知ってるようで知らない、だけど気になるあの仕事をSpotlight編集部が深掘り取材するコーナー「シゴトペディア」。今回紹介する仕事は、テレビでもたびたび特集される「万引きGメン」。「すいません、お金払いますから」「警察はもう呼んだから」など、犯人とGメンとのやり取りは、見る人に強烈なインパクトを残します。

今回お話を伺ったのは、量販店のロス対策の一環として、店舗に万引きGメンを派遣する「エスピーユニオンジャパン」代表取締役会長の望月守男さん。

この道約50年のベテランであり、日本で最初の「万引きGメン」でもある望月さんは、現役時代には1日で18人、1ヶ月で186人の万引き犯を捕まえた記録を持つ、超凄腕Gメンなのです!

万引きGメンってどんな仕事?

ドキュメンタリー番組などで見たことはあるものの、謎の多い「万引きGメン」という仕事。普段はどういった一日を過ごすのでしょうか。

望月:スーパーなどの量販店に派遣されて、業務にあたるのが基本的な仕事の流れです。だいたい、1つの現場につき3〜4日ほど通います。初日は「いつも人がいるところ・いないところ」「店員の接客態度」「常連客」などを観察して、どこで万引きが起こりやすいかを見極めることに集中します。そして、2〜3日ほどで、店内の万引きが見えてくるんです。

――万引き犯を一目で見分けるコツはありますか? ドキュメンタリー番組などで見る万引きGメンは「顔を見ればピンとくる」と話していましたが…。

望月:やたらとキョロキョロしていたり、カゴの中に死角を作ろうとしたりといった要注意行動はあります。しかし、一番大切なのは地道な追跡と観察で、犯行の瞬間を見逃さないこと。表情や行動で判断すると誤認確保につながることもあるので、厳重に注意しています。

――万引き犯を見つけたらどうするんですか?

望月:商品を持ったまま店を出たところで声をかけて、事務所で話を聞きます。警察と違って法的な執行力はないので、いかに万引き犯を説得し、犯行を認めさせるかが腕の見せどころです。

Gメンをするのに適性のあるスポーツとは?

――万引きGメンになるには、集中力、観察力、説得力などさまざまな資質が必要とされそうですね。向き不向きというものはあるのですか?

望月:性格面でいうと、正義感が強い、几帳面な人は向いてますね。実は私自身も、非常に几帳面で気が小さい性格なんです。あとは、卓球やテニスなどのスポーツが得意な人。なぜなら、万引きGメンに必要な動体視力と瞬発力が鍛えられるから。また、万引き犯の動きを読むという点では、剣道が得意な人も適性があります。

――でも、両方の適性を持った人は少ないのでは?

望月:そうですね。でも、万引き犯を捕まえるというのは相手の一生に関わることなので、採用は慎重に行っています。うちの入社試験、結構難しいんですよ(笑)。

万引き犯の驚きのエピソードたち

入社試験や社内研修を経たら現場デビュー。万引き犯たちと向き合うことになります。テレビでは逆ギレしたり、無言を貫いたりと強烈なキャラクターがよく登場しますが、実際はどうなのでしょう。

望月:常習犯の言い逃れはすごいですよ。「覚えていない」と捕まった瞬間に認知症を装う老人や、自分の胸を触らせながら泣きつく女性もいますね。そうやって泣きついてくるのが60〜70代のおばあさまなんてこともありました(笑)。

おばあさんたくましい…と驚いてしまいますが、これは序の口。

望月:もっとタチの悪いケースだと、他に持っているものがあったら出すように言ったら、逆上して「まだ隠し持ってるって疑うの!?」と、全裸になってしまった女性もいましたね。しかも警察が来たら「この人が私を無理やり裸に…」って騒ぎ出して。開いた口がふさがりませんでした。

この他にも「盗られるような商品の置き方をしているのが悪い」「わざと万引きさせるなんて罠だ!」など、斬新な言い訳は枚挙に暇がありません。

プロも苦戦する万引き技術の進歩

このように悪質な常習犯は、万引き犯100人のうち、わずか1〜2人ほど。しかし、この1〜2%にこそ、万引きGメンが手こずらされているのだそう。

望月:万引きの手口は年々巧妙化していて、対策が難しい部分もあります。最近だと、複数人でチームを組んで商品のやり取りをする手渡し犯行が流行っていますが、犯人と商品の動きが追いにくく、犯行の瞬間を捕捉するのが大変になりました。

というのも、「覚えてない」「うっかりしてた」ととぼける万引き犯に対抗するには、どの商品をいつどこで盗んだのかを報告する調書を作り、「犯意(犯行の意志)」を証明しないといけないのです。

その他にも、「実行行為(店の商品に手をつける)」「自己の支配下に置く(衣服やカバンの中に商品を入れる)」と、合わせて3つの条件を証明する必要もある。さらには捕まえたあとのフォローなど、万引きGメンには重要な任務が数多くあるのです。

——では、Gメン側も対策を強化して、どんどん万引き犯を捕まえていかないといけませんね。

望月:一概にそうとも言い切れません。実は以前から「万引き犯を捕まえて警察に突き出す」というフローに疑問を抱いていて…。私は「万引きGメン」という言葉が1日でも早くなくなってほしいと思うくらいです。

万引きGメンという仕事の生みの親・望月さんから発せられた意外な言葉。一体その真意とは……? 後編に続きます。

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