CMといえば、通常15秒から30秒のものがほとんど。しかし、ドイツの自動車メーカー・アウディが7月に公開したCMはわずか3.2秒。CM史上初めてと言っても過言でないほどの短さとその内容に、ネットが騒然となりました。

「なぜ3.2秒しかないの?」「3.2秒でなにが伝わるの?」と思う方も多いと思いますのでまずは動画をご覧下さい。

3.2秒というキーワード

出典 http://lo.ameba.jp

動画を再生すると、舗装された道だけが表示されました。

画面下部には0-100km/hという表記と時間だけが表示されています。

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再生して1秒ほど立つと、前方から黄色い車らしきものが近づいてきました。

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更に1秒ほど立つとしっかり車と認識できました。どうやら黄色いスポーツカーのようですが…、

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そのわずか0.5秒後には、車は過ぎ去り、また舗装された道だけの姿に…。

このあとに、何か説明があるのかと思いきや、

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Audi Sportの文字が表示されてCMは終わってしまいました。

出典 YouTube

「ただ車のスピードを計っただけ?」「早さをアピールしたかっただけ?」

そんな疑問が頭に浮かぶこのCM。一体何を目的としていたのでしょうか?

Spotlight編集部では、この謎を解明すべくCMの制作者にインタビューを行い、動画制作の裏側について伺ってきました!

アウディの3.2秒動画を制作したのは株式会社博報堂のクリエイティブディレクター/CMプランナー/コピーライターの河西智彦氏。

博報堂入社後、VCM・グラフィック・PR・プロモーションなど予算に関わらず『売る』統合コミュニケーションを企画・立案。現在はアウディのクリエイティブ担当として、今回の動画制作の総指揮を執りました。

主な受賞歴はカンヌライオンズ金賞、Spikes Asia金賞、アドフェスト金賞、大阪コピーライターズクラブグランプリ2回、グッドデザイン大賞、朝日広告賞準グランプリ、読売広告賞準グランプリ、民放連CM部門グランプリ、東京コピーライターズクラブ新人賞、コピーライター講座講師など。

ーーまず最初の質問ですが、ズバリこのCMを作った理由をお聞かせください。

河西:今回アウディがAudi Sportというスーパーカーブランドを立ち上げることになりましたが、日本では今、スポーツカーという車種の人気が以前よりは下火な印象がありました。なので、そのような状況の中、「スーパーカーっていいですよね」と直接アピールしても生活者には響きづらいという懸念があったんです。

となると、やっぱり世界初の動画を作るしかないかなと。良くも悪くも初物のクリエイティブは注目されるので。

そこで、せっかくやるなら短い動画を作ってみようということになり、まずは1秒の動画を作ってみたんです。だけど、実際やってみたら1秒だと何をやってるか分からなかったんですよね。

それで試行錯誤の上、アウディのパフォーマンスモデルの最高峰であるAudi R8時速100Kmに到達するのに要する時間、通称「ゼロヒャク」タイムが3.2秒ということに注目し、この秒数に合わせて動画を作ることにしました。

ただ、制作していく中でスーパーカーということから逃げないことは頭にありました。シンプルにスーパーカーの魅力を伝えるためにどうすれば良いのか?それを考えた時に、真っ正面からR8が走り抜けていくという動画で勝負することにしたんです。

ーー動画を見た方からの反響は何かありましたか?

河西:自分が関わったクリエイティブについては、ネットで検索して世の中の評判を見るんですが、今回のCMに関してはかなり好意的に捉えられていました。

車好きの方たちからの声はもちろんありましたが、それ以上に車にそれほど関心のない方たちからの「アウディかっこいい」「ストレートでいい」といった声が聞けたことが嬉しいですね。

あと、「このCMは日本人じゃ作れない」「本国(ドイツ)で作ってるんでしょ?」という声もあったんですが、撮影場所は日本ですし、作ったのも日本人ですよ!

※静岡県の富士川滑空場にて撮影

ーーちなみにボツになった別の案とかありましたか?

河西:結構ありました。特に記憶に残っているものは、R8の最高時速が320kmと新幹線よりも速いので、路脇に1.5kmのLED看板を設置し、R8の姿を投影して新幹線を追い抜かせる案ですね。ただ条件的に実現が難しいとのことで、残念ながらボツになりました。

ーー今回の動画の中に隠されたメッセージや、注目してほしいポイントはありますか?

河西:注目というわけではないんですが、短い動画でも検証をかなり重ねました。最初は速度表記と秒数を左右に分けたり、画面上で動かしてみたりしたんです。

しかし僅か3.2秒の中で、動くものが分散してしまうと人間の目で追えないことがわかりました。それで検証を重ねた結果、中心に寄せて0-100km/hの速度表記は固定で、秒数だけを動かすことにしました。

動画を見た方からの反響の中に、「短いCMなのに説得力があった」「シンプルで分かりやすい」という声がありましたが、もしこのフォーマットにしていなかったら意味が伝わらなかったと思います。そういう意味では、検証を重ねたことでユーザーに意味がしっかりと伝わって良かったかなと感じました。

知性を纏ったスーパーカー・R8

出典 http://lo.ameba.jp

2016年7月にモデルチェンジを経て2代目となった、Audi Sportのフラッグシップモデル・R8。今回の3.2秒動画ではその速さ、加速性能だけがフォーカスされていましたが、2代目になり、実は様々な進化を遂げていました。

過給器に頼るスーパーカーが多い中にあって、R8は過給器に頼らない自然吸気のエンジンを搭載。それでいて、あれほどのパワフルな加速を可能にしています。さらに、知性を纏ったスーパーカーと呼ばれるその走りは、驚くほど滑らかで、従来のスーパーカーにはなかった快適な乗り心地をも実現しています。

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またインテリアに関しても、アウディのもつ洗練された雰囲気や、ゆったりとした快適な室内空間から知性を感じる作りに。それとともに、ドライバーを包み込むレザーのバケットシート、各種スイッチに囲まれた近未来的なコックピットからは、ドライバーの運転欲求を刺激する攻撃的な側面も伺えます。

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まさに、従来のスーパーカーに知性を融合した新時代を象徴する1台となったR8。Audi Sportのフラッグシップモデルだけあり、簡単には手の届かない価格となってはいますが、3.2秒動画で世の中をワクワクさせてくれたように、私たちの憧れの車として、今後もモータースポーツの世界や街中で楽しませてくれることでしょう。

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