公平で平等であるべきもの。障害を持つ方や、両性具有の方を含めスポーツが人々にとって公平で平等である必要があるという考え方も持っていなければなりません。非常に難しい問題ですが、IOCがこの課題に向き合っていかなければならないのも確かです。

2020年の東京オリンピックには性別判断の基準が改定されているのか、今よりも正しい基準で公平な大会となっているのか気になるところです。

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