ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナー。今回も興味深いお話を伺ってきました!

出典Spotlight編集部

皆さんは、「LGBT」という言葉をご存知でしょうか。同性愛者、両性愛者、トランスジェンダーなど、性的マイノリティーである方の総称として使われています。

日本でもオネエタレントや、ジェンダーレス男子が取り上げられるだけではなく、一部の自治体で同性愛者のパートナー証明を発行するなど、以前と比べれば理解されるようになってきました。

さて、オネエと言われるMTF(男性として生まれるも、自覚している性は女性)の方は、メディアで取り上げられる頻度も高く、社会に広く知られるようになりましたが、オナベと言われるFTM(女性として生まれるも、自覚している性は男性)については、あまり知られていないのが現状です。

そこでFTMであることを公言し、オナベ芸人として活動しているペッパーボーイズ・前田かずのしんさんに、オナベの実態と性同一性障害についてお話を伺ってきました。

オナベについて、イチから教えて下さい!

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ーーオネエと呼ばれる方は、よくメディアでも取り上げられていますが、オナベの方はまだあまり認知が高くないように思えます。男性として普段の生活を送る上で、気づいたことはありますか?

前田:僕もですし、オナベ全体的に言えることなんですが、男らしさの定義が世間のイメージとずれている部分があります。

例えば、僕が憧れる男性はブルース・ウィリスなんですけど…極端に言うとハゲていることに男らしさを感じるんです(男性ホルモンが多いイメージがあるので)。でも、一般的な男性の多くは、むしろ「絶対にハゲたくない」と思っていますよね。

あとは、小柄なのに頭にガンガン剃り込み入れて、金髪にしてタトゥーを入れている人も結構います。僕はそういうオナベのことを「EXILE系オナベ」と呼んでいますが(笑)。

とにかく「男らしさ」というものを極端に捉えすぎているんですよね。オネエはノンケ(ストレートを指す言葉)の女性よりも女子力が高い人が多いように、オナベも「ノンケの男性よりも男らしくありたい」という人が多いんだと思います。

それくらい男性らしさを前面に出していった方が、面白いと僕自身は思うんですけど、世間的には尖ったように見えて扱いづらいのかもしれません。

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ーー性別はもちろん違いますが、オナベとオネエで全然違うなと感じたことはありますか?

前田:オナベのほうがプライドが高い気がしますね。その点、オネエは懐が深いというか、全てにおいて寛容な傾向があって、何を言われても明るく言い返すイメージがあります。

オナベの場合は、いじられた時にものすごく落ち込むか、本気で怒るかのどっちかなんですよ(笑)。

そういう部分が、オナベがメディアなどに出るにあたってのハードルになっているのかなと、僕は感じています。

オナベは女性にモテる!「オナベあるある」を聞いてみた

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ーーオナベの「あるある」があれば、良い機会なので教えて欲しいです。

前田:いくつかあるんですが…まず、改名する時に「優斗」「海斗」など、「斗」という漢字を使う人が本当に多いんですよ。

それからSNSに彼女とのノロケ写真をアップする人が多いです。男性であることを、広く知ってもらいたいという気持ちが強いんだと思います。

あとは、「俺」という一人称を入れたがりますね。例えば「海に行ってきた」という一人称を使わなくても成立するツイートを、あえて「俺、海に行ってきた」とツイートする。これもオナベに多い傾向です。ちなみに恋人のことは「ツレ」と呼びがちですね。

ーーなんだかヤンキーの雰囲気も感じるんですが…。


前田:そうですね。全体的にヤンキー文化が好きな風潮はあります。ヤンキーの荒っぽさに男らしさを感じているのかなと。

それと、女性にめっちゃモテます。

ーーえ、意外です!何か特別な理由があるんでしょうか?

前田:見た目の話でいうと、とにかくイケメンの人が多いです。それから女性としても、男性としても接することができるから、ノンケの男性よりも安心感があるんだと思います。

オナベは、元々女の子のコロニーにいた人間だから、ガールズトークの延長で話しやすいのかもしれません。

ーーどちらの気持ちもわかるというのは、オネエの方にも通じる部分ですよね。

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前田:あとは、犬を飼っている人が多いです。恋人がいても結婚するまでに障害が多いので、家族として犬と暮らす人が多いんですよ。ちなみにオナベがお付き合いする女性は、ノンケの方がほとんどです。

ーーすぐに結婚できるわけではないですもんね…。なんだかすごく納得できます。ちなみに、オナベのなかにはバストが大きい人もいらっしゃると思うんですが、ぶっちゃけ下着はどうしてるんですか?

前田:おそらくノンケの男性と変わらないと思いますが、下着はボクサーパンツなどを着用している人が多いですね。ただ、上に関しては「ナベシャツ」と呼ばれる胸を潰す下着が必須アイテムなんですよ。ちょっと高価ですが、通販で安く入手することもできますよ。

オナベの必須アイテム「ナベシャツ」

出典 http://www.nabeshirt.com

さらしのように胸のボリュームをおさえつつサポートしてくれる「ナベシャツ」。オナベだけでなくスポーツをしている人も愛用してるのだとか。

ーー初めてナベシャツの存在を知りました。結構高価なんですね…。こういった日常生活に必要なもので、困ることはありますか?

前田:靴に関してはサイズがなくて本当に困ってます。特に足が小さめの人や、足幅が広い人は、合うサイズを見つけるのが大変でしょうね。ジェンダーフリーシューズが今後販売されることを望んでます。

性同一性障害に気づくまで

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ーー前田さんは、いつ性同一性障害であると自覚したんですか?

前田:そもそも性同一性障害というのは、後天性のものではなく生まれた時から体と心の性が一致していないんです。とはいえ、自我が芽生えないと自覚のしようがありません。

僕の場合も2歳までは、親が選んだ可愛らしいドレスを着た写真が多いんですけど、3歳以降は海パンの写真ばっかりなんですよ。通っていた保育園は運動会で水着を着ることになってたんですが、女の子の集団の中で一人だけ海パンで参加してました。

記憶にはないんですけど、頑なに「水着は嫌だ。ウルトラマンと仮面ライダーの海パンがいい!」と言ってたそうで…当時の写真もあるので見てください。

出典前田さん提供

保育園の運動会の写真。中央の海パン姿の子が前田さん。

ーー本当だ…。この頃から男性の自覚があったんですね。

前田:おそらくそうだと思います。おままごとでも、お父さんやお兄ちゃんの役をやりたがっていたし。

本格的に性の不一致を自覚したのは中学の時です。男女それぞれに友達がいたんですけど、女友達を見る時に“普通の”友達として見れなくなっていることに気がつきました。

当時は、「性同一性障害」を知らなかったので、同性愛者なのかな?と悩んでいたんです。でも、悩む自分を肯定しつつ調べた結果、高校の時に性同一性障害という答えにたどり着きました。

カミングアウトした時の周囲の反応

出典前田さん提供

高校卒業時にお母様と一緒に撮影。

ーー性同一性障害だとわかった時、どんな気持ちでした?

前田:あれだけ悩んでいたことに対して、答えが出たという意味ではスッキリしましたね。まさにアハ体験でした。わかってからは病院を探すなど本格的に動き始めて、家族や周りの友達にもカミングアウトしました。

ーーカミングアウトした時の状況も聞かせてください。

前田:親に話した時は、少し泣かれました。ショックだったろうし…、特に父親に関しては、高校卒業後に芸人を目指して上京することと、性同一性障害とのダブルカミングアウトだったから、ちょっと混乱してたようです。最終的には理解してくれましたけどね。

母親は、なんとなく気づいていたみたいで、ショックは多少受けたものの、「あんたがやりたいことなら頑張れ」と応援してくれました。

友達に関しては、性別以前に「個性的な友達」として認知されていたから、肯定も否定もなくカミングアウト前と変わらず接してくれています。

「重くとらえすぎないで」

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ーー先日ある男子学生が、悪意をもって同性愛者であることを知人に暴露され、自殺してしまったというニュースがありました。カミングアウトしにくい人もいらっしゃると思いますが、前田さんの場合も言い辛かったんでしょうか?

前田:僕の場合は、カミングアウトしづらいとは思っていませんでした。そもそもセクシャルマイノリティについて、強い関心を持っていたわけでもなかったんです。

身長の高低や、痩せている、太っていると同じように、コンプレックスに感じつつも「個性」として受け止めていました。また、カミングアウトする時に「LGBTです」「理解してください」と話してしまうと、相手に押し付けることになってしまうと思ったんです。

だから僕の場合は、普段通りにありのままを伝えました。もちろん、相手によって反応も違うでしょうが、僕は幸いにも「このままの付き合い方でいいんだ」と思ってもらえました。

ーー同じような境遇の方にアドバイスするとしたら、どんなことを伝えたいですか?

前田:よく相談を受けるんですけど、重くとらえすぎだと感じることが多くて…。確かに今の法律や、世間体を考えたら理解されにくいし、結婚だって難しいから、将来を悲観しているんだと思います。

でも、「そんなに重く考えなくていいよ」と僕は言いたいです。むしろポジティブに考えて行動しないと、さらに奇異の目で見られて悪循環になってしまうこともあるから。

相談できる場所はたくさんあるし、同じ境遇の中でも明るい仲間の輪に飛び込んだほうがいいと思います。

前田さんがこれから目指していること

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ーー前田さんは、戸籍上の性別も変更したいと考えていますか?

前田:最終的には戸籍上の性別も変えて、男性として今付き合っている彼女と結婚したいなと考えています。

ーー現在の仕組みだと、戸籍上の性別を変更するには手続きが大変だと聞きましたが…。

前田:性同一性障害の認定をもらうにも2箇所の病院での診察が必要で、トータル1年半くらいかかります。それに戸籍上の性別を変更するには、生殖器の摘出をしなければいけません。

ーー生殖器の摘出が条件というのは、オナベの方にとってもかなりハードルが高いのではないでしょうか?

前田:そうですね、抵抗がある人は少なからずいると思います。LGBTの人の中でも、体にあまりメスを入れたくない人や、生殖器の摘出に抵抗がある人はいるので。手術にはお金もかかりますしね。

そういった意味では、自治体によるパートナー制度ができたことで、LGBTの選択肢が広がって良かったです。

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とても明るくオナベ事情と、性同一性障害について話して下さった前田さん。まだあまり知られていないオナベについて、広く知ってもらえる活動をするのが今後の目標だとおっしゃっていました。

人と接する時にカテゴライズしてしまいがちな現代だからこそ、人間性そのものと向き合うことの大切さを前田さんに教えていただいた気がします。

前田さんの活動を通して、LGBTについての理解がさらに広がっていくといいですね。

<取材・文/横田由起  撮影/長谷英史>

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