記事提供:R25

ロボット教師が人間に代わって子どもたちを指導する。早晩、そんな時代がやってくるかもしれない――。

アメリカや中国、韓国などでは学校の授業をサポートする“ロボット先生”が数年前から登場し、日本でも人工知能を駆使して数学を教える「未来型学習塾」が開校している。

「未来型学習塾」では、AIを搭載した端末「Qubena(キュビナ)」が生徒一人ひとりに割り当てられ、個々のレベルに合わせた授業を展開。各々の解答プロセス、理解度などをAIが収集・蓄積・解析し、使えば使うほど“生徒のことを理解した先生”になっていくという。

「そもそも、1人の教師がクラス全員を相手に教えるスタイルには無理があります。集団指導だと、理解不足の生徒がいてもわからないまま置き去りにされてしまいますから。

特に数学は積み上げ型の学問なので、一度つまずくと取り返しがつかなくなってしまう。解答をミスした時には間違いの原因を検出し、その子がわかっていない部分をしっかりやらせる。

人工知能なら、そのサイクルをマンツーマンで行うことができます」(未来型学習塾Qubenaアカデミーを運営するCOMPASSの神野元基CEO、以下同)

今後は数学以外にも教科を広げ、さらには子どもの学習塾だけでなく「大人の学びも含め、全世界の全ての人たちに僕らの教育システムを使ってほしい」と神野さん。メドは10年以内だという。

国内では他にも、慶應義塾大学が民間企業と共同でAIを用いた学習支援システムを研究中だ。クラウド学習システム「すらら」にAIを搭載し、先生の代わりに生徒と対話しながら個々の学習行動に合わせた適切なフィードバックを行う。

また、アメリカのジョージア工科大学でもIBM社が開発した女性型人工知能“ジル・ワトソン”が実験導入され、ティーチングアシスタントとして5カ月間、学生たちとメールなどのコミュニケーションを行っている。

なお、ジル先生が人間ではないことを知らずにやりとりしていた学生の大半が「(AIとは)気づかなかった」という。今後、“AI教師”はさらに進化・普及していくのか? 教育現場から人間の先生がいなくなる日はやってくるのか?

「結論から言うと、人間の先生がいなくなることはないでしょう。僕らはAIで教師の仕事を奪いたいわけではありません。むしろAIが代替できることはどんどんやらせて、空いた時間で人間の先生にしかできない問題に注力するべき。

たとえば、いじめの問題なんてずっと解決していないわけでしょう。問題だらけの教育現場を変えるために、人間はもっと力を使わないといけないと強く思っています」

近年は教師の長時間労働が問題視されている。確かに、AIの導入で負担が減れば、生徒一人ひとりの問題に向き合う余裕も生まれてくるだろう。なお、Qubenaを使えば、1学年分のカリキュラムを32時間で終わらせることが可能なのだとか。

学校で行う授業に比べ、じつに7倍のスピードだ。同社の導入実験では、スピードだけでなく受講者全員が学校平均点を上回ったという。

「教育現場はもっと学習の効率化を追求するべき。そして、そのぶん子どもたちに“生きる力”を学ばせてあげるべきだと考えています。たとえば、うちには空き時間を活かして塾にある3Dプリンタで棚を作った生徒がいました。

誰に教わるでもなく、自分でCADデータを制作してしまったようです。これからの時代は、そうした好奇心をもって何かを極める力が重要になると思いますし、それが大人になってから自ら新しい価値や仕事を生む力=“生きる力”につながるはずです。

AIで仕事がなくなる不安は教師に限りませんし、人工知能という言葉に対して不気味さを感じている人も多いと思います。でも、99%の職業がなくなるということは、新しい仕事も生まれるということ。子どもたちにも、そう伝えています」

そう遠くない未来、神野さんのいう“生きる力”を存分に蓄えた若者たちが社会に出てくるかもしれない。頼もしい反面、AIに恐怖するだけの大人はあっという間に淘汰されてしまうだろう。

AIによる教育革命は着実に進んでいる。現役ビジネスマンにとっても、決して無視はできない。

(榎並紀行/やじろべえ)

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