出典Spotlight編集部

みんなが普段疑問に思っていることを編集部が調査・解決するコーナー「素朴なギモン」。今回は携帯やPCのキーボードで打てる小さい「ゎ」について調査しました。

いまや、SNSやLINEといったコミュニケーション手段は、私たちの生活に欠かせないものになりました。しかし、小さいひらがなやカタカナを使った文章を見かけ、モヤッとしたことがある方は多いのではないでしょうか?

たとえば、太宰治の有名な小説『走れメロス』を小文字言葉で現代風に書き換えた一節も、2ちゃんねるやTwitterで拡散されていました。

このように、小さなひらがなやカタカナを使った「小文字言葉」を使ってメッセージを書く文化は2000年代から女子高生を中心として広まり、現在もSNSやLINEなどで使われていることがあります。

しかし、インターネット上のブログや掲示板にも、このような小さなひらがなやカタカナを使った文章に対しては「なぜ、小さい『ゎ』を使うの?理解できない」「読む気をなくす…」といった意見がチラホラ…。

小さい「ゎ」って本来どんなタイミングで使うの?

キーボードの場合、「xwa」「lwa」と入力することによって「ゎ」を出すことができます(一部の日本語入力ソフトでは出すことができません)。スマホ・携帯電話の場合も機種によって出し方はまちまちですが、簡単に打つことができるようです。

こういった小文字言葉を見ていると、素朴な疑問が生まれます。小さい「ゎ」って本来どんなタイミングで使うのでしょうか?「ぅ」「っ」「ょ」といったひらがなは日常生活で誰もが使う機会がありますが、「ゎ」だけは謎めいた存在です。

そこで、「ゎ」は本来どんなときに使う文字なのかを調査してみました。

小さい「ゎ」は、「合拗音(ごうようおん)」といわれる拗音の一種として使われる

出典Spotlight編集部

「きゃ・きゅ・きょ」「ちゃ・ちゅ・ちょ」といった音を「拗音(ようおん)」といいます。拗音の中には、「合拗音(ごうようおん)・ワ行拗音」と呼ばれる種類が存在し、それが「くゎ・ぐゎ」なのです。小さな「ゎ」の存在意義とは「くゎ・ぐゎ」を表現するためにあるというわけですね。

ちなみに、発音は「kuwa(クワ)」「guwa(グワ)」と2拍で発音するのではなく「kwa(クヮ)」「gwa(グヮ)」と1拍で発音するそう。実際に発音しようとすると、なんだか外国語のようにすごく難しいです…!

それでは、「くゎ・ぐゎ」が具体的にはどんな言葉に使われているのかを紹介しましょう。

実は、松尾芭蕉『奥の細道』の冒頭文に「くゎ」が使われている!

松尾芭蕉が書いた紀行文『奥の細道』。みなさんも中学校などで一度は読んでいると思いますが、実は『奥の細道』の冒頭の文章には「くゎ」という表現が使われています。

「月日は百代(はくたい)の過客(くゎかく)にして、行きかふ年もまた旅人なり」
(年月は永遠に旅を続ける旅人であって、来ては去り、去っては来る年もまた旅人である)

「旅人」という意味の「過客」は「かかく」ではなく、正確には「くゎかく」と読むのです。昔の日本人は「か・が」と「くゎ・ぐゎ」の発音を、単語によって分けて使用していたそう。それが、江戸では19世紀初頭、京都では20世紀初頭から区別されなくなり、現在では日本の広い地域で「くゎ・ぐゎ」は、「か・が」と発音されるようになりました。

大学名やあの有名企業にも…

昔の名残と思われる「くゎ」表記を使用している大学があります。それは、兵庫県にある関西学院大学。公式サイトには「関西学院大学(KWANSEI GAKUIN UNIVERSITY)」と書かれており、正式には「かんせいがくいん」ではなく、「くゎんせいがくいん」と読むことが分かります。創立125周年という長い歴史を持つ大学ですから、創立当時の読み方を今も保っていることが考えられます。

また、デジタルカメラが有名なメーカー「CANON」が、1933年に製作したカメラの試作機の名前は、「KWANON」。公式サイトによると、読みは「カンノン」だそうですが、「KANNON」ではなく、「KWANON」と表記されているところから見るに、実際は「クヮンノン」と呼んでいたのでしょう。

沖縄発祥の「シークヮーサー」の表記にも使われている

今でも、地方において、おじいちゃんおばあちゃんが「か・が」を「くゎ・ぐゎ」と言っているのを聞いたことがある人もいるかもしれません。先に述べたとおり、今では一般的には「くゎ・ぐゎ」は、「か・が」の発音に統一されましたが、一部の地域においては方言として「くゎ・ぐゎ」が残ったのです。

沖縄の一部地域は、現在も「くゎ・ぐゎ」が発音されています。お酒やジュースで大人気な果物「シークヮーサー」は沖縄発祥。今でも「ヮ」が使われている数少ない名詞の1つですが、現地の人の発音に沿って、小さな「ヮ」が用いられていることが想像されます。

また、沖縄の伝統野菜「クワンソウ(アキノワスレグサ)」も、「クヮンソウ」と表記することがありますし、熱帯で採れる果物で、日本では沖縄で多く生産されている「グアバ(グァバ)」も「グヮバ」と表記することもあります。

小さな「ゎ」は、正しい「日本語表記」として使われていた

今回の調査結果から考えられることとして、パソコンやスマホのキーボードで打てる小さな「ゎ」は、決してギャル文字的に遊んだり、もしくは絵文字などで遊ぶために備えられているわけではなく、正しい「日本語表記」として使われていました。

今まで「ゎ」を「なんだか不快…」と毛嫌いしてきた方も、「ゎ」の存在意義を知ったことによって、これからゎ、メェルで「ゎ」を見かけたときも、ちょっとゎ、受けぃれられる気がしませんカ?ぇ、ぃみゎかんなぃって?? ゴメン…。(笑)

この記事を書いたユーザー

Spotlight編集部 このユーザーの他の記事を見る

Spotlight編集部の公式アカウントです。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス