7月26日深夜、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」に、元職員・植松聖容疑者(26)が侵入。入居者を刃物で刺すなどして、19人を殺害、26人を負傷させる事件が発生しました。

事件の概要

2016年(平成28年)7月26日午前2時38分、相模原市緑区千木良にある障害者施設から神奈川県警察と相模原市消防局にそれぞれ、「刃物を持った男が暴れている」との通報があった。

出典 https://ja.wikipedia.org

現場に駆け付けた医師が19人の死亡を確認し、重傷の20人を含む負傷者26人が6か所の医療機関に搬送された。

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死亡したのは、いずれも同施設の入所者の男性9人、女性10人で、年齢は19歳から70歳。また、負傷したのは、施設職員男女各1人を含む男性21人、女性5人だった。

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午前3時過ぎ、神奈川県津久井警察署に、男が「私がやりました」と出頭し、午前4時半前に、殺人未遂と建造物侵入の容疑で緊急逮捕された。被疑者は午前2時頃に、ハンマーで入居者居住棟1階の窓ガラスを割って、そこから施設内に侵入したとみられる。

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国内では戦前1938年5月21日未明、現在の津山市加茂町で当時21歳の青年が、近隣住民を斧や日本刀・銃で襲撃し、30人を殺害した津山事件以来の単独犯による大量殺傷事件となりました。

被害者の氏名を公表しないと発表

今回の事件で神奈川県警は「実名報道が基本ということは承知している」とした上で、被害者の氏名を非公表とすると発表しました。

非公表にする理由は、「被害者が障害者施設の入居者で、遺族が氏名などを出したくないとの意見を持っている」こと、「被害者が障害者で、事件現場となった施設も特異なもの。家族の意思もあり、そういう判断をした」と担当者から説明がありました。

これには多くの意見が寄せられた

今回の事件では「被害者が障害者であり、遺族が公表を望んでいない」という理由から被害者の実名を非公表としていますが、「健常者なら実名を公表していいのか?」「他の事件では遺族が望んでいないのに実名を公表している」など普段の報道との違いから違和感を感じる人が多くいました。

被害者の詳細を報道する意味とは?

普段何気なくニュースを見ていても当然のように被害者の実名が公表され、卒業アルバムやSNSの写真、本人のものと思われるTwitterアカウントのツイート内容などを報道しています。

しかし、ここまで被害者の個人情報や人物像を詳しく報道することにどんな意味があるのでしょうか?

人はイメージ(画像)で物事を記憶するという特徴があります(「思い出」は全てイメージで記憶されていますよね。テキスト(文字情報)として記憶される人は皆無でしょう)。つまり、被害者の顔写真などの視覚的情報があることで脳裏に鮮明に焼き付くのです。逆に匿名だと視覚的情報無いのでテキスト(文字情報)で記憶することになり、印象が薄く記憶に残らないのです。

記憶に残らないという事は事件が軽視されるという事です。私たちは同じ様な事件を繰り返さないように対策を講じなければならないわけですが、事件が軽視されれば、対策はされず同じ様な事件が繰り返されます。

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事件の真相を解明するためには、それぞれの当事者の背景などをする必要がありますので、その限度で個人情報が明るみにでるのは仕方のないことだと思います。

また、実名を出すことによって、その方を知る人たちからの情報収集ができるというメリットはあるのかも知れません。

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実名や被害者の顔写真などが報道される理由としては、事件や事故の「印象を強く残すこと」「印象を残すことによる同様の事件・事故の再発防止」「事件解決のための情報収集」などが挙げられています。

悲劇の演出に感じてしまう

個人情報を報道することで事件の印象を残し、再発を防止するという“建前”はあると思いますが、現実の報道では“悲劇の演出”のために公表しているようにしか見えない、という意見が多いようです。

いきすぎた被害者への「メディアスクラム」

メディアスクラムとは必要以上の報道合戦を繰り広げることや、「集団的過熱取材」と言われることもあります。こうしたメディアスクラムによる被害者の実名報道や被害者遺族などに対する取材については以前より疑問視する声が上がっていました。

例えばマスコミによる執拗な取材による被害者遺族のプライバシーの侵害、実名報道や詳細な個人情報の報道による被害者や遺族に対する誹謗中傷が行われるリスクが高まること、被害者遺族と周りの人間関係に悪影響を与えかねないことなどが考えられます。

実際に起きた出来事を例に見てみましょう。

1、軽井沢スキーバス転落事故

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バス事故としては平成に入って以降、最悪の乗客・乗員41人中15人が死亡した「軽井沢スキーバス転落事故」。

この事故の被害者は実名と共にSNSなどから写真が公開され、どんな人物だったかなどが事細かに報道されました。また被害者の家には連日報道陣が殺到したそうです。

被害者の「個人情報報道合戦」に巻き込まれた被害者遺族にとっては、家族を亡くした悲しみにマスコミの執拗な取材が追い打ちをかける状況となってしまいました。

2、アルジェリア人質事件

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イスラーム系武装集団が、アルジェリアのイナメナス付近の天然ガス精製プラントにおいて2013年1月16日に引き起こした人質拘束事件。日揮関係の幹部・協力会社・派遣社員であった日本人10人が人質として拘束され、10人全員が死亡することとなりました。

この事件において政府は日揮の要請を受けて被害者の実名は非公表とする姿勢をしていたが、一部新聞社により被害者の実名が公表されることとなりました。

当初政府は日揮の要請を受け被害者遺族のプライバシー保護を理由に実名公表を拒否した。

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朝日新聞は2013年1月22日付の朝刊で、この事件での日本国籍保有者である被害者の実名を発表した。これに対してある被害者の遺族の一人は、この報道は特別な許可は得てないとしている。

この遺族は、2013年1月25日付で朝日新聞への抗議を行ったとしている。遺族は抗議文で、取材にあたり、記事にする際には遺族の許可を得ることなどの約束をしたが、朝日新聞社はそれを破ったと主張。

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この遺族の方は“政府より実名が出された場合”を前提条件に、記者に故人のプロフィールを渡していたそうです。しかし、次に記者から入った連絡は実名を報道するというものでした。実名報道は控えてほしいと頼みこみましたが、受け入れられることく報道されるに至ったそうです。

その後、アメリカ政府が被害者名簿を公表したのを受けて、日本政府は1月25日に生存者と死亡者が帰国した後に「政府の責任」において死亡者のみ公表に踏み切ります。しかし、こうした政府の公表を前に新聞社が実名報道をしたことについて様々な議論が交わされました。

3、グアム無差別殺傷事件

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2013年2月12日午後10時過ぎ、グアム、タモン地区でグアム在住の男(21歳)が車で歩行者をはねて店舗に突っ込んだあと、車を降りて周りにいた人たちに刃物で次々と切りつける無差別殺傷事件が発生しました。この事件で日本人観光客の3名が巻き込まれ犠牲となりました。日本人が多く訪れる人気の観光地で起きた凄惨な事件に、日本中が衝撃を受けました。

今回の事件を通じて、日本の報道のあり方に大きな疑問を感じずにはいられませんでした。

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事件現場や搬送先の病院はもちろん、被害者やそのご家族の方々が宿泊するホテルの周りに報道陣が張り付いていたのは明らかでした。

グアム在住の知人が事件現場を目の当たりにして、以降事件のことを話そうと思うと身体が震えて話せないし、食べることもできないといっているほどであるにも関わらず、報道陣の中には被害者やご家族にしつこくつきまとう方もいらっしゃったようで、被害者やそのご家族の方々はただでさえ心身に大きな傷を負っていらっしゃるにも関わらず、外に出ることも怖くて仕方なかったようです。

そしてこの日本からの報道陣の姿には、地元でも眉をひそめる方も少なくなかったと聞いています。

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こちらは現地に住んでいる方が当時の状況を書かれたものです。旦那様が事件後のボランティアとして活動していたようですが、そこで行われていた日本メディアの取材方法はあまり褒められたものではなかったようです。

4、亀岡市登校中児童ら交通事故死事件

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2012年(平成24年)4月23日に京都府亀岡市篠町の京都府道402号王子並河線で発生した交通事故で、亀岡市立安詳小学校へ登校中の児童と引率の保護者の列に軽自動車が突っ込み、計10人がはねられて3人が死亡、7人が重軽傷を負った事故です。軽自動車を運転していた少年は無免許で居眠り運転をしていたと報じられています。

この事故はその後の被害者個人情報の取り扱いでも注目を集めることとなってしまいます。

亀岡警察署の担当者が容疑者の少年の父親に被害者の住所や電話番号を被害者の同意を得ずまた上司に相談しないまま教えていたことが判明した。被害者の夫と父親の抗議を受け、後に署長が謝罪した。

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また、安詳小学校の教頭も被害者の個人情報を承諾なしに教えていたとして謝罪した。

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百科事典を模した掲示板サイトに、この事故の犠牲者の遺族を中傷する書き込みが為されるようになり、2013年7月に遺族の1人が、全ての書き込みに対し京都府警に告訴。府警南丹署が、このうちの「(事故で亡くなった女性の遺族は)暴力団関係者」との書き込みを行った福島県内の高校1年生について、名誉毀損容疑で書類送検していたことが明らかになった。

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この事故はマスコミだけではなく、警察や学校側が被害者に許可なく個人情報を伝えるという対応にも問題がありましたが、被害者の個人情報や実名が公表されたことによりネット上で遺族に対する誹謗中傷が行われる事態となりました。

すべてマスコミのせいなのか?

本来守られなければならない被害者や被害者親族に対する執拗な取材活動、望まない実名報道、本当に必要かと思ってしまうほど詳細な個人情報収集など、それらはすべて報道する側であるマスコミの都合で行われているのでしょうか?

遺族に寄り添い、拙速にセンセーショナルな報道を避けて、結果「ニュースバリューが落ち」ても、丁寧に取材した記事を書くことを、読者が求めるのかどうか。

出典 http://www.niigata-nippo.co.jp

遺族に寄り添い丁寧に取材をするには時間がかかります。結果、事件等からある程度時間が空いてから報道されるものを、我々受け手側が求めていないのも問題なのではないでしょうか?

ニュースに限らず情報には“鮮度”が求められています。丁寧に時間をかけて取材しても、時間がたってしまったものを受け手側が求めていなければ、マスコミの取材方法は変わらないのかもしれません。

20年前はどんな小さな交通事故でも顔写真を入手するのが当たり前という時代でした。取材をすると罵声を浴びせられたり、追い返されたりすることがあり、「何の意味があるのか」と非常に悩みました。

(中略)

遺族にも、取材する側にも、苦痛や苦悩をもたらす行為はなぜ行われるのか。誰のために行われるのか。突き詰めれば「読者が求めるから」というのが答えになるのだと思います。

出典 http://www.niigata-nippo.co.jp

マスコミはどこよりも早く情報を手に入れたい→メディアスクラムを起こしてでも情報を手に入れたい→それは受け手が“鮮度の高い”情報を求めているから。こうした流れが少なからずあると考えられます。

マスコミの行き過ぎたメディアスクラムは決して褒められるものではありません。しかし、マスコミがもたらす情報を求めているのは他でもない我々です。伝える側、受け取る側、双方から考えなければこの問題を解決することは難しいのかもしれません。

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長野県出身の30代2児の父。ゲーム、アニメ、マンガ、スポーツ、夢の国が好きです。
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