記事提供:まぐまぐニュース!

※本記事は2016年7月20日に『まぐまぐニュース!』で公開された記事を転載しています

アメリカで空前の大ヒットを巻き起こしているスマホ用の無料アプリ・ゲーム「ポケモンGO」(Pokemon Go)。

日本では今日にもリリースするとの噂ですが、NY在住でメルマガ「ニューヨークの遊び方」の著者・りばてぃさんは、アメリカで「ポケモンGO」が爆発的にヒットした理由を分析。

なぜ「ポケモンGO」は、これだけ多くのアメリカ人を魅了して止まないのか?そこには、日本からは窺い知ることのできない、アメリカ人と「Nintendo」「Pokemon」、そして日本のポップカルチャーに対する、深くて長い「愛」の歴史がありました。

アメリカで「ポケモンGO」リリース

ニューヨークの街角では、スマホを片手に出歩く人々の姿を見かけることは、以前から頻繁にあって、別に珍しいことではなかったが、今週は、スマホを片手に出歩く人々がどっと増え、

「ピカチュー、どこでゲットできるの?」

とか

「なんだ、またズバットかぁー」

のような会話が、特に公園やパブリック・スペースで飛び交っていた。

突如、ポケモン旋風が吹き荒れたのだ。

ブログの方でも軽くご紹介したが、7月6日にオーストラリア、ニュージーランド、アメリカの3カ国で先行リリースされた無料のスマホ向けアプリ・ゲームの「ポケモンGO」(Pokemon Go)が、たった1週間でとてつもない記録を続々と打ち立てた。

アメリカ国内だけでも、連日、報じられる「ポケモンGO」のダウンロード数は、数百万単位、数千万単位へと増加。

ダウンロードしただけでなく、実際に使っている人々、つまり、アクティブ・ユーザー数も、1日最大2100万人に達し、

あっという間にTwitterを抜きSnapchatやGoogleMapに迫る勢いで、デビューしてたった1週間しか経っていない時点で、モバイル・ゲームとして米国史上最大のヒット作になったとも報じられている。

また、「ポケモンGO」自体は無料のゲーム・アプリだが、ゲーム内で販売しているゲーム中に使用する各種アイテムの売れ行きも好調だ。

推定額が明らかにされている米国内のiPhone向けアプリ(iOS)の売上げランキングによると、リリース開始からたった14時間という史上最速のスピードで、無料ゲーム部門の1位に!!!

その売上額は、デビューから数日後に、1日160万ドル約1億6000万円)に達したという。

当然のことながら、ここに、金額が明らかにされていないアンドロイドOS向けの売上げも加算されるし、今後、アクティブ・ユーザー数が増えれば、ゲーム内販売からの売上もさらに増えるだろう。

そんなわけで、任天堂の株価も急騰

「ポケモンGO」リリース後、わずか4営業日で任天堂の株価は6割も上昇し、年初来高値を更新。時価総額も、約8カ月ぶりに3兆円の大台を回復した。

今後、「ポケモンGO」は、スマホやインターネットが広く普及したドイツやイギリスなどのヨーロッパの先進諸国や、日本でも、順次、リリースされる予定になっているので、

その反響次第では、さらに株価が上昇する可能性もあるという、とんでもない状況だ。

「ポケモンGo」がアメリカで神がかり的な大・大・大ヒット!!!

外に出て遊べるゲームにしよう

「ポケモンGO」は、スマホの位置情報トラッキング技術(location‐tracking technology)や拡張現実(augmented reality、略してAR)機能などを活用し、

プレイヤーが自分の今いる現実世界をもとにしたAR世界の中で、スマホの画面上のデジタル・マップやカメラを通し、モンスター(ポケモン)を探し出し、捕まえるというゲーム。

他にもいろいろな楽しみ方ができるが、より多く、より珍しいポケモンを捕まえようという「宝探し」的な遊び方だけでも十分に楽しめる仕様になっている。

ポケモンの捕まえ方は、見つけたポケモンに、スマホの画面上を指でスワイプしてポケ・ボールを投げつけるだけ。

子ども向けゲームなので、誰でも簡単に楽しめるのも魅力の1つだろう。

肝心のポケモンは神出鬼没で、なんらかの条件を満たすと、どこにでも出現する。

ただし、多くの場合、より頻繁にポケモンが出現しそうな場所を求め、みんなスマホ片手に出歩くことになる。

ただ出歩くのではない。

デジタル・マップには、今、自分がいる場所の近くにいるポケモンの種類や、そこまでの漠然とした距離(1~3の足跡の数で表示される)を示す「ニアバイ」(Nearby、近隣という意味)機能がついており、

自分が移動すると、スマホの位置情報トラッキング技術によって、その内容が変化するため、これをコンパス代わりに使って効率的にポケモン集めを楽しめるようになっている。

そして、より多くのポケモンがいる場所を探していくと、公園パブリック・スペースなどに導かれることが多い。

この設定の背景には、今からちょうど1年ほど前の2015年7月11日に、世界中の大勢の方々に惜しまれながら55歳の若さで亡くなった、任天堂の岩田聡前社長の思いが込められているとも言われている。

「ポケモンGO」の開発を進めていた岩田さんは、

「ゲームは確かに楽しいが、それが原因で子供達が外で遊ばなくなった。外に出て遊べるゲームにしよう」

と語られていたそうで、「ポケモンGO」がリリースされた後、その開発に関わった方から、

「岩田さん、ようやくここまで来ました。どうか空からどれだけの人々が外へと飛び出していくか、見ていてくださいね。

Pokemon GOが、現実の世界の捉え方を変えるきっかけになったら。世界が素晴らしい場所であることに気づくきっかけになってくれたら、と願っています」

とのコメントも。

ただ今、世界中で任天堂岩田社長への感動的な追悼投稿が大量発生中

Pokemon GOは任天堂・岩田社長時代のエイプリルフール企画から始まった

そんなわけで「ポケモンGO」には外に出て遊べるゲームとしての魅力を高める工夫や演出が、山盛りだ。

現実世界をもとにした「ポケモンGO」のAR世界には、有名な名所だけでなくあまり知られていない穴場的なスポットにまで、

現実世界に存在する名所(歴史的な建築物、石碑や銅像ほかモニュメント、教会、学校など)に、『ポケストップ』(Pokestop)と呼ばれるチェック・ポイントが、いくつも配置されている。

そのポケストップには、捕まえたポケモンを戦わせるジムと、ポケモンを捕まえる際に必要になるポケ・ボール(Poke Ball)などのアイテムを無料でもらえることもある名所案内の2種類がある。

プレイヤーが持ってるポケ・ボールは無限ではなく、数に限りがあるので、常時、集めておく必要があり、必然的に、ポケストップになっている名所をぐるぐる巡ることになる。

その結果、日頃、慣れ親しんでいる自宅や職場の近所で、

「これまで見過ごしていた名所の存在に初めて気づいた」

とか、

「これまで足を運んだことのない公園の奥にある素晴らしい景色を教えてもらった」

といった声も出ている。

また、現実世界をもとにした「ポケモンGO」のAR世界の名所案内が、実は、ツアー・ガイドとして役立つよ、なんていう提言まで、早くもニューヨーク・タイムズ紙で報じられていたりもする。

ニューヨークの街角でポケモンGoやってみました

ヒットの理由

上述のとおり、現在、アメリカで、空前の大ヒットとなり、あちこちで社会現象を巻き起こしている「ポケモンGO」が、「なぜ、ここまで大ヒットしたのか?」についての報道もいろいろと報じられている。

基本的なところでは、「宝探し」的な楽しさや、人間がもともと持っている「狩猟本能」を刺激するから、といった理由。

アメリカにおけるポケモン人気の高さについて指摘する声も多い。

あるいは、スマホの位置情報トラッキング技術や拡張現実機能などの最新テクノロジーを活用しつつも、子ども向けのゲームなので、比較的分かりやすく仕上がっていると評価する記者もいる。

これらの最新テクノロジーは、近年、急速に進化・発展しており、特にニューヨークでは、広告宣伝やアート展示などで様々な活用事例がすでに多数報じられ、潜在的に興味や関心を持つ人々もかなり多いと推察されるが、

最新技術なだけあって、試すのが面倒くさかったりとっつきにくいという印象が強く、そのイメージが普及の障壁になっていたが、「ポケモンGOはその壁を初めてぶち破ったと見られている。

ちなみに、「ポケモンGOの開発・運営には、同じく、位置情報トラッキング技術や拡張現実機能を使って、

陣取り合戦やスタンプラリーなどの要素を楽しめるスマホ向けゲーム・アプリの「イングレス」(Ingress)を作った「ナイアンティック・ラボ」(Niantic Labs、Googleの社内ベンチャーで2015年8月に独立)が協力している。

なお、そのナイアンティック・ラボは、7月16日、東京で1万5000人規模の参加を見込むイベント「AEGIS‐NOVA TOKYO」(イージスノヴァ東京)を開催しており、流行や最先端技術に敏感な一部の人々の間では、日本を含め、世界的に人気を得ている。

また、「ポケモンGOのゲーム内のアイテムを使って、集客アップや売上げアップに成功したお店が出てきたことも人々の興味や関心を引き付けた理由の1つであることは間違いないだろう。

ニューヨークにあるピザ屋、L'Inizio Pizzaのマネージャーが、たまたまポケストップになっていた自分のお店に、

「ポケモンGO」のゲーム内でポケモンを呼び寄せるアイテムを試しに10ドル分購入して置いてみたら、そこに集まるポケモンを捕まえるためにやってくるお客さんがどっと増え、その日の売上げがなんと75%もアップしたとニュースにもなっている。

このピザ屋の他にも、すでに類例は多数報告されており、世界の広告産業の首都とも呼ばれるニューヨークの広告業界は、「ポケモンGO」を活用し、何か新しいより効果的な広告宣伝やプロモーションができないかと、右往左往の大騒ぎだ。

他にもいろいろ、例えば、上述のツアー・ガイドとしても役に立つといった指摘なども含めて、様々な視点から、「ポケモンGO」がヒットした理由は挙げられており、どれも一理ある。

複数の理由が組み合わさってヒットした、とも言えるだろう。

しかし、それにしたって、あっという間にこれほどの社会現象を巻き起こし、業界の記録や常識をすべて塗り替える勢いで、史上空前の大ヒットになった背景には、何かもっと重要で本質的な理由が潜んでいるはずだ。

その理由とは、たぶん、

『近年のアメリカで、日本のポップカルチャーや日本文化の象徴的存在になっているNintendoとPokemonによるコンテンツとしての魅力があったから…』

ではないだろうか?

日本文化が本質的な魅力?!

アメリカで「ポケモンGO」が大ヒットした本質的な理由が、

『近年のアメリカで、日本のポップカルチャーや日本文化の象徴的存在になっているNintendoとPokemonによるコンテンツとしての魅力があったから…』

だとすると、アメリカ人、日本人を問わず、実際に、NintendoPokemonが、近年のアメリカ国内でどのように受け止められてきたのかをよく知らない方々が、

「ポケモンGO」に関連して、今、アメリカで何が起こっているのか、さっぱり分かっていなかったり、勘違いしていたりするのも、当たり前ということになる。

そんな方々が、この現象について、的外れだったり、とんちんかんな解説や報道をしがちなのも、たぶん、このためだろう。

特に、多くの日本人は、実際に、NintendoやPokemonが、近年のアメリカ国内でどのように受け止められてきたのかをよく知らない。

だから、「ポケモンGO」が日本でリリースされても、ここまでの人気を得られるかどうか、早くも疑問視する声があがっていたりもする。

14日放送の「ミヤネ屋」(日本テレビ系)で、コメンテーターで読売テレビ報道局解説副委員長の春川正明氏は、ポケモンについて、

「アメリカと日本でだいぶ違うんですよ。日本だと(ユーザーは)小学生って感じじゃないですか。

アメリカって結構、若い人たちも『ポケモン』とか『ピカチュウ』とか好きなんです。日本でポケモンGOをリリースした場合、20代のユーザーをどれだけ取り込めるかがカギ」

と指摘したとのこと。

何がどう違うかということは説明できなくても、

アメリカと日本でだいぶ違う

ということは、皆さん、よく分かっているらしい。

小学生向け?ミヤネ屋で「ポケモンGO」の日本での人気に疑問視

とにかく、文化や価値観やライフスタイルの違いと同様に、NintendoやPokemonに対する人々の受け止め方は、

「アメリカと日本でだいぶ違う」

のだ。

それじゃ、いったいNintendoやPokemonは、近年のアメリカ国内でどのように受け止められてきたのか?

とりあえず重要だと思われるポイントを、以下、3つ挙げてみよう。

〈1〉任天堂は、一部のマニア向けの最新テクノロジーを、世間一般の人々にも魅力的で、誰でも簡単に楽しめる身近な存在に変えた

まず、任天堂は、ビデオゲーム機の画質が粗いドット絵だった頃に、「ドンキーコング」に登場するプレイヤーのキャラクターとして、あのマリオを生み出したゲーム・メーカーとしてアメリカでは有名だ。

アメリカのビデオゲーム界では、マリオが誕生する前、あんな感じの親しみやすく、可愛らしいキャラクターは存在しなかった。

たぶん、ゲームに登場するキャラクターを可愛く見せようという概念すらなかっただろう。

単なる「棒」がプレイヤーのキャラクターであることも珍しくなく、また操作性やゲーム性も悪かったので、アメリカでゲームに興味を持っていたのは一部のマニアだけだった。

そんなアメリカに、任天堂は、「カワイイ」キャラと、いかにも日本の企業らしい細かな部分にまで配慮の行き届いた、優れた操作性やゲーム・バランスなどによる革命をもたらし、

ビデオゲーム、つまり、当時、一部のマニア向けだった最新テクノロジーを、世間一般の人々にも魅力的で、老若男女を問わず誰でも簡単に楽しめる身近な存在に変えたのだ。

家庭用ゲーム機のファミリー・コンピューター(アメリカではNintendoという名前で呼ばれている)が、大ヒットした最大の要因もそこにあるだろう。

マリオは、その後、「スーパー・マリオ・ブラザーズ」シリーズへ。

マリオの他にも「ゼルダの伝説」シリーズなど、当時としては異例の「カワイイ」魅力的なキャラクターと誰でも簡単に楽しめるゲームを生み出して、さらに多くの人々を魅了することに…。

その後、世界で評価されることになる日本の「カワイイ文化」をアメリカで普及した先駆者と言ってもいい。

実際、現在、アメリカのハロウィンや、コミックコン(漫画やアニメの集会イベント)などでは、マリオ他、任天堂のゲーム・キャラクター姿に仮装したり、コスプレする方々をかなり頻繁に見かける。

ちなみに、マリオなどのキャラクターをデザインしたのは、現在、任天堂の代表取締役でクリエイティブフェロー、ゲームプロデューサーでもある宮本茂さん。

ニューヨークにある任天堂の直営店、「任天堂ニューヨーク」(Nintendo New York、以前はNintendo Worldと呼ばれていた)の2階にある博物館的な展示スペースには、

宮本茂さんを紹介する特設コーナーが設けられ、そこで記念写真を撮影する方々を見かけたこともある。

ニューヨークのタイムズ・スクエアがスーパー・マリオ・ランドに変身?!

NYコミコン2015 日本文化の影響を受けてるコスプレ姿

行列のできるゲームのショールーム Nintendo World Store

〈2〉日本のポップカルチャーや文化の象徴的存在になったポケモン

そんな任天堂が、アメリカでのアニメ番組の放映権や関連ゲームを含むキャラクター・グッズの版権を取得したのが、Pokemonだった。

実は、上述の「任天堂ニューヨーク」は、もともと任天堂が2001年11月のオープン時から2005年1月まで、「ザ・ポケモン・センター」(The Pokemon Center)という名前で運営していたものだったりもする。

日本の「カワイイ文化」をアメリカで普及した先駆者としてのイメージも持つ任天堂と、ピカチューを筆頭に可愛いらしいキャラクターがいっぱい登場するポケモンの親和性は抜群で、アメリカでポケモンは大ブレイクした。

しかも、ポケモンのブレイクは、アメリカ国内で、日本生まれのアニメや漫画の人気が急速に高まっていった時期にちょうど重なったため、

単なるアニメやゲームとしてではなく、『日本のポップカルチャー』や『日本文化』や、さらには『日本人の美徳』のようなものまで内包し、象徴する特別な存在の1つとして、アメリカ国内で広く認識されるようになっていったのだ。

そう、『日本人の美徳』まで無意識のうちに感じさせる存在になってるからこそ、いろいろと日本人には理解できない現象も起こる。

例えば、大統領選挙キャンペーン中のヒラリーさんが、オハイオ州の公園での公式集会に多くの支持者を集めるために、

「ポケモンGO」ゲーム内のその公園のポケストップに、ポケモンを呼び寄せるアイテムを配置すると大々的に呼びかけて、それがニュースになったりもする。

もしこれが、他のアプリ・ゲーム、例えば、アングリー・バードやイングレスのようなゲームだったら、たぶん、大ヒットしていても、深い文化や美徳のようなものを感じさせることはないので、それに乗っかって大々的に呼びかけたりしなかっただろう。

なお、近年、日本のポップカルチャーや日本文化は、世界各国で興味や関心を持たれ評価されているが、

その背景には、何かしらのかたちで『日本人の美徳に対する共感や憧れが潜んでおり、そこに気づけるかどうかがグローバル時代を生きる日本人にとって、重要な意味を持ってくるとも思う。

(これに関しては、幻冬舎plusの連載で詳しく書いたのでそちらをどうぞ)

「ポケモンGO」に便乗?ヒラリー陣営、ストップで集会

・幻冬舎plus連載:ニューヨーク在住の日本人マーケティング・コンサルタントが語る「日本のビジネスに本当に必要なこと」

アメリカで、ポケモンが特別な存在になっていることを示す事例は、他にもある。

毎年、サンクスギビング・デーのニューヨークで開催されるパレードには、ピカチュウの巨大バルーンが登場し、チビッ子たちに大人気。いくつもあるバルーンの中でも、特に人気のある代表的な存在になっている。

また、毎年2月初旬に開催され、長年に渡ってアメリカで最も視聴されるテレビ番組で、国民的行事とも言われるアメフト(NFL)の全米ナンバーワンを決める「スーパーボウル」は、

試合中に放映される30秒のCM枠の料金が最も高いということでも世界的に有名(今年は1枠平均500万ドル、約5億円)になっており、

必然的に、世界屈指のCMクリエイターたちが制作した力作CM(一般的にスーパーボウルCMと呼ばれる)は、放送後、テレビ局の垣根をこえ、各局のニュース番組やトーク番組、さらに各種新聞、雑誌、インターネット・メディアなどで取り上げられたり、

人気投票の結果も紹介されるのだが、今年2016年、YouTubeユーザーが選んだスーパー・ボウルのベストCMは、可愛らしいピカチュウが登場する「ポケモン20周年記念CMだった。

さきほど、アメリカのハロウィンや、コミックコンなどで、任天堂のゲーム・キャラクター姿に仮装したり、コスプレする方々をかなり頻繁に見かけるとお伝えしたが、ポケモンのキャラクターについても同様だ。

特に、ピカチュウについては、上述の任天堂ニューヨークのお店で販売しているピカチュウ帽子を、日常的に、普通の私服姿なのにかぶっている方々を見かけることもある。

しかも、お洒落なファッションに身を包んだモデルさんのような方々が集まるエリアにあるオープン・カフェとかで、だ。

もしポケモンが、アメリカ国内で、単なる子ども向けのアニメやゲームのキャラクターとして認識されていたら、こうした現象が起こるわけない。

〈3〉ミレニアル世代が強いノスタルジーを感じる対象になっている

この1~2年ほどアメリカでは、「ピザがインターネットを支配する」(Pizza rules the Internet)というフレーズがインターネットやマーケティング業界関係者の間で話題だ。

なぜなら、「ピザ」を取り上げると明らかにアクセスが増えるから。さらに、テレビ番組などでも「ピザ」関連の話題は視聴率アップにつながると言われるようになった。

アメリカでは「ピザがインターネットを支配する」(Pizza rules the Internet)

この不思議な現象については、メルマガ183号(2016/03/14配信)でかなり詳しく取り上げているので、ご興味のある方は過去のアーカイブをご確認頂きたいが、

なぜそういう現象が起こるのか?というと、多くのアメリカ人は、幼少期に抱いた「ピザ」に対する憧れや、ポジティブな印象や記憶が、大人になってからもずっと心の中に残っていて、

「ピザ」に関連した話題が出てくると、つい好意的に受け止め、自ら何か行動したくなってしまうから…と分析されている。

アメリカでは、平和で穏やかな環境で育ってきた、多くの子どもたちが、小学校高学年から中学生になる頃に、ピザにどのトッピングを乗せるかを選び、決めたりする中で、初めて人前で自分の意見や、嗜好やアイデンティティを表現する機会になっている。

そのため無意識のうちに、子ども時代の良い思い出ともあいまって、大人になってからも、ピザに対して、自立のシンボル、適度に威厳のあるもの、カッコいいもの…といった好意的なイメージや根深い愛情のようなものを持っている人が多い。

ところで、近年のアメリカでは、1980年代から2000年代初頭に生まれたミレニアル世代」(Millennial Generation、10代半ば~30代半ば)が、消費の中心となり経済や社会トレンドを牽引していると言われている。

幼少期からデジタル化された生活に慣れ親しみ(デジタルネイティブ)、ほとんどの人が日常的にインターネットやスマホなどを使いこなしているため、それまでの世代とは価値観やライフスタイルに隔たりがあるとも指摘されている世代だ。

そんなミレニアル世代にとって、ポケモンは、上述のピザと同様かそれ以上の存在になっていると思われる。

そんなわけで、アメリカのミレニアル世代はポケモンの話題になると、つい好意的に受け止め、自ら何か行動したくなってしまうというのである。

すでにこの点を指摘する声は、各種メディアで報じられており、自らもミレニアル世代のど真ん中だというニューヨーク・タイムズの記者によると、

リリース直後から試しに「ポケモンGO」をやってみたら、懐かしいキャラクターが続々と出てきて強烈なノスタルジーを感じ、さらに、リリース直後に彼が出会った「ポケモンGOをやっている他の方々は、ほぼ全員ミレニアル世代だったとのこと。

また、その例外だった人も、年上の兄弟にミレニアル世代がいて、影響を受けていたと伝えている。

Pokemon Go, Millennials'First Nostalgia Blast

以上3つのポイントを、ざっくり簡単にまとめて言うと、ミレニアル世代のノスタルジーを刺激して、リリース直後に爆発的に広まった「ポケモンGO」は、

任天堂の持つ「一部のマニア向けの最新テクノロジーを、世間一般の人々にも魅力的で、誰でも簡単に楽しめる身近な存在に変えてくれる」というイメージや、

ポケモンが、「日本のポップカルチャーや日本文化、さらには日本人の美徳のようなものまで内包し、象徴する特別な存在の1つになっている」という特徴などにより、

さらに幅広い世代の様々な人々をも巻き込み、空前の大ヒットに…という感じだろう。

一言で言えば、

『近年のアメリカで、日本のポップカルチャーや日本文化の象徴的存在になっているNintendoとPokemonによるコンテンツとしての魅力があったから…』

ということ、かなと。

いかがだろう?

で、今回、見てきたように、こうした日本のポップカルチャーや日本文化を背景に持つ、日本ならではの『コンテンツの魅力』は、そもそも日本国内と諸外国との間では、根本的な認識がかなり大きく異なっているため、

今回の「ポケモンGO」でもそうであるように、残念ながら、日本国内ではその重要性や影響力について、あまりよく理解されなかったりもする。

また、よくよく冷静に考えてみると、日本ならではの『コンテンツの魅力』を備えているものは、他にもいろいろ沢山、それこそ無数に潜んでいるような気もする。

そうした日本ならではの『コンテンツの魅力』に気づく感性を少しでも高めるため…という目的からだけでも、日頃から、日本国内だけでなく、諸外国の文化や価値観やライフスタイルなどの最新情報をチェックしてみるようにするのも良いかもしれない。

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