記事提供:幻冬舎plus

「ノンママ」とは、いろいろな事情で、子どもを持たない人生を選択した女性のこと。この夏、「ノンママ」をテーマにした書籍と連続ドラマが誕生しました。

書籍は香山リカさん著『ノンママという生き方~子のない女はダメですか?~』(幻冬舎)で好評発売中。ドラマは『ノンママ白書』。主演は鈴木保奈美さん、東海テレビ・フジテレビ系で、8月13日(土)スタートです(毎週土曜 夜11時40分予定)。

男女雇用機会均等法第一世代として、「せっかく女性も仕事ができるようになったのだから、まずは結婚や出産より仕事で輝こう」という時代のムードにも押され、結局、子どもを持たない人生を選んだ香山リカさん。

そんな香山さんが、人生の分かれ道だったかもしれないと思い出す出来事があります。

* * *

●「孫が楽しみ」という言葉に気持ちが暗くなった日

もう時効だと思うので書こう。30代前半で当時、遠距離恋愛で交際していた男性と「そろそろ結婚」という話が出て、相手の両親に会ったことがあった。

堅実な家庭の誠実な両親だったが、何かのはずみでその父親がこうつぶやいたのを聞いて、私は「うれしい」より「おそろしい」と思ってしまったのだ。

「孫ができていっしょに写真を撮るのが楽しみですよ」

その男性とは「子どもはいつ頃、何人くらい」などと話していたわけではなかったし、私もちょうど医師としての仕事が多忙をきわめている時期で、「出産などとてもとても」という感じだった。

結婚の話が出ている30代半ばで「子どものことは眼中にない」という時点で、すでにかなりのノンママ度と言えるのだが、とにかく「孫が楽しみ」という言葉は私を暗い気持ちにした。

いま思い出すと、

「私はあなたの孫を産むために結婚するわけじゃない」
「私の仕事の都合はいっさい考えないわけ?おたくの息子は子どもができてもそのまま仕事が続けられるけど、私はそうはいかないのに」

など、とにかく私という人間が軽んじられた気がしてしまったのだ。

結局、ほかの理由もあってその男性とは別れたのだが、いまいちばん鮮明に覚えているのは、本人より父親の、その「孫」という言葉だ。

こう言うと、「自己中心的な人間がノンママになるのだ」と言われるのだろうか。子どもを持つのは人間としての大切な営みなのに、すぐに「私という人間の尊厳は?」「私の仕事はどうなるの?」と自分、自分でしかものを考えられない。それがノンママだ、と。

でも、女性が、というより人間が自己中心的でどこが悪いのだろうか。

なぜ、女性であれば必ず、「私の人格、仕事なんてどうなってもいいから子ども優先で」と、自己犠牲的な生き方をしなければならないのか。あるいは、子どもがいる女性が、「やっぱり子どもより自分が大切」などと思うのは、絶対に許されないのだろうか。

さらに「いちばんが自分、次は夫(や彼氏)、子どもはその次」などと言おうものなら、「人間として失格だ」などとバッシングされてしまうしかないのだろうか。

●「子あり」「子なし」「未婚」「既婚」で分断しないで

ここで私の考えをはっきり述べておきたい。

私は、多くの女性あるいはそのパートナーの男性が「子どもより自分やカップル」と考えた結果、「子どもは持たない」という人生を選び、少子化が進むのは、尊重されるべき選択のひとつと思っている。

そこで、「あなたたちの人生を犠牲にしても子どもを産むべきだ」などと強要するのは、時代錯誤な人権侵害でしかない。

もちろん、子どもがほしいのに経済的理由、保育園問題などで出産をためらう人たちには、安心して産めるような状況を、政治がすぐにでも用意すべきだ。

ただ、そうしても「人生の目的は、自分が自分らしく生きること」という自己実現が究極のゴールになったこの現代社会では、ママになることを積極的に選択する女性が激増するとは、どうしても考えられない。

その中で、「私は子どもより自分」と強く思った女性、あるいはそこまで強い意志でなくても「何となく仕事かな」とやや消極的に考えた女性がノンママとして生きることを、誰がとがめることができるだろう。 

そして、そういうノンママ人生を選んだ女性にも、当然のことながら「子どもがいれば楽しかったでしょうね」などとママをうらやんだり、ときには「産めばよかったかな」とちょっとだけ後悔してみたりする権利はもちろんある。

ノンママがそんなふうに迷い、心細さを口にするだけで、いっせいに「ほら見たことか。産めるときに産まないからそうなるんだ」と、まるで「アリとキリギリス」のキリギリスを見るような目で見て非難するのもやめてほしい。

誰もが100パーセントの確信でノンママになるわけではないのだから、たまには「あーあ、子どもがほしかったな」などとボヤく自由を、ノンママにも与えてほしい。

* * *

香山リカさんと一緒に考えてきた「ノンママという生き方」。

ノンママは数字で見れば社会の少数派。ですが、彼女たちが職場で、家庭で、地域でぶつかる問題は、実は子どものいる女性たちや、ひいては働く男性たちがぶつかる問題と、根っこのところで繋がっています。

だから、香山リカさんは最後にこんなメッセージを贈ります。

* * *

時代は混沌としており、「あなたはママ」「私はノンママ」などと線引きをして女性どうしが対立している場合ではない。

ノンママの切ない気持ち、とまどい、現実の壁、これからの夢などを確認したら、後はママ、ノンママ、シングル、既婚などに関係なく、垣根を超えて女性どうしフォーメーションを組んで、この現実に立ち向かっていこう。

私もまた元気を出して、これからもノンママ人生を楽しみながら駆けていきたい。

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