自閉症の人にとって、外出するということはとてつもない大きな冒険の一つである場合が多く、特に自閉症の子供を抱える親が一緒に買い物に行く時には、子供が愚図ったり叫んだりしないか神経質になるものです。人にってその症状や程度が違う自閉症。これまでにも自閉症についての記事をこちらで書かせて頂きました。

このほど、海外サイト「the Mighty」に自閉症の息子と買い物に出た母親が経験したある日の出来事が掲載されていて深く考えさせられた筆者。こちらでご紹介したいと思います。

行きつけのグローサリー店に買い物に出たレイチェル・スローさんと息子のブランドン君。買い物リストを持たずに来てしまったために、買い物にいつもよりも少し時間がかかってしまったそう。

息子が機嫌よくしてくれていることが何より

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ブランドン君は買い物の間、大声を出したり奇妙な動きをしたりしてはいたものの、ハッピーな様子だったので一安心していたレイチェルさん。自閉症の子供を持つ親にとって一番心配なのは公共の場で子供が暴れたり叫んだりして手が付けられなくなることだと言われます。周りがその子供が自閉症だとはわからないために「親の躾がなっていない」という批判的な視線を送られることが多いからだそう。

並んでレジを待っていた親子

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レジが混んでいたので並んで順番を待っていたレイチェルさんとブランドン君。自分たちの番になった時に、袋に野菜を詰める係のスタッフが「シールほしい?」とブランドン君に聞いてきました。

普通の受け答えが難しいブランドン君

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自閉症のために、ブランドン君は普通に聞かれていることでも答えられません。そこでレイチェルさんが「ええ、この子、シール好きですよ」と答えました。するとスタッフは「なぜ自分で答えられないのか」と困惑したようにレイチェルさんを見たために、「この子、自閉症なんです。だから普通に話しかけられても答えるのが難しい時があって。でも、シールは大好きなんですよ」と伝えました。

「かわいそうに」

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すると、その男性スタッフはまだ困惑した表情でブランドン君を見て、次にレイチェルさんにこう言ったのです。

「かわいそうに」

レイチェルさんは、わざと明るく「あら、シールがもうないのですか?」と聞きました。するとその男性は「いえ、シールはここにありますよ。」その瞬間、レイチェルさんは自分の息子が憐みを受けたのだと悟り、言いようのない悲しみが広がったと言います。

「私は自分の息子を憐れんではいない」

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レイチェルさんは、そのスタッフに一言言うこともできたと言います。「私は息子が自閉症だからって憐れんではいません」と。でも口にすることはしませんでした。その代わりに思いました。「私の息子は、何にも気の毒に思ってもらうような存在じゃないんです。素晴らしい子供なんです」と。

レイチェルさんは心でそう叫びながら笑顔でその男性スタッフからシールを受け取りお礼を言いました。その後も、男性スタッフは車まで荷物を運ぼうかと申し出てくれたり、何かとブランドン君に話しかけたりしてくれていたそう。レイチェルさんはそんなスタッフの姿を見て「思ったことを口にしないで良かった」と思ったそうです。

店を車で出るまで親切に声をかけてくれた男性

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男性スタッフが「かわいそう」と発したたった一言で酷く傷ついたレイチェルさん。それでも「もし自分がスタッフに文句を言っていたら、きっと彼はその日悩み自分の言葉を後悔することになるだろう。そしてそれ以降、彼が自閉症の子供達を見る度に距離を置き、きっと前に踏み出し親切にすることもなくなるだろう。」と思ったのです。

車に乗って店から去る時にも、その男性は「またね!ブランドン君」と笑顔で手を振ってくれました。ブランドン君を自閉症と知って彼の中に憐みや同情の気持ちが湧いたことで、より親切にしたいという気持ちが出たのでしょう。人によってはそんな憐みから生まれる親切は不必要という人もいますが、少なくともこの男性スタッフは正直に気持ちを口にしてしまい、彼なりに善意の対応をしたつもりだったのではないでしょうか。

レイチェルさんは「自閉症の子供を持つ親に心無い批判や残酷な言葉を浴びせて来る人もいるけれど、彼はそういうタイプとは全く違いました。でも、他人のちょっとした一言で傷ついたり顔を赤らめてしまったりすることがあるんです。きっとそれは全ての自閉症の子供を持つ親に共通していることではないでしょうか。」とサイトに気持ちを綴っています。

「きっと誰でも、自閉症の子供に何と声をかけていいかわからないと思う時があるでしょう。家族や親戚、友人など身近な人にだって傷つく言葉をかけられる時もあります。」

男性スタッフは、ブランドン君が自閉症だと知って何と言いかわからなかったのだろうとレイチェルさんは言います。結果として彼の放った「かわいそうに」は間違った言葉ではあっても、悪意のない彼の正直な気持ちであったことを怒らずに受け止めようと思うと述べています。

レイチェルさんが、男性スタッフがブランドン君の心に近付こうと努力してくれたことを素直に受け止め、気持ちを表に出さなかったことは立派だと言えるでしょう。自閉症の子供を持つ親はいつもこうした状況を想定しておかなければならないとはいえ、やはりその場になると他人の一言に激しく動揺してしまうのでしょう。

レイチェルさんの経験から、自閉症の子供を持つ親が普段の生活にとても気を配っているということがわかります。繊細な子供と公共の場に出ることで、親も少なからず神経質にもなるでしょう。そんな親子を批判の目で見ることはもちろん、「かわいそう」という憐みの言葉をかけることも相手を傷つけてしまうのだということを周りが理解しておくことが大切ではないでしょうか。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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