これは重いですが、名著です。

「児童虐待のリアル」が凄まじい…

書籍解説より。

心の傷と闘う子どもたちの現実と、再生への希望。

“お化けの声”が聞こえてくる美由。「カーテンのお部屋」に何時間も引きこもる雅人。

家族を知らず、周囲はすべて敵だった拓海。

どんなに傷ついても、実母のもとに帰りたいと願う明日香。

「子どもを殺してしまうかもしれない」と虐待の連鎖に苦しむ沙織。

そして、彼らに寄り添い、再生へと導く医師や里親たち。

家族とは何か!?生きるとは何か!?人間の可能性を見つめた感動の記録。

出典 https://www.amazon.co.jp

本書には児童虐待を受けて育った子どもたちのリアルな実態、そして「元・被虐待児の女性」が母になって直面している困難が描かれています。

「虐待のその後」を克明に追った作品は珍しいです。ここまでの書籍をまとめた著者のエネルギーに、敬意を払いたくなります。

何がもうって、子どもたちのリアルな話が強烈すぎて、読んでいてきついです…。でも、これがリアルなんだもんなぁ…。

たとえば子どもたちが苛まされる「解離」。

虐待を受けた子どもは、目の前の状況に対して「フリーズ」することがあるそうです。これは知っておくといいですね。

「彼女はピンクが好きで、しかもスカートしか穿けない。一時保護所ではサイズが合えば、いろいろな服が出されるわけだけど、たとえばズボンだったら穿けないから、何時間でもそのままでいた。

『嫌だ、穿きたくない』とも何も言わず、一時間でも二時間でもそのまま、ただ立ち尽くすから、保育士さんには、事情がわからない。

蠟人形のように何時間でもずっと立っている。うちに来ても何かあるとスイッチを切る。フリーズするっていう感じ。すごいなーって思いましたね」

美由ちゃんは横山家でも突然、理由もわからず不機嫌になって、そのまま固まってしまう。

母親に呪文をかけられたように育てられている――。

服はピンクでなければならない、ズボンは穿かない、髪は切ってはいけない等々、美由ちゃんは母の命令に縛られていた。それはまるで呪文、あるいは呪いかと思うほど。

「みゆちゃんは、ノーの意思表示ができなかった。そして、泣くこともしない。

多分、母親に『こうしてほしい』とか『これは、いやなの』と言ったところで、それが通った経験がないからだと思うのね。だから黙っていようと決めたのか、そうやってスイッチを切るんだと思う」

(中略 )「信じられないような敏捷な動きをするかと思えば、ボーッとして呼んでも返事をしない。

何かで注意されると、そこで感情を切ってしまって、フリーズすると何時間でも無表情のまま立ち尽くす。記憶をそうやって飛ばすので、注意されたことが積み上がらない。だから、何度でも同じことをやる。これ、『解離』なの」

出典黒川祥子著 誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち

里親として被虐待児を養育する場合は、この「フリーズ」にどう向き合うかが、ひとつの困難になる…とも語られています。

「解離」は日常的には見かけない反応なので、親としてもどう向き合っていいかわからず、困惑するわけですね。年端もいかない子どもが無表情で何時間も立っている…虐待はまさに、「心に対する殺人」であることがわかりますね。

ひどすぎる児童養護施設も存在

ショッキングだったのがこの話。非常に劣悪な児童擁護施設もあるそうなんです。

無機質で非人間的な「施設」で育ってきた、「拓海」君の話が凄まじいです。

ベルトコンベア式の生活の後遺症もいたるところで感じた。

まず、いくら呼びかけても返事がない。平気でスルーする。

「たとえばね、『ごはんだよ』って声をかけても、たくみは自分に言われているってことがわからなかったんだと思う。

だから何も反応しないんだよね。『たくみさぁ、ママはたくみに言ってるんだよ』って背中越しに声をかけたら、ものすごくびっくりして振り返った」

家庭ではいつも、「あなた」や、「キミ」に向かって声をかける。

ごはん、お風呂、寝なさいと。

この当たり前のことが、施設での暮らししか知らない拓海くんには「驚き」だった。

「だって、考えてみれば施設では、不特定多数への声かけなんだよね。だから、自分だけに言われるってことはないの。

しかもたくみのいたところは声かけどころか、ブザーだったんだって。ブーッとブザーが鳴るから、食堂に行って出されたものを食べて、ブーッと鳴るからお風呂に行く…」

二歳から十歳まで施設にいたということは、これまで拓海くんは一度も、自分に向かって「ごはんだよ」と声をかけられたことすらなかったのだ。

ブザーに従って配膳されたものを受け取ってという、意思や思考の欠片すらない、ただのベルトコンベア。決められたルートに、ただ乗っているだけ。

出典黒川祥子著 誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち

彼がいた児童養護施設は無法地帯となっており、子ども同士、子どもと職員の「力による支配」が横行していたそうです。

虐待を逃れて養護施設に入ったとしても、そこで再び虐待を受ける可能性があるという話は、読めば読むほど鬱な気分になります…。

今はそういう話もなくなっている…といいのですが。

全てのエピソードがリアルで、重いです。これ以上は見たくない、と思う一方で、ページをめくる手が止まりませんでした。

この本が多くの人に読まれ、一刻も早く社会が変わっていくのを願うのみです。全国民必読にしてほしいレベルの作品です。ぜひ。

もっと詳しく読みたい方へ

日本の社会的養護の現状については、こちらのレポートが詳しいです。ざっくりいうと「日本は施設養護偏重であり、里親による養護が進んでいない」という指摘。

日本における社会的養護下の子どもたち|HRW

「入り口」で虐待を防ぐ意味合いもある「赤ちゃん縁組」についても知ってもらいたいです。

こちらの作品も合わせて。

虐待に関するルポとしては、こちらもおすすめ。虐待にまつわる問題がよく整理されており、理解を深めてくれます。

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