知ってるようで知らない、だけど気になるあの仕事を深掘り取材するコーナー「シゴトペディア」前回に引き続き、「万引きGメン」のお仕事をご紹介します。

万引き犯を一目で見分けるコツ、万引きGメンをする上で活きるスポーツなど、数々の興味深い内容を語ってくれた「エスピーユニオンジャパン」代表取締役会長の望月守男さん。

日本で最初の万引きGメンでもある望月さんが発した「万引きGメンという言葉がなくなればいい」という意外な発言…その言葉の真意について迫りました。

万引きによるロス金額はそこまで多くない

――どうして「万引きGメン」という言葉がなくなればいいと思われたのでしょうか?

望月:万引き犯を確保して警察に引き渡すというフローを作ったのは私なんですが、それがお店のロスを増やす原因にもなっていたんです。

――万引き犯を捕まえれば、お店のロスは減るように思えますが…。

望月:実は万引きによるロス金額ってそんなに大きくないんです。

――そうなんですか!?でも「万引きが多発しています」という貼り紙をスーパーでよく見かけます。

望月:それは荷受や伝票ミスによるロス、廃棄ロスといった、店舗側の管理ミスによるロスを万引きに責任転嫁しているケースも多いんです。そうなると、当然万引き犯を捕まえてもロスが減らないのですが、そうすると今度は「万引きGメンの腕が悪いから」と、こちらに責任転嫁をしてくるお店もあります。

何気なく見かける貼り紙には、そんな裏事情が隠されていることもあったのですね…!このように非協力な店舗に当たってしまうのが、この仕事で辛い瞬間のひとつだそう。

望月:むしろ、万引きによる直接的な被害額より、捕まった人に恨まれて、近所に悪い噂を流されるほうが大きな損失になるんです。万引き犯本人だけでなく、その知り合いまで店から足が遠のく可能性がありますから。なので、事務所での説得が万引きGメンの腕の見せどころ。買い物客としてまた来店してもらえるように説得できればベストです。

以前、万引きで捕まったことが原因で自殺してしまったり、家庭が壊れてしまったりというケースに直面したときに、「やり方を変えないとだめだ」と思うようになりました。万引きGメンって、人の人生を変えてしまう仕事だということに気付いたんです。

接客サービスの質を上げれば万引きは減る?

――でも、捕まえる以外に対抗策はあるんですか?

望月:えぇ、もちろん。「接客サービスの質を上げれば万引きはなくなる」というのが私の持論です。

――それは店内をこまめに見回って万引きする隙を与えないということですか?

望月:それもありますが、一番の目的は店を好きになってもらうことです。明るくサービスの行き届いた、いわばディズニーランドのような雰囲気のお店で万引きをしたり、悪い噂を流そうなんて思わないはずです。

――理屈としてはわかりますが、それって綺麗ごとのような気も……。

望月:そう思われるかもしれません。しかし、弊社の「STEPMAN」という、お客様をお出迎えからお見送りまで楽しませることをモットーにした販促推進部隊がいるのですが、彼らの接客で万引きをやめたという手紙が送られてきたことがあります。

万引きをして店を出てきたところで、手厚い接客を受けた方が『こんな感じのいい接客をしてくれるお店なのに、わたしは万引きをしてしまった…』と反省して、スーパーの本社に謝罪の手紙とお金を送ってきたんです。もちろん、全ての人がこうして改心するわけではありませんが、万引き対策について考える機会となったエピソードのひとつです。

時代は「プロ犯罪者 VS 精鋭万引きGメン」へ

望月:とはいえ、悪質な常習犯がいる限り万引きという犯罪は完全になくなりません。なので、常習犯に対抗する精鋭部隊を解散させることはないと思います。

――普通のGメンと精鋭部隊とでは何が違うんですか?

望月:精鋭部隊は難関の入隊試験や6ヶ月の技術研修をくぐり抜けた、選りすぐりのGメンらで構成されているので、技術も専門知識も普通のGメンとは一線を画しています。基本的にチームで動いて、悪質な万引きが多発している大型店舗での一斉摘発といった業務にあたることが多いです。

――なるほど。これからはプロ対プロの戦いがメインになっていくんですね。

望月:はい、そしてこれまでの業界の流れを変えていきたいですね。

出来心の万引き犯を店作りで減らし、常習犯には精鋭部隊で対抗するというのがこれからの万引き対抗策となっていく、と望月さんは語ります。

実際に、望月さん提唱の「万引きさせない店作り(NPシステム)」が大手量販店で導入され始めているのだそう。そう遠くない将来、「これが初めてなんです!見逃してください」「もう警察呼びましたから」なんていうやりとりは、過去の遺物となるのかもしれません。

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