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【本と雑誌のニュースサイトリテラより】

TBSアナウンサーの雨宮塔子が7月下旬から『NEWS23』(TBS)のキャスターに就任する。

『NEWS23』といえば今年3月、安倍政権から目をつけられたアンカーの岸井成格氏と膳場貴子キャスターが“圧力降板”させられ大きな波紋を呼んだが、その後任である星浩氏がまったくふるわず、テコ入れとして雨宮を投入するということらしい。

雨宮は昨年12月30日、TBS恒例の年末特別番組『報道の日2015年ニッポン・ゼロからの70年』で関口宏と共に司会をつとめた際、17年というブランクを感じさせず、好感度も抜群だったことも今回の抜擢を後押ししたようだ。

ところが、ここにきてその雨宮に対するバッシングが巻き起こっている。それが雨宮への“母親失格”というバッシングだ。

発端は「女性自身」(光文社)7月19日号の「雨宮塔子『2児押しつけ帰国』と『パリ同居現パートナー』──『キャスター決断』の陰に『後妻の忍従』!」という記事だった。

雨宮は1993年にTBSに入社したが、99年には退社し単身パリに渡っている。その後の2002年には人気パティシエの青木定治氏と結婚、2児をもうけたものの14年3月に離婚した。

記事が問題にしているのは、雨宮がパリに残した2人の子供の扱いだという。今回、雨宮はキャスター復帰に当たり子供たちを離婚した前夫の青木氏に託すという決断をした。しかしそれに対し、青木氏の再婚した妻が憤慨しているというのだ。

「2人の子供を押しつけておいて、自分は帰国するなんてあまりに身勝手。私はベビーシッターじゃない!」

「女性自身」は現妻から直接ではなく、その知人からの又聞きとしてこのコメントを紹介しているが、

これに対しネットを中心として「中山美穂と同じ臭いがする」「離婚だけでも身勝手なのに仕事のために子供を捨てるなんてあり得ない」「雨宮のわがまま」「最近子供捨てる母親増えてきたわ」などと“母親失格”との批判が殺到、

さらには「ニュースキャスター失格だな!」など仕事に絡めたバッシングさえ巻き起こったのだ。

だが、前夫に子供を託して仕事をするというだけで、どうして“母親失格”“子供を捨てた”などと批判されなければならないのか。

そもそも雨宮と青木氏は離婚にあたりフランスの法律に則り子供たちの親権を共同で持った。そのため離婚以降も平日は雨宮が子供たちと生活し、週末は青木氏がというスタイルで子供たちを養育してきた。

しかも雨宮のキャスター復帰を報じた「週刊文春」(文藝春秋)7月7日号には、一度はオファーを断ろうと思ったが子供や家族からの後押しで復帰を決断したという雨宮本人のコメントが紹介されている。

家族とどんなやりとりがあったかの質問に、雨宮はこう答えている。

「青木には、『子供たちから、この仕事は諦めてほしくない、でも自分たちはパリにいたい、パパと暮らせないかと聞かれた』と話したら、『子供たちがそう言うなら、僕が引き受ける』と即答してくれました」

パリで生まれ育った13歳と11歳になる子供たち自らがパリで父親と生活することを望み、父親も快諾してそれが叶えられた。子供にとっても両親にとってもこれほど幸せなことはないだろう。

だがこうしたフランス、いや先進国の常識は日本では非常識になるらしい。それは日本社会が「育児は母親がすべき」「子供にとって母親と暮らすのが一番の幸せ」という母性神話に今も支配されているからだ。

例えば14年の中山美穂、辻仁也夫妻の離婚の際、子供の親権を手放した母親の中山に非難が殺到したことは記憶に新しい。

このときも、フランスで生まれ育った息子が父親とともに現地に残ることを希望したにもかかわらず、「母親のくせに息子を捨てた」などと感情的なバッシングが巻き起こった。

今回の雨宮バッシングもまったく同様の構図だが、離婚した後、どうして子供が父親との生活を選ぶことが“母親失格”になるのか。

逆に日本では離婚すると子供を当然のように母親に押しつけ、養育費さえ支払わない父親がかなりの数に上っている。こちらのほうがずっと異常だろう。

たとえば、2011年度の厚生労働省調査によると、離婚した母子家庭で養育費の取り決めをした母子家庭は38%と低いが、これに輪をかけて実際に支払いを受けているのはその中でもたった20%という結果が出ている。

多くの父親が養育費を支払わずに“逃げて”いる実態が明らかにされたが、さらに母子家庭に支払われる養育費の平均月額は約4万3000円とこれまた激安だ。

日本の民法は離婚時の養育費支払いを義務付けていないが、これは明らかに子どもの福祉を無視しており、母子家庭貧困、子供の貧困の一因となっている。

著名人にしても、離婚した男性の側はどんなに無責任でもほとんど批判されない。

舛添要一前東京都知事が婚外子に対する養育費の減額を要求したり、ジャニーズの少年隊・植草克彦が前妻との子供への養育費減額訴訟を起こし敗訴した際も、大きな批判やバッシングの動きにはまったくならなかった。

今回の「女性自身」が悪質なのは、こうした日本の悪しき母親責任論を体現していることに加え、雨宮の元夫の現在の妻(の友人)に代弁させる形で雨宮に対するこんなバッシングさえ展開していることだ。

「フランスでは前妻に結婚当時と同じステータスを保証する義務があるらしく、青木さんは今も雨宮さんに生活費を払っているそうです。

そのことにも彼女は不満を漏らしていました。『子供たちの通うインターナショナルスクールの学費も高額で、ただでさえ大変。だから私は経済的なことも考えて子作りを諦めたのに、なんであの人だけいい思いをし続けているの?』とも話していました」

記事では雨宮が高級ランチを食べていることなどをあげつらい“セレブ生活”などと揶揄しているが、しかし学費、生活費を支払うのは父親として当然のことで、それを分担させた母親への批判はまさに筋違いだ。

毎度毎度ウンザリさせられる“母性神話”の押しつけ。これは芸能人ママに向けられる“育児放棄バッシング”とも共通する悪しき母性神話の刷り込みだ。

働く著名人が子育てを夫やベビーシッターに分担してもらうだけで、浴びせられる的外れなバッシング。そして置き去りにされる父親の子育てに対する責任論。これらに安倍政権による子育て政策の軽視が加わるのだから、少子化が解決しないのも当然だろう。

夫婦が子育てを等しく分担、共有し、家族だけでなく、国や自治体、社会全体がそれに協力していくことは世界的な流れであり、

少子化を食い止める唯一の方策でもあると考えられているが、日本社会の旧態依然たる母親への責任おしつけは一向に改まる気配はなく、さらに加速さえしているように見える。

「女性自身」をはじめとする女性週刊誌は今回のような母親バッシングは決して女性のためにならないことを、肝に銘じるべきだろう。

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