今から22年前の4月30日、生後わずか2時間で電話ボックスの中に捨てられた赤ちゃんがいました。

深夜の電話ボックスの中にひっそりと置かれた赤ちゃん。見下ろした母親はそのまま去ることができずある場所へ電話をかけました。「お願い、今すぐ来てください。生まれた赤ん坊をここに置いて行きます。」母親が電話をかけた先はサマリタンというボランティア団体でした。

ロンドン東部に住んでいたその母には既に6人の子供がいました。複雑な関係の相手との間にできた赤ちゃんを自宅の浴室で一人で出産。その後、毛布に包んで街の電話ボックスに捨てに行ったのです。

その後、逃げるようにその場から去った母。ボランティア団体が駆け付ける前に、一人の男性が家族に「今から帰るよ」と伝えるためにこの電話ボックスを使用しようとして、赤ちゃんを見つけました。その男性は赤ちゃんを病院へ連れて行き、病院側は彼女が4月に捨てられていたために、April(エイプリル)と名付けることに。

その女性は現在22歳になった

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病院に引き取られていた間は、エイプリルと呼ばれていた女性でしたが、心優しいパキスタン人一家に引き取られ「キーラン」という新しい名前で呼ばれるように。キーランさんの実の母のことがわかるまでに約2年ほどかかったそう。8人目の子供を出産するために病院にいた女性から身元が判明したのです。

キーランさんを見つけた男性は…

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キーランさんを電話ボックスで見つけた男性は、キーランさんのことを何かと気にかけ、キーランさんが新しい家族に引き取られてからもプレゼントなどを送って来てくれたそうです。でも児童福祉法により、その男性は今後一切のコンタクトを断つようにと命じられ、ある日を境にその男性はキーランさんの目の前から姿を消してしまいました。

法的に18歳になると自分を助けてくれた人を探せるということを知ったキーランさんは、あの日助けてくれた男性に、面と向かって一言お礼を言いたいという気持ちを持ち続けてきました。

児童福祉センターのスタッフに問い合わせてみたのですが、「ナイジェリアの血を引いている男性で、多分名前はジョン・キャンベルかジョー・キャンベルだったと思う」というあやふやな情報しか入って来ませんでした。誰も彼の連絡先を聞いてはいなかったのです。

当時、キーランさんの母は暴力的な関係の真っ只中にいた

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生んだ我が子を捨てざるを得ない状況とはいかなるものなのでしょうか。切羽詰まった状況下で、サマリタンというボランティア団体に救いの電話をした時にキーランさんの母は「付き合っている男性が暴力的だから、この子供を諦めざるを得ない」「気分のムラが激しく、妊娠中もしょっちゅう暴力を振るわれた」と話したそうです。

どこまでが本当かは私たちにはわかりません。でも、後にキーランさんが実母に何があったかを福祉スタッフから聞いた時、自分を捨てた母のことを悪く思いたくはないと思ったようです。

その後、警察にも自分がキーランさんを捨てたことの事情を説明した母親。当時の暴力的なパートナーは前の恋人を30回刺したという殺人容疑で逮捕、現在はカナダの刑務所で服役中だそうですが、子供を捨てた母親に関しては罪が科せられることはなかったそうです。

本当の父親にも、そして母親にも一度も会わずに来たキーランさん。8歳の時に「自分は両親に似ていない」と気付き、里親になった両親から事情を聞かされたと言います。それ以降、数人のきょうだいとは繋がることができ、現在はそのうちの数人と連絡を取ることもしているとか。

キーランさんは、駅などに無料で配布されている英紙「Metro」に自分を拾ってくれた人のこと、そして自分を捨てた母のことを語りました。「22年前に自分を拾ってくれた男性に直接会って一言でもお礼が言いたい」そう綴った記事を数日後、この男性の同僚が目にしたのです。

そして命の恩人に出会えた!

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「22年前、電話ボックスで私を拾ってくれた人を探しています。」キーランさんが先日インタビューに答えた記事に目を留めたのは、ジョー・キャンベルさんの仕事の同僚でした。「これ、君じゃないかい?」と聞かれたキャンベルさん。あの時のあの赤ちゃんが自分を探していると知り、感激でいっぱいに。そして掲載先の新聞社に連絡。再会の運びとなりました。

当時30歳だったジョー・キャンベルさんは現在52歳に。念願かなってやっとまた出会うことができた二人。22年という時を経て、キーランさんにとってもようやく自分の命を救ってくれた恩人に感謝の気持ちを伝えることができたのです。

キャンベルさんはキーランさんが5歳になるまで、プレゼントを贈ったりして訪ねていたそう。自分でキーランさんを養子にしたいとも考え、児童福祉スタッフにそう申し出たこともありました。ところがキャンベルさん自身が独身であったためにそれは却下となったのです。

後に、上は17歳から下は7歳まで5人の子供に恵まれたキャンベルさん。子供たちには時折、キャンベルさんが出会った赤ちゃんのことを話して聞かせていたそう。福祉スタッフから連絡を止めるように言われても、キャンベルさんの心にはキーランさんはずっと存在していたのです。

キャンベルさんは22年前の写真を大切に持っていた

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写真を撮ることを許されたキャンベルさんは、22年前のあの日、キーランさんと一枚の写真を撮りました。それを大切に持っていたということで、自分に子供ができてもどれほどキーランさんを気にかけていたかがわかりますよね。

そんな心の温かい人に拾われたことを知って、キーランさんも胸が熱くなったことでしょう。今の自分がいるのは、キャンベルさんのおかげといっても過言ではありません。

そしてキャンベルさんにとって何より嬉しいのは、現在、キーランさんが幸せな生活を送っているということ。既に2歳の子供の母親であるというキーランさんを、キャンベルさんは妻や子供たちに紹介したくてたまらないそうです。「人生で一番嬉しい出来事だよ。まさかこんな日が来るなんて思ってもいなかった」とメディアにも喜びを語りました。

SNSもそうですが、メディアの力というのはやはり偉大ですね。あっという間に人と人の繋がりが生まれるなんて。キャンベルさんとキーランさんが今回繋がったことで、また双方の家族も繋がっていくことができるでしょう。

キーランさんは、いつの日か自分を産んだ母親にも会いたいと願っています。ひょっとしたらその日は、そう遠くない将来にやってくるのかも知れません。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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