痴漢や暴行・強姦事件で冤罪になることほど、その人の人生を狂わす出来事はありません。日本でも決して少なくはないそうした冤罪事件で、被害者であるはずの男性が女性の嘘により加害者にさせられ、世間からは批判され、プライバシーも暴かれて生き地獄を味わった経験をした人、もしくは現在もその状況と闘っている人がいるでしょう。

このほど、2013年の秋に起こった事件により20か月もの間、世間から身を隠すように生活して来た37歳の男性が、裁判で無罪となりイギリスで話題になっています。

晴れて自由の身になった地理学教師のKato Harrisさん

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※画像はイメージです

ハリスさんは、エクセターの大学で地理学の学士を取り2001年に教師の資格を取得。教鞭を取って以来その評価は高く、過去の勤務先である南ロンドンの学校でも生徒たちから非常に好かれており「今までで最高の地理学の先生です」という評価を得ていました。

更には同僚からも好かれていたハリスさん。その後、教師としてのキャリアを積むためにロンドン、カムデンにある私学学校に移り、教壇に立っていました。ハリスさんは教師としてだけでなく、王立地理学会のメンバーでもあったほど彼の実績と経験が世間に評価されていた優れた教師だったのです。

ところがある日、彼の人生は一変した…

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2013年の秋、1人の少女が「ハリス先生に3回レイプされた」と告白したことで逮捕されてしまったのです。その少女は学校の中でもいろんな意味で「問題児」として扱われていました。

両親が富豪家である少女は、大抵のことは誰もが我儘を聞いてくれるという裕福な環境で育ち、気に入らないことがあればすぐに不快感を表し、14歳という思春期の難しい年ごろも重なって精神的に不安定な様子だったそうです。

週に1度ニューヨークまでセラピーに通っていた

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なんとその少女は、週に一度ロンドンからニューヨークまで精神科医の下でセラピーを受けるために通っていたというのだから驚きです。それを14歳の子供にさせてしまうほど親も娘をたっぷり甘やかしていたのでしょう。

「先生にレイプされた」と聞いた両親は驚き、普段から懇意にしている警察官僚と捜査官に直々にハリスさんのことを調査するように依頼しました。

3度のレイプの事情徴収を行ったものの…

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警察の事情聴取に少女はあまり協力的でなく、Facebookのアカウントも警察側が見せてほしいと依頼しても「プライベートなものだから困る」と拒否。度々事件の詳細を聞いても「急なことでびっくりして抵抗できなかった」「ランチの時間に教室に呼ばれてレイプされた」と供述する割には、矛盾した点がいくつか生じて来たのです。

昼間に起こったと言い張るレイプ事件を、誰も目撃していなかったこと。そのため少女以外は誰も教師に報告をしていないこと。教室でレイプされたと供述にあったが、教室のドアはガラス張りになっており、ランチタイムは廊下に多くの生徒がいた。そんな状況で誰も気付かないのはおかしい。ハリス先生と少女の接点はほとんどない…そうした点から「もしかして虚偽では」という疑いが持ち上がったのです。

ハリスさんは冤罪を主張し続けた

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「これまで勤務してきた学校で、生徒の連絡先を聞いたことも個人的に親しく話したことも一切ない」というハリスさん。ましてほとんど面識のなかった14歳のある少女からいきなりレイプの加害者にされて彼の人生はどん底に。警察側から何かターゲットにされるような思い当たることがないか、と聞かれるとハリスさんはこう言ったのです。

「クラス写真を撮った時に、決まって面白い顔をするのが彼女だったんです。だからここにまた一人面白い顔をしている人がいますよ、とクラス内で冗談を言ったことぐらいしか思い当たりません。」

警察側は普段の学校生活に何らかの不満を抱いていた少女が、このハリーさんの言葉をきっかけに数人の生徒からからかわれるようになったことで、ハリーさんに逆恨みの気持ちが湧いたのではないかと推測。

思わぬところから事件の加害者にさせられてしまうというケースは日本でもあったようです。これも当時14歳の女性から「二度に渡りレイプされた」と言われ、冤罪で逮捕された大阪の男性がいます。その後、女性が虚偽を認めたために男性は釈放、無罪となりましたが「14歳の子供が嘘をつくはずはない」という思い込みから適切な捜査が行われないまま男性は逮捕され起訴され、有罪判決を受けてしまったのです。

「全てを失いましたがまた一から頑張ります」

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今回、少女の虚偽が発覚し無罪判決が下されたハリスさんですが、現在は休職中。事件の加害者にされて以来、有名私立校のキャリアを退かなければならない羽目になり、世間の風当たりも冷たく息をひそめて隠れるように暮らして来たといいます。そんなハリスさんは間違いなく被害者の立場。

今回も、メディアは堂々とハリスさんの姿を写真に収めあれこれ報道しています。ところが、肝心の加害者である少女のことはほとんど触れていません。名前さえも伏せての報道にこの事件に怒りを感じているユーザーは少なくない様子。

「だからどうしてはっきりしたことがわかるまで双方の名前を伏せておかないのよ」「未成年であっても立派な加害者だろ。彼の人生は台無しじゃないか」「加害者のプライバシーを守り過ぎる。不公平!」といった声が寄せられています。

裁判所を出たハリスさんは、「支えてくれた元同僚や家族に感謝の気持ちでいっぱいです。晴れて無罪となり自由の身となりました。また一から出直します」とコメント。この事件で彼が失ったものはあまりにも大きく、精神的にも相当な負担になったに違いありません。

名誉も定評もある人がこうしたとんでもない冤罪のせいで、一生を棒に振ってしまうことほど悔しく悲しいことはないでしょう。それでも無罪が表明されたからには、また頑張って前に進むしかないのです。ハリスさんにもどうかこれからの人生、力強く生きて行ってほしいと願う筆者です。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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