あのSMAPが解散してしまう。「バラエティもできるアイドル」のトップランナーとして道を拓き、役者としての才能も花開かせて、国民的人気を勝ち得た。それだけではなくもちろん、アイドル稼業のメインである歌に関してもSMAPはチャレンジングだった。有名無名・若手ベテランを問わず、気鋭の作曲家を迎え、さまざまなジャンルの楽曲を歌ってきた。

彼らの代表曲『世界に一つだけの花』が槇原敬之の作詞作曲というのはご存じだろう。人気すぎて忘れてしまいそうだが、あの楽曲はもともとアルバム曲だった。それが翌年のドラマ主題歌起用をきっかけにシングルカットされて大ヒット。現在は解散騒動も背中を押し300万枚に迫る売り上げとなっている。詞も曲も売れ方すらもドラマチックだ。

今回はそういった、ヒットナンバーでありながらも実は「A面じゃなかった」90年代の楽曲にスポットライトを当ててみたいと思う。

あの時、あの曲。

#6 実は“A面じゃなかった”ことに驚愕する、90年代のヒットソング5選

もしお気に入りとしていたB面やアルバム曲が、あれよあれよと世間に広まり評価されたら「ホレ見たことか!」と鼻を膨らませることだろう。なにより曲自体に説明不要な名曲としてのパワーがあったのだと誇らしくなる。これからご紹介するナンバーにも、「A面じゃなかったんだ!」と同じ感想を持つことになるはず。それでは順番に見ていこう。

1.「未来予想図Ⅱ / DREAMS COME TRUE」

“いつもブレーキランプ5回点滅 ア・イ・シ・テ・ル のサイン”

出典DREAMS COME TRUE『未来予想図Ⅱ』

ドリカムといえば「未来予想図Ⅱ」という方も多いのではないか。89年発表のアルバムに収録され、翌年のシングル「笑顔の行方」でB面としてリカットされた。吉田美和が高校生のときに「未来予想図」と共に生み出したこの曲、2015年にリリースされたアルバムには再レコーディングされたものが収録されている。

A面シングルになることはなかった
が絶大な人気を博し、徳永英明いきものがかり三浦大地など数々のミュージシャンがカバー。歌詞の世界観をもとに制作された映画『未来予想図〜ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜』も公開されるなど、物語性に富んだこの楽曲を高校生で書いていたとは驚くばかりである。

2.「部屋とワイシャツと私 / 平松愛理」

“あなた浮気をしたら うちでの食事に気をつけて 私は知恵をしぼって 毒入りスープで一緒にいこう”

出典平松愛理『部屋とワイシャツと私』

さだまさしの名曲「関白宣言」のアンサーソングとしても有名なこの楽曲。ゆったりとしたメロディに「毒入りスープ」というワードを乗せるセンスが世間を驚かせた。歌詞は結婚を意識した女性の心理を描いているが、愛が重すぎるがゆえに不穏な雰囲気が漂っている。そのためか当時は評価が賛否に分かれたが、曲のインパクトが十分だったことの裏付けと言えるだろう。

92年に表題シングルとしてリリースされたが、もとは90年のアルバム「MY DEAR」に収録されたものだった。「部屋・ワイシャツ・私」の単語を同列に並べて間接的に意味を持たせる手法は、聴く人に映像を浮かばせるような効果があった。

3.「恋心(KOI-GOKORO) / B’z」

“どうしよう うまくいかない恋 こんなとき もっと大人になりたい”

出典B'z『恋心(KOI-GOKORO)』

92年の11thシングル「ZERO」のカップリングとして収録。歌詞はタイトル通り、男性の恋心について歌われており、稲葉が当時のラジオ番組「B'z WAVE GYM」に送られてきたリスナーからの手紙にインスパイアされて作られた

タイアップなし、オリジナルアルバムにも未収録
ながらファン人気がとても高い。98年のベストアルバムの収録曲を決める投票で1位になったほどだ。珍しく振付けがある曲で、ライブではオーディエンスも一緒になって踊るポップ色の強い作品である。

ちなみにB'zのシングルは4thシングル「BE THERE」からカップリング曲のことを2nd beatと表記しているが、本作のジャケットには「COUPLING WITH:恋心 (KOI-GOKORO)」と表記されている。

4.「Over / Mr.Children」

“今となれば 顔のわりに小さな胸や 少し鼻にかかるその声も 数え上げりゃきりがないんだよ 愛してたのに”

出典Mr.Children『Over』

4thシングル「CROSS ROAD」、5thシングル「innocent world」のヒットで時代のポップスターとして勢いに乗っていたミスチルが、満を持して4thアルバム「Atomic Heart」をリリース。Mr.ChildrenのCD作品では最高の累計343万枚を売り上げた

そのラストを飾る失恋ソング『Over』は「ここで終わりにする」と「ここを越えていく」の二つの意味がそのタイトルに掛けられており、切ないメロディと歌詞に共感を呼び人気曲となった。シングルカットされることはなかったが、後にベストアルバム『Mr.Children 1992-1995』にも収録された。

5.「丸の内サディスティック / 椎名林檎」

“マーシャルの匂いで飛んじゃって大変さ 毎晩絶頂に達して居るだけ”

出典椎名林檎『丸の内サディスティック』

最後にご紹介するのは90年代後半に彗星のごとく現れた奇才、椎名林檎の『丸の内サディスティック』。この楽曲、音楽番組で演奏するシーンを見た方も多いと思われるが実はA面シングルではないのだ。98年の2ndシングル「歌舞伎町の女王」のカップリングに弾き語りがメドレーの一部として収録されている。

翌年発売されたアルバム「無罪モラトリアム」でスタジオ録音されたものを収録。このアルバムが1年半もの間チャートインしつづけるロングヒットとなったことで、当楽曲も知名度と人気を高めていった。シンプルなR&Bに、語感やリズムを意識した歌詞が心地よくも不思議な世界観を表現している。ライブで演奏されることも多く、イントロが鳴った瞬間にひと際歓声が大きくなることからも、椎名林檎を代表する作品ということがわかる。

出典 YouTube

SNSなどあるはずがない90年代、良いもの・価値のあるものを判断する材料はマスメディアのお達しと身近な友人の感想だったように思える。そういった環境の中で、これらの作品は大々的なプロモーションもせずに日本全国各世代で愛される楽曲に化けていった。そう思うとグッとくるものがある。

2016年の今も、自分のあずかり知らぬところで後世に残る名曲がくすぶっているかもしれない。それらが世に広まった際には「ホレ見たことか!」と言う側に回っていたいものだ。

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Spotlight編集部 なーろ このユーザーの他の記事を見る

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