記事提供:CIRCL

アメリカの退役軍人の睡眠障害が増加

アメリカで戦地から戻った退役軍人について、睡眠障害などメンタル面のトラブルが増えているという。その現状と課題についてお伝えする。自衛隊を持つ日本も考えなくてはならない問題だ。

この10年間で睡眠障害が6倍に

アメリカのサウスカロライナ大学の研究チームは、退役軍人970万人分のサンプルを分析して睡眠障害について調べた。

集団全体の罹患(りかん)率を基準となる集団の年齢構成に合わせる形で求めた年齢調整罹患率で比較すると、睡眠障害を抱えた退役軍人の数は、2000年には1%以下だったのに対し、2010年には6%にまで増えたことが分かった。

また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患う人は3倍にも増えた(※1)。

戦争によるPTSDが退役軍人の睡眠障害に関係か

特に注目すべき分析結果が、PTSDの症状がある人で睡眠障害を抱えている人の割合が16%と、他のどの職業と比べても高いという点だ。こうしたことから研究チームはPTSDが何らかの睡眠障害を引き起こしている可能性が高いと考えている(※1)。

退役軍人とPTSDという2つのキーワードから連想されるのが「戦争」だ。睡眠障害を抱える人の数が6倍にまでなったその10年間、アメリカ軍は2つの大きな戦争をした。

2001年の同時多発テロ直後から始まったアフガニスタンへの攻撃と、2003年に始まったイラク戦争だ。これら一連の戦争によって、退役軍人が睡眠障害とPTSDに悩まされている。

戦地での想像を絶する体験による、帰還兵の自殺も深刻な問題に

この戦争で、230万人もの兵士が現地へ派遣されたといわれているが、兵士たちは戦地で想像を絶する体験をし、帰国後、PTSDを患うケースが多いという。

さらに、睡眠障害とともに深刻なのが、戦地から帰ってきた兵士たちの自殺の問題だ。なんと、1日当たり20人を超える帰還兵が自殺しているというのだ。

その数は合計数千人を超えるとみられ、戦場で戦死したアメリカ兵約6800人を上回るほどの数字だ(※2,3)。

アメリカは、こうした事態に対処するため、現地でメンタルケアができる専門部隊を派遣したり、帰国後もメンタルヘルスに関する自己評価を行ったりして、必要があれば無料でケアが受けられるシステムにもなっているが、ケアを受けられる施設が少ないなどの課題も残っている(※4)。

日本も無関係ではいられない 戦争によるメンタル後遺症

アメリカの退役軍人の睡眠障害やPTSDの話は決してひとごとではない。2016年7月の参議院員選挙が終わり、今後、自衛隊に関する憲法改正の議論が始まる可能性が出てきた。将来、日本の自衛隊が戦場へいき、実際に戦うこともあるかもしれない。

そうしたとき、アメリカの退役軍人と同じメンタル面の被害を受けることも考えられる。精神的なケアをどうしていくのか、憲法改正の議論とともに考えていく必要がある問題だろう。

参考・引用
※1:Study finds significant increase in age-adjusted prevalence of sleep disorders among U.S. veterans

※2:この現実を見よ! 戦争から戻っても自殺が絶えない米復員軍人

※3:帰還後に自殺する若き米兵の叫び

※4:メンタル・ヘルスをめぐる米軍の現状と課題
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/200908_703/070302.pdf

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス