14106」=「愛してる」。

この意味にピンとくる方はどのくらいでしょうか?携帯電話が普及する前に流行った「ポケベル」でのメッセージ。まだ数字しか送れない“ポケベル初期”のころに定着した暗号のひとつです。

「0906」「889」…遅れる、早く〜!なんてやり取り、あったなぁ。90年代から流行し始めたポケベルユーザーの中心となったのは女子高生で、現代でいうメールやLINEの先駆けといえる存在でした。

とはいえポケベルは1968年のサービス開始当初は、文字表示もなく、音が鳴るだけの一方的なサービス。オフィスを離れて行動することの多い営業さんへの連絡手段として普及し、利用者層が拡大していきます。90年代のブームと思われがちですが、その歴史は長いものでした。

NTTドコモによると、ピーク時は600万台の契約があったそう。ポケベルで繋がっている友達は「ベル友」と称され、ある時期にはこんな方々がイメージキャラクターとして起用されるように!

広末涼子さんに加藤あいさん!懐かしいポスターよ…。

そんなポケベルは、90年代後半から携帯電話・PHSが台頭すると利用者は減少。最後までサービスを全国展開していたNTTドコモも2007年に幕引きし、多くの人々にとってポケベルは過去の物となっていきました。

約10年前にサービスを終了していたポケベル。数字の読ませ方に苦労したり、仲間内だけの暗号を考えて連絡を取り合った日々が、ぼんやりと思い浮かぶかもしれません。

前略、いつも握りしめていた“ポケベル”。

今、724106(何してる)?

「はい、約2000台のポケベルが、今も稼働していますよ」

なんと、日本にはまだポケベルのサービスを提供する会社が2つ存在していました!その1つ、東京テレメッセージ株式会社代表取締役社長・清野英俊さんにお話を伺うことに成功。サービスを続ける理由や、ポケベルの電波が持つ意外な“可能性”が浮上してきました。

――東京テレメッセージさんのポケベルだけで2,000台も稼働していることに正直驚きの気持ちを抱きました。どんな方が使われているのでしょうか?

清野:利用者の多くは、企業や自治体、病院関係者の方ですね。緊急時などの連絡用として組織で持つケースが多く、個人で使われている方は少ないです。

――個人の方は少ないとはいえ、使っている方がそんなにいらっしゃるんですね。「新たに契約したい」というお話があることも…?

清野:2012年にあるホテルから「40台ほしい」という依頼がありましたが、それは5年ぶりの新規契約でしたね。外国人のVIPクラスが利用する超高級ホテルで、顧客が東京の安全性に不安を抱いていていたことが背景だったようです。東日本大震災の翌年でしたから…。

――なぜ、通信機器の中から“ポケベル”を選択されたのでしょうか。

清野:大災害時での宿泊客の避難誘導のためです。こういったケースでは、支配人からフロアごとにいる顧客サービス係に指示が出されますが、携帯やPHSがつながらなくなれば指示は伝わりません。かといって、係が持ち場を離れて支配人の元に行くのも危険です。

そういった事態を想定し、海外の本部から「日本にページャ(※ポケベルの別称)はないのか」となったのでした。そこで日本のスタッフが調べると、まだ日本にあったというわけで、弊社に連絡をいただいたのです。

ポケベルに使われる、280MHzの電波は「特別」

清野:ポケベルの利用者は、いずれいなくなるでしょう。私たちも、現在は新規のポケベル契約を募集していない状況です。ときどきお声掛けいただくこともあるのですが、なかなか導入に結びつかない部分もあります。現在は、以前から契約している方のサービスを継続している形です。

しかし、ポケベルで使われる280MHzの電波は、今後ますます利用されるようになります。というのも、280MHzの電波は、大災害時の通信手段として大変貴重なんです。電波の届く範囲がとても広く、建物の中にも到達しやすいという特徴を持っているんですよ。

大災害時には、携帯電話やPHSは使えなくなります。そのときに防災情報を伝える電波として、280MHzの有効性が注目され始めています。

――ひと口に電波といっても、周波数ごとに性質が異なるんですね。

清野:大きく異なります。到達性と浸透性の違いは基地局の数に表れています。携帯電話の基地局は東京23区内に数千ほど、PHSならその10倍はあります。これに対して、ポケベルの基地局は23区内に8つしかありません。それでも十分カバーできています

もし仮に東京で20時間の停電が起きた場合、携帯電話やPHSの基地局は非常に多いため、すべてにバッテリーを備え付けるのは不可能です。結果、災害発生時には混信が起き、その後は電池切れで使えなくなってしまう。

一方、ポケベルの場合は、23区を1つの基地局だけでほとんどカバーしてしまいます。しかも、基地局の1つは東京電力の屋上にあるので、そこで非常電源を確保しておけば23区での通信は可能。停電する可能性はとても低いんです。

ポケベルの電波は、まさにこれから真価を発揮する

――東京テレメッセージさんは、ポケベルサービスの他にも「280MHz」の電波を利用したシステムを開発されています。やはり、この電波の特性を最大限生かしたいということでしょうか。

清野:そうですね。もっとも重要なのは災害時です。たとえば東日本大震災のとき、なぜ多くの人が津波の犠牲となってしまったのか。私は現地に行って検証しましたが、津波警報が何度か発令されたものの、3回目の警報あたりから現地の人には届いていなかったんです。

災害のとき、被災地は停電や電波の障害で「情報が消える」んですね。一番情報を必要とするエリアに情報が届かないんです。東日本大震災の際、もし津波警報が最後まできちんと現地に伝わっていれば、多くの方を救えたのではないでしょうか。

――その点において、今後ポケベルの電波「280MHz」が有効になるということですね。

清野:はい、この電波はもっと使われるべきだと思っています。私たちも「280MHzデジタル同報無線」という防災ラジオを作って、災害時の情報伝達システムを構築・提案しています。280MHzの電波を使ってデジタルサイネージ(電光掲示板)に避難情報を出す自治体も現れてきたんですよ。

NTTドコモのサービス終了から約10年。その姿を消したと思われていたポケベルですが、「280MHz」という「なくてはならない電波」を掲げ、現在も人々のライフラインとして任務を果たしていました。

日常的に用いられなくなることだけが“衰退”ではない。使われ方は変われども、進化し続けていたポケベル。その揺るぎない価値を確かめるきっかけになる取材でした。

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