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夏になると「熱中症に気をつけよう!」という言葉を耳がタコになるほど聞き、他人事だと思っているのはわたしだけではないはず。日々、直射日光のあたらない、エアコンがガンガンきいたオフィスで作業していれば熱中症とは無縁の生活を送っていると思っても自然でしょう。
ところが、「2011年からこの5年間で屋内での熱中症が死因となっているのは9割」「2015年8月に76歳の男性がエアコンのきいている部屋で熱中症にかかり死亡」という情報を耳にしたことで、その甘い考えが180度変わりました。加えて気象庁が、この夏はラニーニャ現象によって2010年以来の猛暑になると予想しているとを知り、「今年の夏は油断できないかも」と一種の不安が……。
直射日光が当たらない室内でなぜ頻繁に熱中症が起こるのか?暑さとは無縁のエアコンがきいた部屋でも死亡してしまうのはなぜ?猛暑となる年、エアコンがきいた中で生活しているわたしも発症する可能性があるのでは?と感じ、エアコンをかけても防げないとされる熱中症と、その対策を調べてみました!

夏の代表的な病気「熱中症」と「熱射病」のちがい

総務省が発表した「平成27年の熱中症による緊急搬送状況」によると、2015年の5-9月で熱中症によって緊急搬送された人数は55,852人。多くの方が発症する夏の代表的な病気「熱中症」ですが、調べようとした矢先にぶつかったのが、熱中症と同様に耳にする、似た名前の「熱射病」です。

名前だけを見ると、どちらも日光などの熱があたることで発症する印象ですが、実は日光が直接的な要因でないことがわかりました。

「直射日光よりも水分不足が原因」夏季に5万人以上が発症する「熱中症」とは

熱中症とは、室内外問わず気温や湿度が高い環境下で身体に異常が起こる症状の総称で、炎天下特有のものではありません。
もともと、人の身体には体温の上昇をおさえる調整機能がありますが、高温多湿の環境で身体の水分や塩分が不足すると、調整機能が正常に働かなくなります。調整できずに、体温が異常に上昇することで引き起こされるのが「熱中症」です。
症状は、主に4種類。

①熱失神
原因:発汗による脱水、血管の拡張で血圧が下がったときに起こる
症状:めまい、失神など

②熱けいれん
原因:多量の発汗時に水分のみを摂取、塩分やミネラルが不足したときに起こる
症状:高温下の運動・労働で使った筋肉などのけいれん(つったような痛み)

③熱疲労
原因:多量の発汗に水分や塩分の補給が追いつかず、脱水症状となったときに発生。水分を摂取しないと水の少ない血液になり、高張性脱水を引き起こす
症状:めまいや失神、吐き気や嘔吐

④熱射病
原因:脱水症状がすすみ、体温調節機能が失われることによって起こる
症状:体温が40度以上、前触れとなる症状なしに虚脱状態、けいれん、昏睡。最悪生命に関わることも。

つまり、熱射病は熱中症の一種に! 
熱中症を重症度で分類すると、熱失神や熱けいれんが「軽症」、熱疲労は「中等症」、熱射病は「重症」にあたります。
紛らわしい「熱中症」と「熱射病」ですが、「熱中症」は炎天下問わず高温多湿の環境で、脱水症状となって起こる症状の総称。そして「熱射病」は、「熱中症」の中でも生命にかかわる状態を指すものだったのです。

熱中症予防にエアコンは有効なのか

「熱中症予防にはエアコンが有効」という言葉を至るところで目にしますが、冒頭で触れたように亡くなっているケースもあります。調べていくうちに、使い方を間違えると、エアコンは熱中症を予防するどころか、熱中症になりやすい状態を招く場合もあることがわかりました。

エアコンの普及で、現代人は熱中症になりやすい身体になっていた

そもそも現代人が脱水症状を起こしやすくなった要因のひとつにエアコンが挙げられます。

エアコンの普及によって、現代人は外は暑くても中は涼しい快適な環境に慣れてしまい、うまく汗をかくことができなくなり、熱を身体に閉じ込めてしまいがちに。
つまり、エアコンがつくる快適な環境は、身体の体温調節の機能を麻痺させ、「脱水症状になりやすい=熱中症にかかりやすい」身体をつくってしまったのです。

熱中症を防ぐには「高温多湿の環境」「脱水症状」にならないことが肝に

とはいえ、「エアコンをかけない方がいいのか」ということではありません。
「エアコンで身体を冷やしすぎない」「直接風を当てない」「寝るときはタイマーをかける」など、身体に負担をかけずにエアコンを用いて、熱中症が起こりやすい高温・多湿の環境をつくらないようにすることが鍵です。
また熱中症対策には、高温多湿の環境をつくらないこと以外にも、脱水症状にならないことが重要に。高温多湿の環境に身を置かない、水分補給をしっかりおこなうことではじめて熱中症、最悪レベルの熱射病を予防できるといえるのです。

この夏、熱中症にかからないための20つの対策

ここからは高温多湿の環境、脱水症状が発生しないために「環境」「衣服」「水分補給」の3つのシーンから対策を紹介します。

環境10の対策

熱中症は温度による健康障害のため、まず自分のいる環境を気にかけることが必要不可欠。
熱中症にならない環境づくり、環境えらびを心がけましょう。

1.エアコンの設定温度は28度、湿度は50~60%を目安にする

温度は28度以下、湿度は50~60%を目安に設定しましょう。
エアコンの設定温度を低くすると、外気温と室温の差が大きくなるためかえって身体へ負担をかけてしまいます。調整するさいに、外との温度差を5度以内にすることも重要です。

2.扇風機を活用する

長時間冷気を人にあたらないよう、エアコンの気流の出口にも注意が必要です。
また部屋の下部にだけ冷気がたまらないよう、扇風機を活用し対流させる工夫もしてみましょう。

3.直射日光を遮断する

エアコンをつけていても、日光の輻射熱(※)を受けると暑さを感じます。窓から入る太陽の光は遮光フィルムやカーテン、すだれなどで遮断しましょう。
(※)太陽の光や地面からの照り返しから直接・間接に受ける熱を「輻射熱(ふくしゃねつ)」といいます。

4.風通しのよい部屋にする

高温多湿の環境をつくらないためにも窓やドアを閉め切らず、風とおしのよい部屋を心がけましょう。

5.定期的に室温と湿度を測る

定期的に室温と湿度をチェックすることで、高温多湿な環境を防ぐことができます。
エアコンの設定温度(室内温度)は実態とかなり変わるため、人が居る場所での気温を正しく測定しましょう。

6.体温計で検温し、37.5度以上なら熱中症を疑う

熱中症の被害に遭っている多くが高齢者といわれています。
高齢者は気づかないうちに体温が上がっていることが多くあります。37.5度以上になった場合は熱中症の可能性があるので、夏場は検温する習慣を身につけることも予防策に。

7.身体を涼しくしておく

暑いときは水風呂に入りたくなりますが、冷たい水風呂に浸かると汗腺が閉じ、体内に熱がこもってしまいます。身体を冷やしたいときはサッと浴びれるシャワーがおすすめ。汗はこまめに拭き、身体から熱を逃がすようにしましょう。

8.打ち水をして部屋の温度を下げる

マンションであれば、ベランダなどに打ち水をすることで部屋の温度の低下につながります。すだれを活用し、すだれの内側に水をかけても部屋の温度を下げる効果が期待できます。

9.外では日陰を選んで歩く

外出時の環境えらびも重要です。外では日陰を歩くようにしましょう。
ただ、照り返しの強いアスファルトでは日陰であっても注意が必要です。ベビーカーなど地表から近いほど高熱にさらされてしまうので散歩時は注意してください。

10.外出は暑くなる時間を避ける

正午から午後3時の時間帯は、日中のなかでもっとも気温が高くなります。外出時は午前中や夕方以降など気温が落ち着いている時間帯を選びましょう。

衣服編5の対策

身につける衣服を変えるだけでも、身体に熱がこもるのを防ぐことができます。

1.吸湿性の良い素材をえらぶ

夏場は、スポーツ時に着る吸汗・速乾作用のある素材を使った衣類や、木綿・麻などの自然素材が使われた素材を選ぶようにしましょう。身体から、熱と汗を素早く逃してくれます。

2.黒い色は避ける

黒い色は太陽の光を吸収するため、体内温度が10度以上あがることも。夏場は黒っぽい服を避けるようにしましょう。

3.長袖は避ける

女性の方だと日焼けをしたくないと長袖をきてしまいがちですが、外で長袖を着ることで身体に熱がこもってしまいます。猛暑時に外での長袖着用は極力避けてください。

4.襟元はゆるめる

ネクタイなどで襟元をきつくしている方は、襟元はゆるめるようにしましょう。ゆるめることで通気性の確保と、血の流れをよくすることができます。

5.傘・帽子を持参する

外出時は日傘や帽子を持参し、直射日光を避けるようにしましょう。帽子は時々はずし、汗を蒸発させるようにしてください。


水分補給編5の対策

体温を下げるためには汗をかくことが重要。汗の源は、血液中の水分や塩分なので、体温調節のためには汗で出て行った水分や塩分を補給しなくてはいけません。
とはいえ、「とりあえず水分をとればいい」という考えでいると、水分補給ができていない可能性も。正しい水分補給のポイントをおさえましょう。

1.基本は、こまめに水分補給をすること!

成人の1日の水分摂取目安は1.2リットルと言われています。
一度に大量の水分を摂取すると、尿となって出てしまいやすいので、1時間おきにコップ半分の量を摂取していきましょう。喉がかわいたと感じたら、それは脱水症状のはじまりです。

2.アルコール飲料での水分補給はNG!

真夏に飲むビールやお酒の美味しさは格別ですが、熱中症対策では注意が必要なドリンクです。
ビールをはじめ、アルコール成分のあるものは利尿作用があり、飲んだ分以上の水分が尿として排出されてしまいます。アルコール飲料を水分摂取にとしてとるのはNG。とくに寝る前にアルコールを飲まないよう我慢しましょう。

3.コーヒー・緑茶も利尿作用が。お茶をしたいと思ったら麦茶がベター!

コーヒー、緑茶に含まれるカフェイン成分もアルコール同様、利尿作用があります。
お茶をしたいと思ったら、カフェイン成分の少なく、ミネラルが豊富な麦茶を選ぶようにしましょう。ミネラルは体温降下と血液の流れをサラサラにする働きがあります。

4.運動中は、5~10度の冷たいものを!

冷たい水分は体温を下げ、胃にとどまる時間も少なく、すぐ身体に吸収されます。
スポーツ飲料は塩分濃度が0.1~0.2%がおすすめ。また、水分摂取の目安は発汗量の7~8割程度です。
運動する前後の体重差が発汗量になるので、事前に汗の量をたしかめておくことで、適切な水分摂取が見込めます。
 
5.運動後は体内に吸収しやすい牛乳がおすすめ

タンパク質を含み、体内の血液量を増やしてくれる牛乳は、暑さに耐える身体づくりにも最適です。

死ぬリスクもある「熱射病」になったときの処置法

体温調節機能が失われることで、倦怠・頭痛・めまい・意識障害、40℃以上の高体温となって、死亡することもまれではない熱中症最高レベルの「熱射病」。
「周囲の人が熱射病にかかってしまった」そんな緊急事態に備えて、処置法も頭におさえておきましょう。

意識がある場合の処置方法

意識がある場合は下記の手順で処置をおこないます。
①風通しのよい日陰や、エアコンがきいている室内へ移動させます。
②衣服を脱がせ、熱を逃がします。ベルトやネクタイなどをしているさいはゆるめ、風通しをよくします。
③上半身を高くした状態で寝かせませす。
④首や脇の下、足のつけ根など、血管が皮膚表面に近いところを氷などで冷やしましょう。首や脇の下、足の付け根は動脈がとおっているため、身体全体を冷やすことにつながります。
⑤氷がない場合は、水を身体にふきかけ、うちわや扇風機などで風を送って熱を冷まします。

反応が鈍い・意識がない場合の注意点

すぐさま救急車を呼ぶと同時に、意識がある場合と同様の流れで応急処置をおこないますが、その中で、下記の2点を気をつけるようにしましょう。
・摂取した水分が気道に流れ出す恐れがあるので、口から水分を摂取させないようにする(病院で点滴してもらいます)
・吐いてしまった場合に嘔吐物をのどを詰まらせないよう、横向きに寝かせる

≪口の中がネバつく?それ、ドライマウスになってるかも≫
口臭や口内炎の原因にもなるドライマウス、おクチの乾燥度はココで分かる!

さいごに

エアコンがきいた部屋でも熱中症がかかる原因から、熱中症にかからない対策をみてきました。一つひとつはどれも簡単なことですが、エアコンだけに頼らず、水分補給をしっかりおこない、高温多湿の環境に身を置かない。そして、体温調節機能が麻痺しない身体づくりをすることではじめて、熱中症対策ができたといえるでしょう。

冒頭でも触れたとおり、この夏は猛暑の年といわれています。熱中症重症レベルの「熱射病」にかからないよう、ぜひ今回ご紹介した対策を実践しながら健康的な夏を過ごしましょう!

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