記事提供:おたぽる

BABYMETALの勢いが止まらない。ここ数年、海外のフェスを渡り歩き、ついには日本で東京ドームでの公演が開催されるほどまでにビッグになった。

それまでどこかダサイと思われがちだったヘヴィーメタルというジャンルに光を当てた彼女たちの功績は非常に大きいだろう。彼女たちの影響か、メタルを軸にした楽曲を歌うアイドルグループは増えていて、例えばおたぽるでもよく取り上げるアリス十番もそれに該当するだろう。

この水面下のメタルブームだが、アイドル以外にもメタルを冠につけ、活動している人物がいる。それが“ヘヴィーメタル芸人”、橋山メイデンだ。

いまでこそ『アメトーーク!』などで●●芸人なんて言葉があるが、彼はヘヴィーメタル芸人として10年ものキャリがある。そして、ビッグなバンドからマイナーなローカルバンドライブまで足を運ぶメタルオタクでもあるのだ。

BABYMETALのメタルアイドルのブームに編集部も便乗し、今回はメタルネタを交えながら橋山メイデン氏に芸人のあれこれを訊いてみた。

――芸名の「メイデン」は当然Iron Maiden(※編注:イギリスのメタルバンド)からですか。

橋山メイデン(以下メ):もちろんです。

――見た目もNWOBHM(※編注:音楽ムーブメントの一つで、New Wave Of British Heavy Metalの略)みたいで、コテコテなメタルファンって感じですね。

:衣装は紆余曲折を経ているんです。初期はTシャツにジーパンみたいな初期メタリカみたいな感じにしてたんです。

だけどこれだと本当にメタルマニアじゃないと分かりにくくて、それで周囲からのアドバイスもあって、メタル好きをもっと全面に出すにつれ、いまのスタイルに落ち着きました。

――芸歴10年となると、メタルバンドだったらそれなりのキャリアになりますね。

:そうですね。バンドならもうアルバムが4枚は出ていて、ベスト盤なんかも出しているかもしれません(笑)

――今日はお一人ですが、実際はコンビなんですよね。

:はい。コンビ名はメイデン玉砕といいます。

――コンビ名の由来は何かあるのですか。

:ぼくはへヴィーメタル芸人とうたっていますが、相方は日本軍とか軍艦が好きなんですよ。それで何事にもぶっこむという精神でやっていこうってことで、メタル芸人であるぼくの芸名とぶっこむ精神で、「メイデン玉砕」としました。

――玉砕って言葉は人によっては敏感に反応しそうな言葉ですね。

:そうなんですよ。だから怒られたら変えるつもりだったんですが、これまでコンビ名に対して何かを言われたことがないんです。だからTV番組もそのままの名前で出ています。

――ちなみどう変えるか決まっているのですか。

:玉砕の「砕」を「祭」にする程度の変更です。吉本の大先輩である雨上がりさん(※編注:雨上がり決死隊)もNHKに出演する際は「死」が「志」に変わっていたりするんです。

まぁ、ぼくらがNHKに呼ばれたことはないので、いらぬ心配かもしれませんが。

■吉本芸人には他にもメタルファンはいる

――私自身もメタルの大ファンで、なんとなくメタルとお笑いって相性が良い気がするのですが、実際どうですか。

:メタルそのものをネタにしてもなかなか笑いは取れませんね。普通の若い子は知らないですから。

元AKBのセンターはあっちゃんだけど、COB(※編注:Children Of Bodomのこと。フィンランドのメタルバンド)のセンターもあっちゃんだよねー(※編注:COBのリーダーのアレキシ・ライホのこと)とか言ってもクスリとも笑ってくれないです。

わざわざアルバムジャケットをパネルにして見せてもピンとこないみたいで。

――確かに何も知らない人からすればアレキシを出されてもポカンとするでしょうね(苦笑) とはいえ世間ではいまメタルに注目が集まっているというか、BABYMETALが大人気ですよね。メタル芸人としては彼女たちのことをどう見ていますか。

:芸人というより一ファンとして、バックの演奏はものすごいし曲も良いと感じますが、メタルブームが再燃する! とかは思えないですね。

というのも、ぼくらのような生粋のメタルファンが彼女たちの音楽を聴くことがあっても、彼女たちのファンになってからああいう音楽を聴くようになった人たちが、最終的にメタルを聴くようになるとは思えなくて。

――実に冷静なメタルファンっぽい分析ですね。吉本には他にメタル好きな方はいるのですか。

:多くはないですがいますよ。ダイノジさんとか、レイザーラモンRGさんとか。RGさんはバンドでベースもやられてるみたいです。千原せいじさんとかもメタル好きだって聞いたことはあります。

――ご自身は何か楽器がひけるのですか。

:キーボードをやっていたんですよ。それで中高生のときにバンドを組んだこともあります。ギターなんかも練習したんですが、挫折しましたね。

――芸人になろうと思ったのはいつ頃ですか。

:小学生の頃からお笑いが好きだったんですが、中学のとき爆笑オンエアバトルを観て芸人になろうと思ったんです。すぐにでも芸人の道に進みたかったんですが、親が大学受験まではしろということだったので、高校を卒業して明治学院大学に進みました。

だけど大学では周囲にメタル好きが全然いなくて、なんとなく自分が浮いちゃってたんですよね。探せばいたんでしょうけど、なんとなく自分の居場所がない気がして、こんなことやってる場合じゃねぇ! と一念発起して3週間で退学しちゃいました。

それから1年後にNSC(※編注:吉本総合芸能学院のこと。芸人養成所)に入学したんです。

――入学金とかどうされたんですか。養成所に入るのって安くないですよね。

:大学をやめたあと色々バイトたくさんして貯めました。シュウマイをひたすら電車に乗って運ぶバイトとかね。

――NSCでの同期は誰がいますか。

:有名なのはジャングルポケットとか、渡辺直美です。といっても同期が600人くらいいて、個人的に顔見知りとかではないですね。

――600人! そんなに同期っているんですね。メイデンさんから見て、なぜ彼らは売れたと思いますか。

:才能ですね。渡辺直美もジャンポケも養成所時代からとにかく面白かったんですよ。特にジャンポケの斉藤はバケモノって思いました。

――お笑い芸人の養成所ってどんなことを学ぶのかイメージがつきにくいのですが、実際のところどうなのですか。

:間の取り方とかボケ方とか、そういったお笑いの技術的なことは何も教えてもらえませんね。そういうのは自分で吸収していくしかないです。

――では何をしに行くのですか。

:基本的には相方を探す場所って感じです。お笑いの歴史なんかを学ぶ授業があったりもするんですが、基本的には作ったネタを披露するのが授業になるんですよ。

授業は毎日あるんですが、大学みたいに1日に1コマ90分しかなかったりします。だから時間は死ぬほどあって、空いた時間にひたすらネタを作っては授業で披露するってことを繰り返すんです。

ただ、芸の世界のことなので上下関係はめちゃくちゃ厳しいじゃないですか。だから礼儀については色々教わりました。

■吉本のギャラは本当に安いけどメリットも多い

――デビューに至る経緯はどうでしたか。

:経緯という経緯はないんですよ。事務所と契約書を交わすなんてこともなかったです。NSC卒業と同時にそのままなんとなく所属になるみたいな。

――吉本はギャラが安いっていうのは、よくTVやネットで芸人の口から発せられますが、実際のところどうですか。

:本当に安いですよ。吉本って恐ろしいことに、ギャラの配分が不明瞭なんです。給与明細に芸人の取り分だけの金額しか書かれないんですし、ギャラの取り分の取り決めについて話したこともないんです。

だから、よく事務所が9で芸人が1なんて言われていますが、実際は9.5対0.5かもしれないです。他の事務所だとそこは明確になっているそうなんですが……。

――Youtuberのような活動もされていますよね。動画の広告収入なんかも吉本の手が入るのですか。

:前は個人でやっていたんですが、事務所に嗅ぎつけられて、いまは吉本のアカウント内でやっています。だから広告収入がどれだけあるか分からなくて、しかもこっちから言わないと支払ってもくれないんですよ。

前に「そろそろ動画の収入あるんじゃありませんか」って恐る恐る訊いたら500円入金してくれました。

――500円(笑) ちなみにこれまで芸人として稼いだギャラはいくらくらいですか。

:総額100万円ないかもしれません。いまでも芸人としての収入は月にせいぜい1万円ですから。

――実に厳しい世界ですね。でも、NSCの存在もあり芸人を志す若者が増えているじゃないですか。そういった若い人たちにかけるアドバイスってありますか。

:前だったら芸人を目指す人がいたら頑張れと言っていたんです。でもいまはネタ番組もないし、お笑いファンも減っているかと思います。だから芸人を目指すのはやめておけって言いますね。

TVに出られても、規制が厳しくてあんまり変なことできなかったりもするんですよ。例えば局によっては乳首引っ張ったり、上半身裸になるのもダメだったりもするんです。まぁ、本音はこれ以上ライバルを増やしたくないってのもありますが(笑)

――ギャラが安いのであれば、吉本に所属するメリットってどこになるのですか。

:吉本自体がやっぱり大きいので、活躍されている先輩が多いことですかね。その先輩と仲が良ければ仕事で呼んでもらえたりもします。

それに、オーディションとか仕事の話も他の事務所に比べたらかなり多いですし、売れたらギャラの配分が上がるので、それがメリットとして大きいですね

――吉本の芸人ってことで女性にもてたりしないんですか。

:どうでしょうね。ぼくは芸風にも出してますが、いまだに童貞です。DTです。Dream Theater(※編注:アメリカのメタルバンド)ですよ。

――(笑) ではDream Theaterを脱退しようとは思わないのですか。

:芸人って童貞が多いんですけど、けっこうファンとかで捨てるって聞きます。でもぼくはいまだ守り続けています。Wackenくらいの大きなステージじゃないと捨てたくないです。

――メタルファンじゃないと分からない例えですね。今後の芸人としても目標を教えてください。

:もちろん売れることですね。メタル芸人をうたっているので、やっぱり海外からも注目を集めたいと思っています。だから動画とか、芸風もそうなんですが、言葉が分からなくても見て楽しめるように心がけています。

売れている芸人って、面白いのは当然なんですが、きちんとチャンスをものにしているんですよね。だからぼくらもすきあらばつかまないと。

――若手芸人のブレイク登竜門となりつつある「新春大売出し!さんまのまんま」にも出たことありましたよね。そのときチャンスはものにできなかったのですか。

:驚くほど反響がなかったんですよ……(苦笑) チャンスをつかむのにもタイミングとかあるので、時期をうかがいながらいまの芸をもっと磨いていきますよ。

メイデン玉砕単独ライブ

「I AM MAIDEN -鋼鉄の笑処-」
日時:9月3日20:30-
場所:下北沢ろくでもない夜
料金:1,500円

橋山メイデンTwitter

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